NÔNG NGHIỆP VIỆT NAM — TẠP CHÍ NÔNG NGHIỆP ĐÔNG NAM Á

ヤシ糖と魚醤が5つ星で豪州へ、アンザンOCOPが描く原料地図

ベトナム南部のアンザン省で、山の民が炊いたヤシ糖や島で仕込んだ魚醤といった地方の伝統食材が、国の最高評価である「5つ星OCOP」を次々に取得し、オーストラリアや欧州へ渡り始めている。OCOP(One Commune One Product=一村一品)はベトナムが2018年から進める地域産品の格付け制度で、3つ星から5つ星までの星の数で品質と輸出適性を可視化する仕組みだ。日本の食品OEMや原料調達の担当者にとって、この星の数はベトナムの産地選定に効く「品質の物差し」として使えるものになりつつある。アンザンで何が5つ星になり、どこへ売れているのかを、産地の逆引きという視点で整理する。

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ヤシ糖・魚醤・米に「5つ星」が並んだ

今回アンザン省が公表した内容の核心は、伝統食材の国際市場入りだ。省南西部トリトン地区のヤシ糖(マット・トッノット)ブランド「パルマニア」は、蜜状・粒状・粉末など複数形態が5つ星OCOPに認定され、平均92点超のスコアで国家評価を通過した。フーコック島の魚醤「フインコア」も、窒素分(旨味の指標となる度数)の異なる3製品が5つ星を取得している。

両者に共通するのは、認証をきっかけに販路が国内から国外へ抜けた点だ。パルマニアは2021年7月にオランダへ初出荷し、その後スウェーデンやフィンランドへ広げ、現在は米国・日本・韓国・オランダなどへ受注生産で輸出している。フインコアは2025年6月に豪州への初出荷を実現し、2026年に米豪両市場の拡大を計画する。地方の家業だった素材が、星の取得から数年で越境ECや海外小売の棚に届き始めている。

省の合併がフーコック魚醤を「アンザン産」に変えた

この話を読み解くうえで外せないのが、2025年の行政再編だ。ベトナムは2025年7月1日、キエンザン省をアンザン省に統合し、新たなアンザン省を発足させた。面積約9,889平方キロ、人口約495万人、行政中心はラクザー市という「巨大省」で、魚醤の名産地フーコック島はアンザン省直轄の特別区になった。

つまり、これまで「フーコックの魚醤」と呼ばれてきた製品群が、制度上は「アンザン省の特産」として一括りに扱われるようになった。フーコック魚醤は2001年にベトナム初の地理的表示(GI)を、2012年には東南アジアの食品として初めてEUの原産地呼称保護(PDO)を取得した、国際規格化の先駆けである。山側のヤシ糖と海側の魚醤、そしてメコンの米が、合併によって一つの省の産品リストに集約された。これは調達側から見ると、性格の異なる一次生産者が同じ行政窓口・同じ認証台帳の下にまとまったことを意味する。魚醤2品を5つ星に押し上げたハイフォンの事例と同じ構図が、より大きな産地規模でアンザンにも現れている。

数字で見るアンザンOCOP

新生アンザン省のOCOP認証を星別に並べると、5つ星が頂点の狭い層で、裾野の3つ星が厚いピラミッド構造が見える。

区分 件数・内訳
OCOP認証品(3つ星以上) 613品
うち5つ星(国家評価) 14品
うち4つ星 65品
うち3つ星 534品
参加経済主体 337主体
主体の内訳 協同組合54/企業85/生産施設・家族経営198

全国と比べると位置づけがはっきりする。ベトナム全体では2025年7月時点で3つ星以上が1万7,068品、認証主体は9,195にのぼり、国家5つ星は126品に限られる。613品というアンザンの数は全国上位の産地規模で、5つ星14品は全国126品のおよそ1割を一省で抱える計算になる。伝統食材の宝庫が、制度として棚卸しされている状態だ。

