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ベトナム産ナマズ(パンガシウス)副産物の高付加価値化が加速——コラーゲンで価値15〜25倍、年90万トンの「黄金鉱」

ベトナムの主要養殖魚種パンガシウス(ナマズ目)の加工副産物が、酵素加水分解・微生物技術・スプレー乾燥などのバイオテクノロジー導入で、コラーゲン・魚油・魚皮スナック・魚介ペプチド飲料へと高付加価値化されている。原料時の魚粉・魚油は1.2〜1.5ドル/kgに過ぎないが、コラーゲン製品は15〜20ドル/kgと15〜25倍の価値増。年間生産量174万トンから生まれる70〜90万トンの副産物を循環経済モデルで再価値化する動きで、対日輸出の新カテゴリにも繋がる。Vietnam Agriculture & Environmentの特集を整理する。

目次

ニュース詳細:原料の60〜70%を占める副産物に技術投入

ベトナムのパンガシウス産業は2025年に総生産量174万トンを記録し、世界最大級の白身魚養殖国の地位を維持している。ただしフィレ加工で取り出される可食部は全体の30〜40%に過ぎず、残り60〜70%(70〜90万トン)が副産物として残る。これまで魚粉・魚油・動物飼料への加工が中心で、付加価値は最小限だった。

VnAgriが報じる新動向は、副産物を高付加価値製品に転換する技術の本格商用化だ。具体的には次の技術群が稼働している。

  • バイオテクノロジー・酵素加水分解:タンパク質を機能性ペプチドに分解
  • 微生物技術:副産物を発酵基質として利用
  • スプレー乾燥・凍結乾燥:粉末化で輸送・保存性を向上
  • 深加工・モダン保存:高付加価値製品の流通を可能に
  • 循環生産モデル:廃棄物を流れごとに分離して再利用

背景:基本加工から深加工への転換

専門家のDr. Bui Thi Thu Hien氏は「パンガシウス産業の不可避な方向性は、基本加工から深加工へのシフトであり、循環経済モデル下での付加価値製品の開発である」と指摘する。これまでパンガシウス産業は冷凍フィレの輸出量で勝負する「ボリューム型」だったが、米国・EUの輸入制限・関税見直しを受けて、付加価値型への構造転換が進む。

同様の動きはティラピア輸出の中東2,300%増でも見られる。単なる養殖魚輸出から、加工品・機能性素材への展開が、ベトナム水産業全体のパラダイムシフトとして同時進行している。

パンガシウス副産物の主要製品カテゴリ

カテゴリ 主要製品 用途・市場
食品・飲料 魚皮スナック、コラーゲン製品、魚胃製品、魚浮き袋料理、魚肉ケーキ・サーミ・ソーセージ 東南アジア・東アジアの食材市場
機能性飲料 ペプチド配合栄養ドリンク 健康志向消費者、シニア層
パテ製品 魚肝・腹身からのパテ 欧州・北米のグルメ市場
医薬品・化粧品 ゼラチン・加水分解タンパク質、生理活性ペプチド、コラーゲン サプリメント、スキンケア原料
動物飼料・農業 タンパク質ミール・加水分解物、動物飼料・誘引剤、有機肥料、バイオガス 家畜・水産養殖、循環農業

価値増のスケール:1.5ドル→20ドル/kg

原料状態の経済価値と加工後の価値差は明確だ。

状態 価格レンジ(USD/kg) 備考
魚粉・魚油(基本加工) 1.2〜1.5 従来の主力
動物飼料添加物 2〜3 機能性表示で若干プレミアム
魚皮スナック・加工食品 5〜10 消費者向け加工品
コラーゲン(標準品) 15〜20 15〜25倍の価値増
特殊コラーゲン・ペプチド 20〜50 機能性表示・特定用途向け

年間70〜90万トンの副産物が完全に深加工されれば、産業全体の売上は数十億ドル規模で押し上げられる計算だ。実際にはコラーゲンメーカーの生産能力に制約があり、転換は段階的だが、5〜10年で構造的シフトが完了する見通しだ。

業界の反応:循環経済モデルへの注目

VnAgriの記事はDr. Bui Thi Thu Hien氏の「循環経済モデル下での付加価値製品開発」を中核メッセージに据える。SDGsの観点からも、廃棄物ゼロを目指す加工は国際市場での競争優位になる。EUのESPR(Eco-design for Sustainable Products Regulation)は2026年から段階的に施行され、輸入水産品にも循環性が問われる。

ベトナム企業の中では、Vinh Hoan Corporation(パンガシウス最大手)、I.D.I. Corporation、Bien Dong Seafood などがコラーゲン・ペプチド事業を強化中とされる。中国Haid Groupの北部新工場のような飼料用途と並行して、ヒト向け高付加価値用途への転換が並行する構図だ。

日本市場への影響:機能性表示原料の供給源

日本市場にとって、ベトナム産パンガシウス由来コラーゲン・ペプチドは国産フィッシュコラーゲンの代替・補完原料として重要性を増す。日本国内のコラーゲンサプリメント市場は500億円規模で、原料供給は中国・タイ・ベトナムへの依存度が高い。

ベトナム産が選ばれるメリットは3点だ。

  1. 価格優位性:中国産より20〜30%低価格、日本産より50%以上低価格
  2. トレーサビリティ:単一魚種(パンガシウス)由来で原料履歴が明確
  3. 持続可能性訴求:副産物循環利用で「サステナブル原料」としてストーリー化可能

日本の機能性表示食品制度との整合性が取れれば、ベトナム産コラーゲン・ペプチドを使った日本ブランドの新製品が増える可能性が高い。

業界への波及:他の養殖魚種への横展開

パンガシウス副産物の高付加価値化モデルは、他の養殖魚種にも横展開可能だ。ティラピアタイニン省のハイテク畜産での養鶏副産物、エビ殻からのキチン・キトサン抽出など、ベトナム水産・畜産業全体で「副産物の黄金鉱化」が進む。

政府レベルでも、農業環境省が「循環型水産業ガイドライン」を2026年中に策定予定で、副産物利用率の目標値設定や税制優遇が検討されている。日越農業協力の文脈でも、日本の食品加工技術の移転がパッケージ化される可能性がある。

実用情報:日本企業の参入チャネル

用途 主要ベトナムサプライヤー 参入アプローチ
食品用コラーゲン Vinh Hoan、I.D.I. 長期OEM契約、共同開発
機能性ペプチド Vinh Hoan Collagen子会社 機能性素材メーカー経由の調達
魚油 Bien Dong Seafood 商社経由、サプリ原料用途
ペプチド飲料原料 新興加工メーカー数社 JETRO等の商談会で発掘
展示会 Vietfish(HCMC、年1回) 毎年8月、世界最大級水産展示会

まとめ:ベトナム水産業のパラダイムシフト

パンガシウス副産物の高付加価値化は、ベトナム水産業が「大量供給モデル」から「付加価値・循環モデル」へと進化する象徴的事例だ。日本企業にとっては、サステナブル原料・低コスト機能性素材の調達源として、また食品加工技術の輸出先として、戦略的なパートナーシップが組める領域になる。年間70〜90万トンの「黄金鉱」をめぐる競争は、これから5年で本格化する。

引用元

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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