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バクニンでリム材を培地にした霊芝8,000菌床、アカシアは基準に届かなかった

ベトナム北部バクニン省ティエンルック社(旧バクザン省ランザン県)で、リム(lim xanh)の端材を培地にした薬用きのこの栽培が立ち上がった。2026年10月12日付の Dân Việt が、バクニン省紙からの転載として伝えている。現場はタンクアン村のグエン・ティ・フンさん一家が持つ林で、並んでいる菌床は8,000以上。技術を持ち込んだのは1944年生まれ、ハノイの科学技術研究・教育・コンサルティング院に所属するグエン・ティエン・キー氏で、出身は同省バクルン社だ。原料調達の側から見て効くのは、きのこの珍しさではなく「培地をリム材に限定した」という判断の根拠部分にある。

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リムとxà cừの木陰に菌床8,000、植菌から3か月で採れて2年ごとに入れ替える

栽培地はリムとxà cừ(アフリカンマホガニー)の林床で、川沿いの湿度が高い区画を遮光ネットで囲い、自動灌水を入れている。植菌から約3か月で収穫が始まり、そのまま2年ほど採り続けてから菌床を新しいものに替える。乾燥させると木のように硬く締まる、と記事は書いている。

始まりはフンさんの側だった。タンクアン村でリム材を扱う兄の帳簿づけと端材処理を手伝ううち、端材を木炭に焼くだけでは惜しいと考えた。ネットと新聞でキー氏の名前を見つけて自分から連絡を取り、直接手を動かして教わる形で家族の林に菌床を入れた。ティエンルック社でこの技術が入ったのはこの一件が最初だという。

同社農民協会会長のグエン・アイン・トゥアン氏は、村では以前から食用きのこを作っていたが薬用きのこは初めてだと話し、広い自然条件を使って段階的に広げる意向を示している。収穫したぶんは出るたびに売り切れて需要に追いついていない、というのが記事の現状説明だ。裏を返せば、まだ量が読める産地になっていない。

アカシア培地は有効成分が一つも基準に届かず、2年の試験でリム材に絞られた

キー氏がこのきのこを作る側に回ったきっかけは2008年、香港で7日間開かれた国際医薬会議だった。そこで現地企業が樹齢30年のナラ材(gỗ sồi)を培地に使っていることを知り、帰国後に所属院へリム材とアカシア材(gỗ keo)の二つを並べて比べる研究を提案し、自ら2年間の責任者を務めた。

結果は培地で割れた。リム材で育てたものは菌体の発達も色も優れ、検査では有効成分がすべて基準を満たし、所管部門の公表値を上回った。一方のアカシア材では、有効成分が一つも要求水準に届かなかった。胞子は他の培地でも子実体にはなるが、薬用原料として通る中身にはならないという整理になっている。

調達の実務に直すと、見た目が同じきのこが同じ品物ではない、という話だ。産地名や等級の前に「培地の樹種」が規格項目として立つ。仕様書に乾燥方法と等級しか書かず、培地の木を書かないまま発注すれば、検査で落ちる原料が混ざる余地を自分で残すことになる。

そしてアカシアはベトナムの植林の主力樹種である。アカシア林を持っているだけではこの原料は作れないという意味で、この試験結果は産地の絞り込みをかなり厳しくする。山地の樹種転換そのものは各地で進んでおり、アカシアをやめてレモングラスに替えたクアンガイの山地のように、収益の出る品目へ植え替える動きは珍しくない。リムは逆に、植えてから待つ年数が長い側の樹種になる。

樹齢30年のナラを使う香港企業に対し、リムは6〜7年で最初の培地が取れる

キー氏の説明では、リムは植栽から6〜7年で最初の培地用の収穫ができ、2回目は1〜2本の萌芽を残して5〜6年手を入れれば再び基準に達する。苗が小さいうちの空きには短期の薬用植物を間作できるとしている。香港で見た樹齢30年のナラと比べれば、培地に回るまでの待ち時間が4分の1から5分の1に縮む計算だ。

この年数差が、彼がバクニンを「全国の nấm lim xanh の中心地」にしたいと言う根拠になっている。バクニンには西イェントゥ(Tây Yên Tử)一帯のリム林があり、そこには自生のものが散在する。地元では nấm Trường Thọ の名で呼ばれてきた。

ただし6〜7年という数字はキー氏と所属院の技術を前提にした自己申告で、第三者が検証した値としては記事に出てこない。培地用の原木が実際に6〜7年で規格に入るのか、入らなければ培地の調達が外から買う形に戻るのか。産地評価の分かれ目はここで、量の話を始める前に確かめる順番になる。

