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ドリアンではなく「パッションフルーツ」が欧州を虜に――Q1輸出額73%増の3,050万ドル、EU向け果物トップに

ベトナム産パッションフルーツが欧州市場で急伸している。ベトナム青果物協会(Vinafruit)の集計によると、2026年第1四半期(Q1)のEU向けパッションフルーツ輸出額は約3,050万ドル(約47億2,750万円)に達し、前年同期比73%増を記録した。EU向け果物輸出でトップに立ったこの勢いの背景には、EU-ベトナム自由貿易協定(EVFTA)による関税撤廃の恩恵がある。

目次

Q1輸出額3,050万ドル――前年比73%増の衝撃

ベトナム青果物協会のダン・フック・グエン事務局長によると、パッションフルーツは「規模だけでなく、欧州市場の消費トレンドとも合致している点で突出している」。Q1のEU向け青果物輸出総額は約1億2,100万ドル(約187億5,500万円)で前年同期比33%増。そのうちパッションフルーツが25%超を占め、カシューナッツ(2,650万ドル/137%増)を上回った。

注目すべきは、パッションフルーツの約3分の2が加工品として出荷されている点だ。ピューレやジュース濃縮液の形でEU域内のジュース・菓子メーカーに供給され、付加価値の高い形態で市場を開拓している。

EVFTAが拓いた「関税ゼロ」の扉

2020年8月に発効したEVFTAは、青果物分野で全547品目のうち約94%の関税を段階的に撤廃している。パッションフルーツの加工品(HSコード2009)は発効時にすでに大幅な削減対象となり、2026年現在は実質ゼロ関税で輸出可能だ。この制度的優位性が、ベトナム産パッションフルーツの価格競争力を大きく押し上げた。

2025年通年のEU向け青果物輸出は約4億8,000万ドルに達し、パッションフルーツの累計輸出額は1億1,280万ドル(前年比52.75%増)だった。2021年の4,160万ドルと比較すると、4年で約2.7倍に成長した計算になる。

EU向け青果物輸出の全容

Q1のEU向け輸出では、パッションフルーツ以外にも複数の品目が急成長している。EU側が輸入先を多角化する戦略を取っていることが追い風だ。

品目 Q1輸出額(万ドル) Q1輸出額(億円換算) 前年同期比
パッションフルーツ 3,050 約47.3 +73%
カシューナッツ 2,650 約41.1 +137%
マカダミアナッツ 225 約3.5 +600%(7倍)
イチゴ 221 約3.4 +73,500%(736倍)
ドリアン 40.4 約0.6 +50%

※1ドル=155円で換算

オランダがEU向け総輸出の約28%(約3,700万ドル)を占め最大の仕向先。スペイン向けは83%増と急成長し、ポーランド、ドイツ、フランスが続く。

現地・業界の反応

ベトナム青果物協会のダン・フック・グエン事務局長は、EU市場でのパッションフルーツの躍進を「EVFTAの関税メリットとパンデミック後の健康志向の合流」と分析している。

EU側では、輸入元の多角化戦略の一環としてベトナムからの調達を増やす動きが加速している。2025年にはベトナム産農産物・食品に対するEUの安全警告件数が114件から60件に半減(48%減)し、品質面での信頼も着実に高まっている。

ラムドン省のイチゴ生産者は、GlobalGAP認証の取得と高設栽培施設への投資が輸出拡大の鍵だったと報告している。同省からのイチゴ輸出が736倍に急増した背景には、こうした産地の地道な取り組みがある。

日本の輸入事業者・農業関係者への影響

EVFTAの成功モデルは、日本の農業ビジネスにも示唆を与える。まず、ベトナム産パッションフルーツのピューレや濃縮液は、日本のジュースメーカーやスイーツ業界にとって新たな調達先候補になり得る。CPTPPを通じた日越間の関税削減も並行して進んでおり、原料輸入のコスト構造が変わる可能性がある。

一方、ベトナムが加工品輸出を主軸にEU市場を攻略している点は、日本の地方農産物の海外展開にとっても参考になる。鮮度勝負ではなく、加工・パッケージで付加価値をつける戦略が有効だ。

業界への波及

ベトナムの青果物輸出は2025年に年間約80億ドル規模に到達し、2026年は100億ドルを視野に入れている。EU向けはそのうち約6%に過ぎないが、成長率では中国向け(2桁成長)に匹敵する速度で拡大中だ。

GlobalGAP認証の普及が進めば、EUだけでなく日本・オーストラリアなど他の高所得国市場へのアクセスも同時に広がる。ベトナム政府は2026年にGlobalGAP認証農場の面積を20%拡大する目標を掲げており、その進捗が業界全体の輸出力を左右する。

ベトナムの成功は、ASEAN域内の競合国(タイ、インドネシア、フィリピン)にとっても刺激材料だ。とくにタイはバクザンライチの対中国輸出急増のような品目別の成功事例を注視している。

実用情報

項目 内容
主要認証 GlobalGAP(EU向け必須)、VietGAP(国内基準)
輸出形態 加工品(ピューレ・濃縮液)約66%、生鮮品約34%
主要仕向先 オランダ(28%)、スペイン、ポーランド、ドイツ、フランス
関連協定 EVFTA(2020年発効、94%品目関税撤廃)、CPTPP
業界団体 Vietnam Vegetable and Fruit Association(Vinafruit)
主要産地 ラムドン省、北部山岳地域(イチゴ)、中部高原
HSコード例 2009(果汁・濃縮液)、0810(その他生鮮果実)

まとめ

ドリアンが中国市場を席巻する陰で、パッションフルーツはEUという高付加価値市場を静かに、しかし確実に攻略している。Q1で73%増という数字は一過性のブームではなく、EVFTA発効以降4年にわたる構造的な成長の延長線上にある。加工品主体の輸出モデル、GlobalGAP認証の浸透、そしてEUの調達先多角化ニーズ――これらの条件が揃った結果だ。日本の農業関係者にとっても、加工品を軸にした輸出戦略のヒントがここにある。

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出典:Người Lao Động(2026年5月4日)

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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