ベトナムはマカダミアを4万6000ha以上植えている。それでも2026年1〜7月に、およそ3000万ドル分を買って国内に入れた。同じ7ヶ月の輸出額は3400万ドル弱で、売った額と買った額がほぼ並ぶ。ベトナム紙VnExpressが9月20日に報じ、輸出の内訳は税関当局の集計としている。ナッツを原料に使いたい日本の食品メーカーには、産地資料の「作付面積」の扱い方を決め直す材料になる。
4万6000haを植えた国が、7ヶ月で3000万ドル分を買っている
輸出3400万ドル弱に対し、輸入は3000万ドル
税関当局の集計として報じられた1〜7月のマカダミア輸出額は3400万ドル弱。生の実が1800万ドル弱で前年同期比11.2%減、加工品が1600万ドル弱で同346%増だった。346%増は前年同期のおよそ4.5倍にあたる(本稿での逆算)。1ドル=158円台(2026年9月25日)なら輸出は54億円前後、輸入は48億円前後だ。
この3000万ドルは消費者向けの実が足りないという話ではない。足りないのは加工に回す原料の量と質だ。ホーチミン市のナッツ加工企業は、加工品の品目が増えるほど安定した数量と品質の原料が要るのに国内供給が常に応えられるわけではない、と説明したと報じられている。
減ったのは生の実、伸びたのは加工品
生の実が1割強減り加工品が4.5倍近くに伸びた組み替えは、実のまま売る段階から抜け出す動きを示す。ただし原料側への要求は一段きつくなる。殻割りや焙煎の設備を入れた工場は、同じ規格の実を年間通して一定量入れないと採算が合わず、園地が揃わない分は輸入で埋まる。
植えた面積と、実を出せる面積は別の数字
接ぎ木で3年目に実がつき、稼げるのはその先
マカダミアは多年生で、植えた年に収穫できる作物ではない。ベトナム林業科学院の見解として、接ぎ木苗なら3年目から実がつくが、高い収量に届き数量を伸ばすにはさらに年数が要ると報じられている。作付面積には、まだ一粒も出していない若い園地と毎年安定して出す成木の園地が同じ「ha」で足し込まれている。
ラムドン省は1万6000haのうち6600haしか収穫期に入っていない
ラムドン省農業環境局の数字では、省内のマカダミアはおよそ1万6000ha、そのうち収穫期(ベトナム語で「事業期」)に入っているのは約6600haにとどまる。2025年の生産量は約1万3700トンで前年から5割近く増えた。収穫期の面積で割ると1haあたり約2.1トンになる(本稿での計算。省の公表値は重量がどの段階かを示していない)。
ラムドン省の1万6000haは全国4万6000haの3分の1強を占める。面積でこれだけの比重を持つ省でも、実を出している面積は4割ほどだ。この比率が全国で同じかは今回の報道からは分からないので、全国の稼働面積を逆算するのは避ける。
国内は生の実2万トン、世界は2030年に85万トンを求める
国内生産2万トン、2024年は3500〜4000トンを輸入
農業分野の統計として、2025年のマカダミア生産量は生の実で2万トン強と見込まれている。一方2024年には、加工と国内消費に回すため3500〜4000トンの原料用の実を南アフリカ、オーストラリア、ケニアから輸入した。同じ2024年のベトナムからの輸出は、殻を割った可食部(身)でおよそ600トンだった。
ここで注意がいる。「輸出600トン」は身(nhân)の重さ、「輸入3500〜4000トン」は殻を割る前の原料(hạt thô)の重さで、取引段階が違う。両者を割って「6倍輸入している」と書けば誤りになる。社内資料でも同じ表に並べないほうがいい。
2030年の需要予測は身で22万トン、生の実なら85万トン
ベトナム野菜果実協会のダン・フック・グエン事務局長の見通しとして、2030年に世界市場が必要とするマカダミアは身で約22万トン、生の実に換算して約85万トンと報じられている。両者の比率では身は生の実の約25.9%にあたる(本稿での計算)。
| 項目 | 数値 | 時点・出所 |
|---|---|---|
| 全国作付面積 | 4万6000ha超 | 報道(農業分野の統計) |
| 2025年生産量 | 生の実で2万トン強 | 同上 |
| ラムドン省の面積/うち収穫期 | 約1万6000ha/約6600ha | ラムドン省農業環境局 |
| 2026年1〜7月 輸出額 | 3400万ドル弱(生の実1800万ドル弱/加工品1600万ドル弱) | 税関 |
| 2026年1〜7月 輸入額 | 約3000万ドル | 報道(VnExpress) |
政府決定は輸出4億ドル、報じられた協会目標は1億ドル超
決定344号は2030年に13万〜15万ha、輸出4億ドル