リムザンの分布はベトナム・台湾・中国、IUCNは絶滅危惧と評価している

記事の中でキー氏は、世界でリムザンを持つのはベトナムとラオスだけだと説明している。ここは原料の説明資料にそのまま転記すると危ない箇所だ。リムザン(Erythrophleum fordii)の分布はベトナム・台湾・中国とされ、IUCNレッドリストでは1998年の評価で絶滅危惧(Endangered)とされている。成長の遅い樹種でもある。キー氏の発言は商業規模の林がある国を指したものと読めるが、分布そのものの記述としては合っていない。

希少樹種の端材を培地に使う原料は、きのこ側の検査証明だけでは買い手の確認が終わらない。培地の木がどの林から出た端材か、伐採と流通の書類がそろうかが別の列として残る。ベトナム国内でリムザンの伐採・流通にどの区分の規制がかかるかは今回確認できなかったが、絶滅危惧とされている樹種を培地にする以上、由来書類を聞かずに進める話ではない。

台帳側の整備は他の品目で先に動いている。ソンラ省がコーヒー3万6千haを区分して台帳を作る動きと同じやり方を、菌床のロットと原木の出どころに当てはめられるかが、この産地が輸出向けに整うかどうかを決める。

野生品250万〜600万ドンと栽培品50万〜100万ドン、ホンチー茸の混入が値差を作る

値段の構造は、以前から報じられている。2020年10月のVietNamNetは、野生の老成品が250万〜600万ドン/kg、若い段階が100万〜300万ドン/kg、傘が開く前のつぼみが40万〜100万ドン/kg、栽培品が50万〜100万ドン/kgという帯を示した。1円=163.3ドン(2026年10月12日時点)で換算すると、野生の老成品が約1万5,300〜3万6,700円/kg、栽培品が約3,060〜6,120円/kgにあたる。

同じ記事は、10万ドン前後(約612円/kg)のホンチー茸(nấm Hồng Chi)を野生品として200万〜400万ドン(約1万2,200〜2万4,500円/kg)で売る例を挙げ、栽培品と野生品を50対50、30対70、20対80の比率で混ぜると、切り分けた状態では判別が難しくなると書いている。同じ月の別の記事では、タインホア省タクタイン(Thạch Thành)一帯の採集が1シーズン2〜3kg程度の規模で、天日乾燥のみで仕上げ、買い手は1か月前から注文して集まるのを待つ状況と、霊芝を混ぜる手口が紹介されていた。

この帯の開きが、ティエンルックの8,000菌床が立つ土台になっている。野生採集の価格を狙うのではなく、野生品の5分の1前後という栽培品の帯で、量と品質を読める形に持っていく勝負だ。偽装が6年以上前から繰り返し報じられてきた品目では、買い手側の真贋確認コストがそのまま仕入れ値に乗る。栽培品が勝てる余地は、そこを書類と記録で削れる点にある。

日本の買い手が見るのは乾燥方法と資材の使用記録、キー氏が心配したのもそこだ

キー氏は記事の中で別の不満も口にしている。彼が地元へ持ち込んだ有機農業の仕組みのうち、手順を守り続ける人は数えるほどしかいない。急いで工程を省き、推奨外の資材を過剰に使って、技術の中身を薄めた製品が出てしまう。この指摘は、日本側の受け入れ条件とそのまま重なる。

乾燥きのこを日本に入れる場合、食品衛生法に基づく輸入届出と、残留農薬のポジティブリスト制度に当たる。現地で「薬用原料として基準を満たした」と評価されたロットでも、推奨外の資材が入っていれば日本側の検査で止まる。菌床のロット単位で、資材の購入記録と散布記録、交換日が残っているか。これが最初の質問になる。やり方としては、収穫40日前に農薬を止めたタンハーのライチ園で日本の買い手が園地まで見に行ったのと同じで、書類と現場を突き合わせる手順が要る。

乾燥工程も確認項目になる。2020年の報道では硫黄燻蒸を使わず天日干しで仕上げる採集品が紹介されていたが、ティエンルックの栽培品がどの方法で乾かすかは今回の記事に出ていない。二酸化硫黄の残存は日本側の規格と表示の論点に直結するため、乾燥方法は等級と並べて仕様に書く項目になる。

もう一つ、表示の問題が残る。ベトナムでこの品目は dược liệu、つまり薬用の材料として扱われているが、日本に入れば食品として売る前提になり、現地の売り込み資料にある効能の記述はそのまま使えない。原料としての訴求は、培地の樹種と栽培記録、乾燥方法という検証できる項目に置き換える必要がある。

結局この産地で最初に聞くべき3点は、2年の比較試験が決めている。培地の木は何か、どこの林から出た端材か、菌床のロットをいつ入れ替えたか。アカシア培地では有効成分が一つも基準に届かなかったという結果がある以上、この3点に答えられる記録が残るかどうかで、ティエンルックの8,000菌床の値段が決まる。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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