作り手の言葉と現場の雇用

星の取得は、輸出の実績だけでなく地域の雇用にも波及している。現場の当事者の声を拾うと、制度が生活に直結していることが分かる。

  • ホー・ヴァン・ムン アンザン省人民委員長——「OCOPは農村労働者の所得向上と雇用問題の解決に、とりわけ大きな役割を果たしている」
  • ヤシ糖パルマニアのチャウ・ゴック・ジウ氏——クメール系女性として、伝統製法のヤシ糖を海外へ送り出した先駆者。粉末形態は2020年の英グレートテイスト・アワードで2つ星を受け、ベトナム初のヤシ糖粉末ブランドになった
  • 魚醤フインコアのグエン・フイン・アイン・コア氏——2016年にホーチミン市の大企業を辞めて島に戻り、三代続く家業を継承。親から受け継いだ発酵樽50基を210基まで増やした

ヤシ糖の産地であるバイヌイ(七山)地域では、農協タダインが約50人の雇用を生み、その8割はクメール系の女性が占める。日当は25万〜30万ドン、日本円でおよそ1,500〜1,800円(1万ドン≒60円換算)で、少数民族の女性に安定した現金収入をもたらしている。

OCOPは日本の食品OEMにとって「一次生産者マップ」になる

伝統素材の国際規格化が進むことは、日本側の原料調達にとって三つの実務的な意味を持つ。

第一に、星の数が一次生産者の探索コストを下げる点だ。これまで地方の伝統食材は、誰が・どの規格で・どれだけ作れるのかが外から見えにくかった。OCOPの認証台帳は、品目・主体・星・所在地を紐づけて公開する。5つ星は国家評価に加えてGlobalGAP・HACCP・ISO・HALAL・FDAといった国際規格の取得を伴う例が多く、日本のバイヤーは「星の数」を入口に、輸出対応済みの一次生産者へ最短距離で当たれる。産地を品目名から逆引きできる地図が整いつつある。

第二に、省合併で「ワンストップの産地」が生まれた点だ。ヤシ糖・魚醤・米という加工原料の候補が同じアンザン省に集約されたことで、調味料のベースになる魚醤、糖類の代替になるヤシ糖、主原料の米を、一つの行政窓口と物流圏の中で束ねて調達する設計が現実味を帯びる。複数の県をまたいで交渉していた原料が、一省内で完結しうる。

第三に、「物語」が付いた素材は差別化の武器になる点だ。クメールの女性が炊くヤシ糖、EUがPDOで守る島の魚醤といった背景は、PB(プライベートブランド)やギフト向けの商品企画でそのまま訴求材料になる。素材を物語で売るベトナムの作り手と同様に、認証と来歴をセットで持つ原料は、単価で戦わない棚づくりを可能にする。逆に言えば、調達段階でこの背景を確認しておくことが、後工程の商品価値を左右する。

主要5つ星品目と規格・輸出先

アンザンの代表的な5つ星品目を、規格と現在の輸出先で並べると、調達検討の起点になる。

品目・ブランド 産地・主体 規格・輸出先
ヤシ糖(マット・トッノット)/パルマニア トリトン地区・パルマニア社 5つ星/グレートテイスト2つ星/オランダ・フィンランド・スウェーデン・米・日・韓へ受注輸出
フーコック魚醤(窒素分40・43・45度)/フインコア フーコック特別区・三代の家業 5つ星/HACCP・ISO・HALAL/2025年6月に豪州へ初出荷、樽210基
フーコック魚醤(産地全体) フーコック特別区 2001年GI・2012年EU PDO(東南アジアの食品で初)

フインコアは全生産量の約3割を瓶詰めのブランド品に振り向け、残りは業務用として供給する構造で、EC上のライブ配信販売や工場見学を組み込んだ観光体験まで販路を広げようとしている。原料の安定供給と小売展開が同時に走っている点は、OEM原料の候補として見るときの安心材料になる。

まとめ——星の数から産地を逆引きする

アンザン省の613品というOCOPの厚みは、単なる地域振興の数字ではない。省の合併でヤシ糖・魚醤・米が一つの産地台帳に集まり、5つ星品目が国際規格と輸出実績を伴って海外の棚に並び始めた。これは日本の食品OEMや原料バイヤーにとって、伝統素材の一次生産者を品目から逆引きできる地図が整ったということだ。次に取るべき行動は具体的で、まず狙う原料カテゴリー(調味料なら魚醤、糖類ならヤシ糖)を決め、OCOPの5つ星台帳で該当する主体と所在地を絞り込み、GlobalGAPやHACCPなど自社が求める規格の有無を確認したうえで、輸出実績のある主体から打診する。星の数は、産地の入口を示す最短の手がかりになる。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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