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苗2300本を4戸へ、ラオカイ2haのタイ系バンレイシは売れるか

ベトナム北部の山あいで、日本の原料調達ではあまり名前を聞かない果実の植え付けが始まった。ラオカイ省バオニャイ社の3集落で、タイ系バンレイシ「ナ・ホアンハウ」の適合苗2,300本が貧困・準貧困の4世帯に配られ、合計2haで育成に入っている。農業環境紙(Báo Nông nghiệp và Môi trường)が2026年9月22日に伝えた。

2haは商談の単位に届かない。読む値打ちがあるのは段階のほうだ。新品目が産地として立ち上がる数年のあいだに植栽密度と建値の置き方が固まり、あとから動かしにくくなる。円換算は2026年9月25日時点の1円=約163.6ドン(exchangerate-api.com)による概算だ。

目次

苗2,300本が4世帯へ、ラオカイの2haで何が始まったか

対象はコイサー・ナムチー・チュンドーの3集落

植え付けが始まったのは2026年半ば。この3集落で、ナ・タイ(na Thái)とも呼ばれるナ・ホアンハウの苗が農家の手に渡った。事業は少数民族・山岳地域の社会経済開発に関する国家目標プログラムの枠内にあり、貧困対策を兼ねる。

事業主体(chủ đầu tư)は社の総合サービスセンターだ。同センターのグエン・チュン・タイン副所長は、あくまで試験として実施し、経済効果を評価したうえで拡大策を検討する段階だと説明している。

桑と蚕で伸びなかった世帯が800本超を引き受けた

チュンドー集落のラム・ヴァン・チュオン氏の家族は桑を植えて蚕を飼っていたが、期待した成果に届かなかった。事業の立ち上げ時に登録し、配布総数2,300本の3分の1超にあたる800本超を受け取っている(比率は編集部の割り算)。チュオン氏が気にしているのは苗より、自分の家の条件に合う植え方と手入れの技術だという。

収量7トン・単価3万5,000ドンの試算はどこまで使えるか

植えたばかりで、実績の収量はまだ無い

起点記事は数字の性格を断っている。未収穫のため実際の単収を評価する根拠は無い、としたうえで、技術工程にもとづく理論値として1haあたり年7トンを置き、平均販売価格3万5,000ドン/kg(約214円)で1haの年間価値を2億4,500万ドン(約150万円)とする。投資費用を引いた見込み収入はおよそ7,000万ドン(約43万円)で、実際の効果は各戸次第で振れる、と断っている。

掛け算は合っている。7,000kg×3万5,000ドンは2億4,500万ドンで原文どおりだ。ベトナム語の「35.000 đồng」のピリオドは桁区切り、「0,14ha」のカンマは小数点で、日本語と逆だ。「245 triệu」の triệu は100万、「tỷ」なら10億で、取り違えると桁が3つ動く。

粗収入2億4,500万ドンと手取り7,000万ドンの開き

差額の1億7,500万ドン(約107万円)は内訳が示されていない。後述するゲアンでは1ha(650本)の費用が4,500万ドンで、初期造成だけでは説明がつかないので、未確定のまま扱う。単価3万5,000ドンも、畑先渡しなのか集荷業者の買値なのか地元市場の店頭なのかは読み取れない。段階の違う価格を並べて倍率を出すと産地の実力を過大に見せるので、本稿でも倍率は出さない。

先行するゲアンとチャビンでは実際いくらで売れているか

ゲアンは園地渡し8万ドン、在来種の倍を超える

同じ紙面が2022年にゲアン省ギアヒエウ社のカオ・タイン・ヴィン氏を取材している。老木のオレンジ1haを引き抜き、半分を在来種、半分をタイ系に切り替えた事例だ。植え付けから3年近くで2トン、当年は1haで4.5トン。価格は在来種が3万5,000ドン/kg、タイ系が8万ドン(約489円)だった。

この8万ドンは取引段階がはっきりしている。毎日あるいは2〜3日に一度、集荷業者が園地に来て選んで収穫し、計量して園主に支払うと記事にある。畑先渡しの建値だ。在来種の3万5,000ドンも同じ段階なので、倍を超えるという比較はこの2つの間でだけ成り立つ。果実は多くが1個0.5〜0.8kg。1ha(650本)の苗・整地・肥料・灌漑・防除の費用は4,500万ドン(約28万円)、当年の売上は2品種あわせて2億5,000万ドン(約153万円)超だった。

チャビンの砂丘地は年2作で20トン、ただし出口は固まっていない

チャビン省カウガン県ヒエップホア社のチャン・タン・タイ氏は、保水力が乏しく乾季に灌漑水が足りない砂丘地(đất giồng cát)の0.14haに180本からナ・タイを始めた。高さ30cmの盛り土と3m間隔、排水溝と点滴灌漑で、年2作の平均20トン/haに達している。販売価格(2024年時点)は3万〜5万ドン/kg(約180〜310円)だ。

