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中国国境ランソン、マカダミアを輸出戦略作物に格上げ

中国国境に接するベトナム北部ランソン省が、これまで試験栽培にとどまっていたマカダミアを輸出戦略作物へと格上げした。省は2030年までに栽培面積6,000〜8,000ヘクタールを目標に掲げ、OCOP4つ星を取得した加工企業Macca & Sachi Lang Sonを軸に、栽培から殻割り加工、輸出までを一気通貫でつなぐサプライチェーンの構築を進めている。日本はマカダミアの主要輸入国の一角で、コンビニのナッツ菓子を支える原料の調達先は豪州・南アフリカに偏っている。北部ベトナムに新しい産地が育つかどうかは、日本の輸入バイヤーにとっても次の調達カードを増やす話になる。

目次

ランソン省が打ち出した方針の中身

起点となったのは、ランソン省党委員会が2026年3月3日付で出した決議24号(24-NQ/TU)だ。この決議はマカダミアを省の主力換金作物に位置づけ、苗木代の100%補助(1ヘクタールあたり最大3,000万ドン)を含む支援策をセットにした。1円≒170ベトナムドンの目安で換算すると、補助上限は1ヘクタールあたり約18万円にあたる。省農業環境局の副局長ホアン・ヴァン・チエウ氏は、加工と販路に結びついた集約的な原料産地の形成を狙うと述べている。

方針が掲げる数字は、2030年に栽培面積6,000〜8,000ヘクタール、収量は1ヘクタールあたり2.5トン、生産量はおよそ2,100トンというものだ。面積目標の幅と収量を単純に掛け合わせると2,100トンを上回る計算になるため、この生産量は植栽から収穫までに数年かかるマカダミアの特性を踏まえ、目標年時点で実際に収穫が見込める成木面積ベースで見ているとみられる。植えた木がすぐ実をつけるわけではない点は、産地化を読むうえで外せない前提になる。

加工の核になるMacca & Sachi社

サプライチェーンの中核に置かれているのが、殻割りドライマカダミアでOCOP4つ星(一村一品運動の品質認証)を取得したMacca & Sachi Lang Sonだ。同社は省内各地に約600ヘクタール規模の原料調達エリアを確保し、農家との契約連携で原料品質を管理しているとされる。現在は調達エリアの拡大と加工技術の高度化を進め、OCOP5つ星と本格輸出を視野に入れている段階だ。

この「企業を核に農家を束ねる」型は、ベトナム北部の農産品が抱える弱点をつぶしにいく設計になっている。北部山間の作物は小規模農家がばらばらに出荷するため、品質も数量も安定しにくい。加工企業が調達エリアと契約を握れば、ロットをまとめ、規格をそろえ、輸出に耐える品質に近づけられる。ハーブ原料を加工拠点に集約するサオマイ社のハーブ加工プラントや、果物を産地クラスターでまとめる動きと同じ発想が、北部のナッツでも始まったと見るのが妥当だろう。

世界のマカダミア需給のなかでの位置づけ

ランソン省の数字を世界の物差しで測ると、立ち位置がはっきりする。世界のマカダミア生産量は2025年見通しで約34万3,000トン。主要産地は豪州(5万トン超)と南アフリカ(約3万5,000トン)で、この二か国が生産量の上位を占める。ベトナムは輸出国としてすでに上位5カ国に入っており、国全体では2030年に栽培面積13万〜15万ヘクタール、生産量13万トン、輸出額4億ドル(1ドル≒155円で約620億円)を掲げている。

区分 2030年目標 面積 生産量
ランソン省 6,000〜8,000ha 約2,100t
ベトナム全国 13万〜15万ha 約13万t
世界全体(2025実績見通し) 約34万3,000t

こうして並べると、ランソン省は全国計画のなかでは面積比で数%の脇役にすぎない。主産地はあくまで中部高原と北西部だ。それでも省がマカダミアに賭けるのは、国境ゲートという立地と、4つ星加工企業という既存の核があるからだ。

現地・業界の受け止め

地元行政は、点在する小規模栽培を集約原料産地へ束ね直す転換点と評価している。加工側は、調達エリア拡大と技術投資で5つ星・輸出に手が届くという前向きな見方だ。一方で冷静な声もある。マカダミアは植栽から本格収穫まで数年を要し、価格は豪州・南アフリカの作柄に大きく左右される。植えた面積がそのまま収益になるわけではなく、収量2.5トンを安定して出せるかは栽培管理の習熟次第だという指摘は、産地化の現実を踏まえた妥当な慎重論といえる。

日本の輸入バイヤーにとっての意味

日本はマカダミアの主要輸入国の一つで、コンビニで手に取れるナッツ菓子の広がりが消費を底上げしてきた。ただ原料の出どころは豪州・南アフリカに集中し、両国の天候不順や為替が直接コストに跳ね返る構造だ。ここに北部ベトナム産という選択肢が育てば、調達先の分散という意味で無視できない。中国国境ゲートに近いランソン省は物流の出口が複数あり、対中・対日双方の輸出を見据えやすい。

ただし日本のバイヤーが今すぐ動ける段階ではない。決議が出て産地化が始まったばかりで、輸出量も品質規格も固まっていない。現実的なのは、サオマイ社のような加工拠点や、産地を束ねるダクラックの果物クラスターの動きと同じ温度感で、ランソン省のマカダミア加工企業がOCOP5つ星と輸出認証を実際に取れるかを定点観測することだ。残留農薬や殻割り品質といった対日輸出のハードルをクリアできた段階で、初めてサンプル取り寄せや産地視察が意味を持つ。

市場への波及

ランソン省の動き自体は小粒でも、ベトナム全体の産地化と重ね合わせると流れが見えてくる。国がマカダミアの輸出額を2030年に4億ドル、2050年に25億ドルへ伸ばす構想を掲げるなかで、北部の国境省が独自に加工一貫体制を組み始めたことは、産地の裾野が中部高原以外にも広がる兆しだ。水産で対中シフトと品質高度化を同時に進めるベトナム水産の中国シフトと同様に、ナッツでも「国境立地×加工付加価値」を武器にする産地が増えていく可能性がある。日本市場にとっては、豪州・南アフリカ一辺倒だった調達地図に、数年がかりで新しい点が加わるかどうかの長期テーマになる。

まとめ:今やるべきこと

ランソン省のマカダミア格上げは、まだ方針と目標の段階で、収穫実績や輸出実績がこれから積み上がるフェーズだ。日本側で関心がある食品メーカー・輸入商社が取るべき次の一手は、(1)Macca & Sachi社をはじめとする省内加工企業のOCOP等級と輸出認証の進捗を半年ごとに追う、(2)豪州・南アフリカ依存のリスクを定量化し、北部ベトナム産を「将来の第3の選択肢」として調達計画の余白に書き込んでおく、(3)5つ星取得や対日輸出のハードルクリアが確認できた時点で少量サンプルから検証を始める、の3つだ。今は仕込みの時期であり、産地が立ち上がる瞬間を見逃さないための観測体制を先に整えておくのが現実的な備えになる。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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