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越PVFCCoの有機肥料15万トンは2029年見込み、当面は輸入と委託

ベトナムの肥料大手PVFCCo(ブランド名Phú Mỹ/フーミー)が2026年9月24日、ホーチミン市のセミナーで、自社の有機肥料の年次計画を示した。実績があるのは2025年の販売量約3,000トンだけで、2026年の3万トンは目標、2027年以降の6万・12万・15万トンは供給の見込みだ。起点と終点を割れば約50倍になるが、達成した成長ではなく実績と見込みをつないだ計画上の幅にあたる。2026年分の3万トンは日本・韓国からの仕入れと国内の委託加工で賄うと説明されており、工場を建てて量を作る段階ではない。ベトナム産に有機や減化学肥料を求める買い手には、資材側がどの速度で動くかの目盛りになる。

目次

2025年の3,000トンから2029年の15万トンまで、何が並んだのか

セミナーの名称は「有機肥料の発展方向 — 政策からPhú Mỹの戦略へ」。登壇したのはPVFCCo(石油ガス肥料化学総公社)のグエン・スアン・ホア取締役会議長と、農業環境省・栽培植物保護局長のズオン・ドゥック・フイ氏だ。

会長が示した年次の数字

会長の説明では、2025年に有機製品を市場へ出し始め、販売量は約3,000トンだった。2026年は規模を3万トンへ広げる目標を置き、日本・韓国からの複数の仕入れ先と国内の委託加工を同時に動かす。2027年は約6万トンの供給を見込み、2028年に12万トン、2029年に15万トンとする。

押さえたいのは、この数字が段階として同じ重さではない点だ。2025年の3,000トンだけが実績で、2026年は「目標を置く」、2027年以降は「供給する見込み」という表現になっている。事業自体は同社の5カ年発展戦略に位置づけられ、同社が属するベトナム国家工業エネルギーグループの承認を受けているという。

年 数量 発表での位置づけ
2025年 約3,000トン 市場投入初年の販売量・実績
2026年 3万トン 「規模を広げる目標」
2027年 約6万トン 供給の見込み
2028年 12万トン 供給の見込み
2029年 15万トン 供給の見込み

2026年の3万トンをどこから持ってくるか

見落としやすいのが3万トンの出どころだ。挙がったのは日本・韓国からの仕入れと国内での委託加工で、自社工場の所在地や投資額はこの発表に出ていない。承認済みの戦略に事業が置かれ、最初の数年は外部調達で量を作る順番になっている。

肥料事業としては素直な段取りだ。有機肥料は原料が農業副産物や畜産由来の有機物になるため、集荷網と発酵設備を自前で持つには時間がかかる。先に商流を作り、需要が見えてから生産側へ投資するほうが在庫リスクは小さい。

「土壌の回復が鍵」と述べたのは会社ではなく当局側だった

取り違えやすいのが動機の出どころだ。有機肥料を「土壌の健康を取り戻す鍵」と位置づけたのは局長フイ氏の発言で、元記事の見出しもその言葉から取られた。会長も有機肥料が有機物の補給と土壌の改善に役立つとは述べているが、自社の狙いとして挙げたのは別の三点だった。

会長が挙げた理由は製品群の広がりと成長余地

会長が自社の狙いに挙げたのは、製品ラインの多様化、作物栄養ソリューションの生態系を段階的に作ること、新しい成長の余地を広げることだった。土壌の劣化は、長年の集約的な栽培のあとで一部の生産地に品質低下が起き、均衡のとれた養分供給の必要が高まっているという現状認識として語られた。会社の直接の動機は事業ポートフォリオの拡張で、土壌の回復はその背景に置かれた需要の説明にあたる。

農業環境省の局長が押した五つの重点

フイ氏は、長期にわたる無機質肥料の使用が多くの生産地で地力を落としたと述べ、政府と同省が2030年を目標年、2050年を展望とする栽培発展戦略の枠組みを出していることを説明した。そのうえでPVFCCoに対し、有機製品を商品ラインとして足すだけで終わらせず作物の養分管理という全体戦略に組み込むよう期待を示した。

挙げられた重点は五つ。均衡のとれた施肥の指導、有機質含有量を透明にした製品開発、行政・研究者・企業・農家の四者連携、地元原料と農業副産物を使う循環経済、「製品の供給」から「解決策の供給」への転換だ。行政が求めているのが製品の量ではなく、栽培工程と一体になった提案であることが読み取れる。

尿素87万トンの隣に15万トンを置くと大きさが分かる

PVFCCoの規模を示す数字も発表に出ている。同社の尿素は年約87万トンで、全国の総生産量の32%を超えると元記事は書く。加えて化学法のNPK工場が年23万トンの能力を持つ。

年産・公称能力・販売量は同じ物差しではない

三つの数字は物差しが違う。尿素の87万トンは年間の生産量、NPKの23万トンは工場の公称能力、有機肥料の3,000トンは販売量の実績、15万トンは供給の見込みだ。能力と売れた量を並べて倍率を出すと実態からずれる。