ただし同省栽培・植物防疫支局のチャン・トゥン副支局長は、チャビンにはナ・タイの安定した出口がまだ無く、主に仲買を通じて売られていると述べている。ナ・ホアンハウはメコンデルタでは新しい品目ではなく、タイ氏が最初だったのはフィエウ集落で有機的な方式に振った点だという。

産地 面積・本数 単収 単価と取引段階
ラオカイ省バオニャイ社(2026年9月) 2ha・2,300本・4世帯 年7トン/ha(理論値・未収穫) 3万5,000ドン/kg(段階は未確認)
ゲアン省ギアヒエウ社(2022年9月) 1ha・650本(在来種と半々) 4.5トン/ha(実績) タイ系8万・在来3万5,000ドン/kg(畑先渡し)
チャビン省ヒエップホア社(2024年11月) 0.14ha・180本から 20トン/ha(年2作・実績) 3万〜5万ドン/kg(段階は未確認)

理論値と実績値、単作と年2作が混ざるので優劣の比較には使えない。同じ品種でも単収は4.5トンから20トンまで開き、バオニャイの置いた7トンは控えめな側にある。

乾燥・ピューレの原料として見るとき何を確かめるか

大玉で種が少ないのはどの工程で効くか

ナ・ホアンハウが日本の加工原料として見られる理由は、果実が大きく種が少ない形質にある。ただしこの形質は9月22日の起点記事には無い。同じ紙の別稿がチャビンのタイ氏の果実を1個500g超・種が少ないと伝えており、特定の圃場の実績として扱うのが正しい。

裏ごしして使う工程なら、大玉で種が少ないことは可食部比率で効く。タイ氏は砂丘地の果実を皮が薄く水っぽくないと語っており、この薄さが輸送でどう出るかは実測したい。タンホアが30haで揃えるマンゴーの事例のとおり規格を揃えるには面積と集荷単位が先に要り、2haとの差がそのまま課題になる。

2haの初収穫では商談の単位に届かない

理論値の7トン/haでも2haで年14トン、乾燥品にすれば重量はさらに減る。継続取引の量ではない。買い手がいまできるのは発注ではなく、産地が広がったときに最初に声がかかる位置の確保だ。量より供給元の管理水準が先に効く。ナフーズが基幹システムを統合した動きのように原料ロットの追跡を整えた加工業者なら、新産地の少量でも受け皿になりうる。

北部山間の新品目が産地になるまでに要る時間

拡大の可否は4世帯の初収穫が決める

タイン副所長の説明では、2haは経済効果を追跡・評価するための試験で、参加世帯の結果が拡大の算定根拠になり、長期には専作地帯の形成を見据える。時間軸は先行事例から拾える。チャビンでは16か月齢の木で着果を制御でき、ゲアンでは植え付けから3年近くで2トン、その翌年に4.5トンへ伸びた。バオニャイの初結実は早ければ2027年末、産地として語れる収量は2028年以降だ。

植栽密度と販路づくりは今の段階で決まる

2,300本を2haに植えると1haあたり1,150本になる(編集部の割り算)。ゲアンの650本/haより密で、チャビンの3m間隔(約1,100本/ha)に近い。密植は早期の収量を稼ぎやすい反面、剪定と受粉の手間が増える。ゲアンのヴィン氏は朝に花粉を採り夕方に別の花へ授粉する作業を日課にしており、数年後に誰がその手間を担うのかが密度の判断とセットになる。

ソンラの農家がスマホで販路を探し始めた動きのように、北部山間の産地は集荷業者一本ではない売り方を試し始めた。国内の高単価な売り先が先に育てば、輸出向けの価格交渉はその分だけ不利になる。

確認項目 分かっていること 次に確かめる先
産地 ラオカイ省バオニャイ社の3集落、計2ha 同社の総合サービスセンター
初収穫 2026年半ば植え付け。先行例は16か月〜3年で着果 2027年以降の現地報道と社の評価
価格 畑先渡しと確認できるのはゲアンの8万ドン/kgのみ。ラオカイとチャビンは段階不明 段階を明示した見積(畑先渡し・加工場渡し・輸出FOBのどれか)
加工適性 1個0.5〜0.8kg・種が少ないとの報道 可食部比率と追熟速度の実測

いま取れる一手は、発注の打診ではなく品種の実測だ。ナ・ホアンハウはメコンデルタで先に商業栽培されており、出荷中の産地に当たれば、可食部比率、糖度、追熟の速さ、裏ごし後の色と粘度を現地で測るか、加工業者に試作を頼める。生果を日本へ持ち込むなら植物検疫の要件を所管に先に確認しておく。その数値を持って初収穫を見に行けば、立ち上がった瞬間に条件を出せる。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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