NÔNG NGHIỆP VIỆT NAM — TẠP CHÍ NÔNG NGHIỆP ĐÔNG NAM Á

バインクオンの香りを養殖する、カントー250㎡のタガメ経済

ベトナム南部カントー市フォックトイ坊で、養殖業者のフイン・ヴァン・トゥアン氏(42)が、250平方メートルの敷地に据えた7つの水槽でカークオン(cà cuống、学名Lethocerus indicus)の人工繁殖を軌道に乗せた。地元紙Dân Việtが2026年7月23日に伝えている。オスは1匹5万ドン、メスは2万〜2万5000ドン、種苗は10万ドン、卵は1房9万ドンという値がつく(1円=約162VND、2026年7月時点の換算。5万ドンは約310円)。この虫はハノイのバインクオンや魚醤に一滴垂らす香味原料として使われてきた素材で、珍味というより香辛料に近い立ち位置にある。日本の調達にとっての論点は、その香りが天然採取から養殖に移り、飼育条件で濃さを指定できる原料に変わりつつある点にある。

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250平方メートル・7水槽、オスだけ10日長く飼う

Dân Việtによると、トゥアン氏の飼育サイクルは約65日で、その間にカークオンは5回脱皮する。メスは65日で取り上げ、オスだけを別の水槽に移して75日前後まで飼い続ける。分けるのは香りのためだ。オスは長く飼うほど姿がよくなり、90日を超えると精油は味が濃く辛みも強くなる、と同紙は書いている。1つの水槽は約6平方メートル。餌は生後10日ほどのオタマジャクシやグッピーから始め、大きくなるにつれて稚魚へ切り替える。

採算の骨格は素朴だ。トゥアン氏の計算では1匹あたりの投資コストは平均で約1万ドン(約60円)。オスが5万ドンで捌ければ差益は残る。ただし歩留まりは軽くない。卵は1房およそ100個だが、孵化と育成を経て成虫30匹が残れば成功と見る水準だという。年間の利益は数億ドン規模(3億ドンで約185万円)と報じられ、売り先はSNSと電子商取引サイトが中心で、買い手は北部に多い。

田んぼから消えた香味料が、なぜ今そろって養殖に回るのか

Dân Việtは、カークオンがかつてメコンデルタの川や水田に多く現れたものの、気象や環境の変化で自然界には見られなくなったと伝える。北部でも事情は似ていて、VietnamNetは2021年の記事で、植物保護剤の多用によって北部ではほとんど採れなくなり、流通するものはラオスや南部からの持ち込みが中心だと報じていた。ベトナム科学技術情報ポータル(NSTI)に登録された生息環境の研究も、この種を「ベトナムレッドデータブックに名を連ねる希少な水生昆虫」と位置づけ、保全を目的に生息環境の解明を進めている。

天然採取が細ると、香りの相場は跳ね、そのぶん養殖の経済性が立つ。生薬原料でも同じ順番で産地化が起きており(森から畑へ、天然採取に限界の薬用根「地レン」をクアンニンが産地化)、カークオンはその水生版にあたる。違うのは、産地が特定の山村に縛られない点だ。250平方メートルと水槽、稚魚を賄う小さな池があれば成り立つため、参入は都市近郊にも広がっている。

二つの産地の数字を並べて見る

養殖の実像を把握するには、カントーの1件だけでは足りない。タイニン省フントゥアン社のグエン・フー・ドゥック氏は45槽規模で同じ虫を扱う。ただしこちらは生体と種苗の販売が中心で、加工品は手がけていない。両者を並べると、規模と売り方の設計が収益の形を決めているのが見える。

項目 カントー市(トゥアン氏) タイニン省(ドゥック氏)
規模 7水槽・敷地250㎡ 45水槽・1槽あたり約4㎡
飼育密度 公表なし 商用200〜250匹/4㎡、種苗用40匹/㎡
成虫の販売価格 オス5万ドン(約310円)/メス2万〜2万5000ドン(約123〜154円) 3万〜3万5000ドン(約185〜216円)
種苗 10万ドン/匹(約620円) 10万ドン/匹(約620円)
9万ドン/房(約560円) 公表なし
加工品 塩漬け・焼き・真空パック後に冷凍。1年保存可 取り扱いの記載なし
収益 利益で年間数億ドン(3億ドンで約185万円) 売上で月2000万〜3000万ドン(約12万〜18万円)

小売側の水準も押さえておきたい。VietnamNetは2021年時点で生体が1キロ約350万ドン(約2万1600円)、それ以前は1キロ500万ドンを下回ることがなかったと伝えている。同記事に登場するハノイの販売業者は、ラオスや南部から仕入れた生体のほか、オス10匹を漬け込んだ魚醤を1本50万ドン(約3086円)、精油を1瓶30万ドン(約1852円)、2リットル瓶の酒を120万ドン(約7407円)で扱う。精油の一般的な相場は5ミリリットル瓶で30万〜80万ドン(約1850〜4940円)と24hは伝えており、生体で買うより加工した状態のほうが単価も日持ちも扱いやすい構図になっている。

産地・買い手・研究者はどう見ているか

飼育日数と香りの関係は経験則として語られる。実際の取り上げはオス75日前後で、90日超はさらに濃くなる目安として挙がった線だ。カントーのトゥアン氏は種苗と卵を売り、他の農家から生体を買い戻して出口をつくる繁殖業に寄っている。タイニン省のドゥック氏は45槽の生体販売で月2000万〜3000万ドンの売上を立てており、同じ虫でも収益の作り方が違う。