項目 数値 数値の性格
尿素 年約87万トン 年間生産量(元記事は全国総生産量の32%超と記載)
NPK(化学法工場) 年23万トン 工場の公称能力
有機肥料・2025年 約3,000トン 販売量の実績
有機肥料・2029年 15万トン 供給の見込み

15万トンは尿素の何分の一か

見込みどおり2029年に15万トンへ届いても、単純に割れば同社の尿素生産量の6分の1ほどだ。肥料事業の重心が有機へ移る話ではなく、大手が有機の棚を持ち始める段階になる。肥料会社が製品の信頼性を商品にし始めた点は、ビンディエンが肥料袋一つずつにRFIDとQRの「デジタル身分証」を付け始めた動きとも重なる。量の拡大と、袋の中身を証明する仕組みが同時に進む。

需要側は25省の計画とカントーの22万8,000haまで来ている

全国で900超の講習、40モデル以上

有機肥料の生産と使用に関する国の計画について、実施計画を出したのは34の省・市のうち25。900を超える講習に延べ4万人を超える農家が参加し、主要作物で40を超える実証モデルが作られた、というのが局長の説明だ。4万人は延べ人数で、4万戸が切り替えた意味ではない。

カントー市は稲17万8,000haを含む計画を2026年から動かす

地方レベルの規模感は、同じ媒体が2026年9月15日に伝えたカントー市の計画が分かりやすい。市人民委員会が国の計画にもとづく実施計画を出し、2026〜2030年で稲17万8,000ha、果樹4万ha、野菜1万haを対象に置いた。合計22万8,000haになる。

項目 内容
実施期間 2026〜2030年
対象面積 稲17万8,000ha/果樹4万ha/野菜1万ha(計22万8,000ha)
2030年の目標 該当3作物を作る社・坊の80%以上で価値連鎖と結んだモデル
2050年の展望 有機肥料を使う栽培面積の比率50%
併走する施策 肥料データベースと国家データの統合

同市は高品質・低排出の稲100万ha計画の対象地域を優先するとしている。供給側の15万トンは、地方計画が実際の資材購入まで進むかに支えられている。

日本の買い手が今の段階で確かめられること

「有機肥料を使う」と「有機認証」は別の話

産地に有機や減化学肥料を求める場面で混ざりやすいのがこの二つだ。有機肥料を一部使う圃場と、有機認証を取った圃場は同じではない。認証には転換期間があり、その間は収量が落ちても通常品として売る。ダラット・カウダットの有機アラビカで協同組合が抱えている課題では、転換期間の資金負担と、高品質でも買い手が上乗せを払うとは限らない販路の細さが壁になっている。資材が手に入りやすくなっても、認証のコストは残る。

仕入れの実務では、供給元が「有機肥料を使っている」と言ったときに、どの資材をどの時期にどれだけ使ったかまで書面でたどれるかが分かれ目になる。施肥そのものを組み直す試みも各地で進み、ゲアン省のパイン圃場で追肥を1haあたり1.2トンから0.9トンへ25%減らした実証のように、量を減らしながら生育を保つ記録も出てきた。有機への切り替えと減肥は別だが、どちらも「何をどれだけ入れたか」の記録があって初めて買い手に説明できる。

供給元に投げる三つの質問

仕入れる立場なら、次の三点で産地の位置が測れる。

  • 使っている肥料の銘柄とメーカー名、そのうち有機肥料が占める割合
  • その圃場が省・市の有機肥料関連の実施計画や実証モデルの対象か
  • 施肥の記録(時期・量・資材名)を出荷ロットごとに出せるか、何年分さかのぼれるか

三番目が実務では一番効く。産地が答えられないなら、有機や減化学肥料を条件にした取引は書面上の約束で終わりやすい。メーカーの追跡の仕組みと産地の記録がつながれば、買い手が求める説明の多くを供給元側で用意できる。

15万トンの絵が本物かは2026年の3万トンで分かる

今回出てきたのは、承認済みの5カ年戦略に置かれた有機肥料事業の年次目標と見込み、その最初の一段を輸入と委託加工で埋めるという説明だ。2026年の3万トンがどこまで動いたかが、2029年の15万トンをどう受け取るかを決める。

日本側が次にとれる一手は、ベトナム産を扱う既存の供給元に、施肥記録の粒度と保存年数を書面で確認しておくことだ。資材の供給が増えるより先に記録の形式をそろえておけば、産地が有機肥料へ切り替えたときにその事実をそのまま取引条件へ反映できる。

参照元

  • Nông nghiệp và Môi trường「有機肥料は土壌の健康を取り戻す鍵」(2026年9月24日)— nongnghiepmoitruong.vn
  • Nông nghiệp và Môi trường「カントー、有機肥料の利用を推進」(2026年9月15日)— nongnghiepmoitruong.vn
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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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