起点の記事は、2030年までに面積を13万〜15万haに引き上げ、ナッツ製品の輸出で1億ドル超を目指す方針をベトナムマカダミア協会のものとして伝えている。ただし13万〜15万haという範囲は、2022年3月15日付の首相決定344号(マカダミア持続的発展案)の全国目標と同じ数字だ。同決定は2030年に加工を経た生産量約13万トン、輸出額約4億ドル、うち殻付きのまま出す製品の比率を4割以下と置く。報道の「1億ドル超」と決定344号の「約4億ドル」には4倍の開きがある。同じ「1億ドル超」は他のベトナム媒体にも出るが、いずれもこの記事より後の転載で独立した裏づけにはならない。協会が別に置いた目標なのか報道の側で数字が変わったのかは確認できない。日本側で計画に引くなら出所が政府決定である後者を使い、前者は報道ベースと断るのが安全だ。
一次加工を300〜400カ所、深加工を8工場に増やす
決定344号は加工設備にも数字を置く。2030年までに既存65カ所を改修し、年産100〜200トン規模の一次加工・加工拠点を新たに300〜400カ所つくる。そのうえで生の実で年1万〜1万5000トンを処理する深加工工場を約8カ所立てる。いずれも投資を促す書き方で、着工が決まった数ではない。面積の配分は西北部に7万5000〜9万5000ha(ディエンビエン、ライチャウが中心)、中部高原に約4万5000ha(ラムドン、ダクノン、コントゥムが中心)、その他に約1万haとされている。
一次処理を数百カ所の小さな拠点に担わせ、その先に深加工工場を8カ所置く二層構造だ。日本のメーカーが数十トン単位で同じ規格を求めるなら、相手が300〜400カ所側の一次加工場か8カ所側の深加工工場かで話が変わる。高原地帯で一次産品から加工品へ寄せた先行例は、カウダットの有機アラビカで見える。
日本の買い手が面積の代わりに確認する項目
聞くのは「何ha植えたか」ではなく「何haが実を出しているか」
産地資料の面積は収穫期に入った面積と分けて受け取る。ラムドン省の例では両者に2.4倍の差があった(本稿での計算)。商談の初期に確認するのはこの5点だ。
- 提示された面積のうち収穫期に入っているのは何haか
- 園地の平均樹齢と、接ぎ木苗か実生苗か
- 直近2シーズンの集荷実績(契約数量ではなく実績)
- 乾燥・殻割りを誰がやるか(自社設備か外部委託か)
- 供給が足りない月に輸入原料を混ぜる運用があるか
最後の項目は3000万ドルの輸入と直結する。工場が南アフリカや豪州の原料を併用している以上、ベトナム産で通すなら産地指定を契約書のどこに書くかを先に詰めたい。産地を絞って規格を揃える進め方は、タンホアが30haでマンゴーの規格を揃えた事例と重なる。
見積もりの単価は、どの段階の値段かを先に確定させる
単価は取引段階を揃えないと比較できない。同じ「1kgいくら」でも外皮つきの生果か乾燥した殻付きか殻を割った身かで重さの基準が変わる。前掲の22万トンと85万トンの比率なら重さだけで約3.9倍の開きがある(本稿での計算)。ここに乾燥と殻割りの費用が乗る。ベトナム側の資料は外皮つきと殻つきをどちらも「hạt tươi」「quả tươi」と書くことがあり、語だけでは段階が決まらない。
| 段階 | 現物の状態 | 受け渡し | 見積書で詰める点 |
|---|---|---|---|
| 生果 | 緑の外皮がついたまま | 畑先渡し | 外皮を外すまでの時間 |
| 殻付き | 外皮を外して乾燥した殻つき | 一次加工場渡し | 乾燥後の水分値、サイズ選別の区分 |
| 身(nhân) | 殻を割った可食部 | 深加工工場渡し | 粒の等級、色調、酸化の判定基準 |
| 輸出FOB | 上記いずれかを船積み | 船積み港 | 通関・梱包費を含むか |
段階の違う見積もりを並べると、実態より安い産地と高い産地が生まれる。複数社から取るときは段階を1つ指定して出し直してもらうのが早い。数量が増えても規格が揃わない局面の工場選びは、ドリアンでA級比率が下がった局面の買い手の動きに近い。
次の商談に持っていく確認票は6項目で足りる
国内供給が加工需要に届かない以上、ベトナムの加工企業にとって安定した原料の出し手は今も不足している。買い手としてだけ動けばその不足を奪い合う側に回るが、契約栽培や乾燥設備への関与で稼働園地を増やす側に回れば交渉力が変わる。決定344号が西北部に最大の配分を置くことは新規植栽が続く前提を示し、そこで育つ園地が収穫期に入るのは早くても3年後だ。
すぐ取れる行動を1つに絞るなら、取引先候補に送る確認票を1枚作ることだ。稼働園地の面積、平均樹齢、直近2シーズンの集荷実績、一次加工の主体、輸入原料の併用有無、見積もりの取引段階。この6項目を最初のメールで書き戻してもらうだけで、4万6000haの内側は見えてくる。