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エビの頭がスイカを甘くする、コートー島30年の砂地循環農業

ベトナム北部クアンニン省の離島コートー(Cô Tô)に、エビの頭を堆肥に変えて海辺の砂地スイカ畑へ還す農法を30年続けてきた一家がいます。ベトナム農業環境省系の専門紙ノンギエップ・モイチュオンが2026年7月3日付で伝えたもので、畑には島を訪れる観光客が立ち寄り、栽培と収穫を体験してその場で買っていくそうです。水産加工の副産物処理、砂地の地力維持、観光客の呼び込み。日本の離島や沿岸産地が別々に抱えている課題を、この小さな畑は一つの循環でまとめて解いています。調達商材としてではなく「持ち帰れるモデル」として読むべきニュースです。

目次

エビの頭で育つスイカ——コートー島ハイティエン集落の30年

主人公は、コートー島ハイティエン集落の農家ドー・ティ・クエン氏です。一家は1997年からこの島でスイカを育てており、今年で30年近くになります。今年の作付けは約2マウ(ベトナム北部の慣用単位で約0.7ヘクタール)、収量は約4トンを見込むと記事は伝えています。

畑は海沿いの砂地です。クエン氏は「土壌改良こそが最も大事な工程だ」と語り、その要にエビの頭の堆肥化を据えています。島内の水産加工場からエビの頭を買い取り、腐熟させて有機肥料として畑に入れる。腐熟を経たエビの頭はミネラル分に富む養分の層となり、砂地を柔らかく肥沃にし、化学肥料の使用を抑えられると記事は説明しています。

こうして育ったコートーのスイカは、玉は大きくないものの甘みが濃く、果肉は赤くて締まりがあり、水分が豊富だと描写されています。海風と強い日差しという島の環境が、この個性を後押ししているようです。

項目 元記事の記載
場所 クアンニン省コートー島 ハイティエン集落
栽培主体 農家ドー・ティ・クエン氏の一家
栽培開始 1997年(約30年継続)
今年の作付け 約2マウ(北部換算で約0.7ヘクタール)
見込み収量 約4トン
肥料 島内の水産加工場から買い取ったエビの頭を腐熟させた有機肥料
果実の特徴 小玉ながら甘みが濃く、赤肉で締まりがあり水分が多い

なぜ島のスイカに「エビ」なのか——地域内で完結する養分循環

離島農業の急所は資材コストです。肥料も資材も船で運ぶ分だけ高くつき、本土の大産地と同じ土俵では価格勝負になりません。一方でコートーは漁業と水産加工の島であり、エビの頭や殻は日々発生する「処理に困る側」の資源です。

クエン氏の農法は、この二つを直結させた点に価値があります。島の外から買う化学肥料を減らし、島の中で捨てられていたものを畑の養分に変える。記事はこれを、廃棄物を資源に変えて環境負荷を抑え、循環型で持続可能な緑の農業へ向かう取り組みと位置づけています。

保肥力の乏しい砂地は、本来なら多収に不利な土です。そこへ有機質を継ぎ足して地力を作り込む発想は、派手さこそないものの、30年という継続の長さが何よりの裏づけになっています。

畑が観光地になった——現地の受け止め

記事から拾える現地の反応は、いずれも実務的です。

  • クエン氏本人は、砂地での栽培は土壌改良の工程が何より大事だと語り、エビの頭の堆肥化を成功の中核に置いています。
  • ここ数年は島を訪れる観光客がクエン氏の農園まで足を運び、緑の農園空間を歩き、栽培や収穫の工程を見学して、採れたての農産物をその場で味わい買っていくと記事は伝えています。
  • 紙面はこの取り組みを、水産副産物という廃棄物を資源に変え、環境汚染を抑える循環型農業のモデルとして評価しています。

一家はスイカ一本に頼らず、ウリ類やサツマイモも並行して育てています。品目を散らして畑の稼働と来訪者の楽しみを両立させる構えも、観光農園的な運営に寄っています。

日本の離島農業・観光農園への示唆

水産副産物は「島内で調達できる肥料」になる

日本の離島や漁港のある町でも、水産加工の残渣は処理費のかかる厄介者です。他方、農地側は肥料価格の高止まりに悩んでいます。甲殻類の殻に由来する資材は日本でも土壌改良に使われてきた実績があり、技術的な目新しさよりも「加工場と畑が同じ集落にある」という距離の近さこそが、この仕組みの再現条件です。廃棄物処理の法規や衛生管理の設計は前提になりますが、島の中で養分を回す発想は、輸送費に苦しむ離島産地ほどよく効きます。

「循環の物語」そのものが観光商品になる

日本の観光農園は収穫体験が主力ですが、コートーの畑に観光客を引き寄せているのは、摘み取りの楽しさに加えて「エビの頭がスイカを育てる」という語れる仕組みです。畑を見せること自体が販促になり、直販の単価を支える。体験メニューを増やすより先に、自分の畑の物語を一つ磨く方が早い、という順序をこの事例は示しています。

約0.7ヘクタール・4トンでも成り立つ設計

作付け約2マウ、見込み収量約4トンという規模は、日本の家族経営の畑とほぼ同じ水準です。それでも成立しているのは、島に来る観光客という「向こうから来る需要」を直販に結びつけ、価格競争から降りているからです。規模拡大ではなく、単価と物語で稼ぐ。中山間や離島の小規模産地が取るべき順番と重なります。

ベトナム産地の文脈——「海と農」の複合が進む

コートー島では、天然採捕に頼ってきたイカを養殖へ切り替える210ヘクタールの海面養殖計画も動いています。海の生産が計画的になれば加工が増え、加工が増えれば副産物も増える。エビについてもタインホア省の3段式ハイテク養殖のような集約化が各地で進んでおり、殻や頭という「循環の原料」は今後むしろ積み増される構図です。

小さな面積を高単価で回す動きも、ベトナム各地で同時多発しています。ハティン省で500平方メートルから年3作のメロンを回す事例と同じく、コートーのスイカは「面積でなく設計で稼ぐ」型です。日本のバイヤー視点では、コートースイカそのものは島内消費・観光向けで、輸出商材ではありません。商機はむしろ逆方向、つまり小型の堆肥化設備や副産物処理の資材・ノウハウをベトナムの産地側へ持ち込む売り筋にあります。

実用情報と次のアクション

項目 内容
産地 ベトナム・クアンニン省コートー島(北部沖合の島嶼県)
作型 海沿いの砂地でのスイカ栽培。ウリ類・サツマイモを併作
肥培管理 エビの頭の堆肥化による土壌改良で化学肥料を削減
販路 島内・観光客への直販(輸出・域外出荷の記載は元記事になし)
観光要素 農園見学、栽培・収穫の体験、その場での試食・購入
情報源 ノンギエップ・モイチュオン紙 2026年7月3日付

この事例を自分ごとに引き寄せるなら、次の三つから着手できます。

  1. 離島・沿岸の自治体や農協は、地元の水産加工場でどんな副産物がどれだけ出ているかを棚卸しし、畑側の土づくり需要と突き合わせる。
  2. 観光農園は、体験品目を増やす前に「この畑はなぜ美味しいのか」を一つの循環の物語として磨き、見学と直販の動線に載せる。
  3. ベトナム産地視察を組むなら、大型工場だけでなくコートーのような家族経営の循環モデルを行程に加え、自産地へ持ち帰れる最小単位を確かめる。

参照元

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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