買い手側の温度も、報道からある程度読める。VietnamNetは、この香味がバインクオンやブンチャー、ブンタンといった料理の水つけダレに使われてきたと伝える。Thanh Niênの2025年9月の記事は、トゥアン氏の出荷先として北部のバインクオン店とブンタン店を挙げている。需要の芯は北部の外食にあり、南部の生産者が北へ売るという流れができている。

研究の側は、まだ資源としての保全に軸足を置く。ハノイ国家教育大学の紀要に載った2021年の報告は、ラオスでの現地調査をもとに生息環境を5類型に分け、成虫の密度が最も高いのは水田だと結論づけている。産業として拡大する動きと、ベトナムレッドデータブック掲載種としての保全研究が同時進行している状態で、産地表示や由来の説明は今後買い手が問われる部分になる。

日本の調達担当が押さえるべき三つの論点

まず種の混同を解いておきたい。日本のタガメ(Kirkaldyia deyrolli)は2020年2月10日付で種の保存法の特定第二種国内希少野生動植物種に指定され、販売や頒布を目的とした捕獲・譲渡が原則として禁じられている。昆虫食企業のTAKEOは自社サイトで、タイやラオスに普通に生息するLethocerus indicusは別種で、ワシントン条約の対象でもIUCNレッドリストの絶滅危惧指定でもなく、日本の種の保存法の国際希少野生動植物種にも入っていないと説明している。ベトナムのカークオンも同じ学名の種だ。国内で「タガメは売買禁止」と理解している社内の関係者に対して、輸入原料は別の種である点を最初に整理しておかないと、稟議が止まる。

次に、買うのは虫ではなく香気だという整理だ。オスを75日以上、香りを立てたいなら90日超まで飼うという生産者の運用は、そのまま仕様書に書ける項目になる。天然香気を原料として設計する発想は、香料を足さずにパンダンの香りを立てるココナッツ製品(香料ゼロでパンダンが香る——カマウ発パンダンココナッツの原料力)と同じ土俵にある。性別・日齢・抽出形態を書面で指定できるかどうかが、商談の質を分ける。

三つめはロットが立たないという現実だ。卵1房100個から成虫30匹という歩留まりと、7水槽・250平方メートルという設備規模を掛け合わせれば、単独農家で通年の商用ロットを埋めるのは難しい。ベトナム産の香辛料原料で機能してきたのは、複数農家を束ねて出荷を平準化する契約栽培の形で(摘めば完売する唐辛子、契約栽培が拓くベトナム産香辛料の原料)、カークオンでも同じ設計が要る。今の段階で1社に大口を投げても、応じられる生産者はまだ見当たらない。

生体ではなく加工品で入るという現実解

日本側から最短で組める形は、生体の輸入ではなく魚醤・精油といった加工品の調達だ。販売目的で食品を輸入する際は食品衛生法第27条に基づく輸入届出が必要で、原材料に有毒・有害物質が含まれる場合は原則として輸入できない。生体や生鮮の昆虫を通すより、ベトナム側で瓶詰めまで終えた調味料のほうが、書類も温度管理も現実的な範囲に収まる。

その際、品質の目安として使えるのがOCOP(一村一品)の星付けだ。魚醤ではハイフォンの製品が最高位の評価を得ており、この格付けが日本側の産地選定の入口になり始めている(ハイフォンの魚醤2品がOCOP最高位へ、5つ星が調達の入口になる理由)。カークオン入りの魚醤はまだ星付けの外にある小規模品が多く、逆にいえば、日本のバイヤーが規格づくりに関与できる余地が残っている段階だ。

商談前に確認したい項目

確認項目 現時点で分かっていること
種名 Lethocerus indicus。日本産タガメ(Kirkaldyia deyrolli)とは別種
主な産地 カントー市フォックトイ坊、タイニン省フントゥアン社ほか
香気の仕様 オスを75日前後まで飼育。90日超で精油の味が濃く辛みが増すと生産者が説明
歩留まり 卵1房約100個から成虫約30匹で成功水準
生体の参考価格 オス5万ドン(約310円)/メス2万〜2万5000ドン/種苗10万ドン/卵9万ドン・房
加工品の参考価格 魚醤(オス10匹使用)50万ドン/本、精油30万ドン/瓶、酒120万ドン/2L瓶(2021年VietnamNet)
販路の現状 SNSと電子商取引が中心。固定の卸ルートは未整備
日本側の手続き 販売用食品の輸入は食品衛生法第27条の輸入届出が必要(厚生労働省)
換算レート 1円=約162VND(2026年7月時点)

まとめ:まず一房、次に規格

カントーの250平方メートルが示したのは、大規模投資ではなく飼育日数の管理で香りの濃さを作れるという事実だった。日本の調達側が今できるのは、大口の引き合いを出すことではない。動くべき順番は三つある。ベトナム産のLethocerus indicusが日本の規制対象種と別であることを社内で確定させ、次にカントーとタイニンの生産者から精油と魚醤のサンプルを少量取り寄せ、香りの再現性を自社の商品で確かめる。そこまで進んで初めて、性別・日齢・抽出方法を書いた仕様書を相手に渡す価値が出る。

相場は動いている最中だ。生体は以前の1キロ500万ドン超から2021年に350万ドン前後、2026年の報道では300万ドン前後まで下がってきており、養殖の裾野が広がればさらに動く。希少さで値を張る局面が終わりかけている今は、買い手が規格を提示して産地を育てられる、短い窓が開いている時期にあたる。

参照元:Dân ViệtNông nghiệp và Môi trườngThanh Niên24hVietnamNetTAKEO厚生労働省(輸入食品監視業務)

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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