NÔNG NGHIỆP VIỆT NAM — TẠP CHÍ NÔNG NGHIỆP ĐÔNG NAM Á

農家が作物の医者になる日、クアンニン減農薬米が拓く対日調達

ベトナム北部クアンニン省で、水稲農家が「作物の医者」になるための研修が始まった。リエンホア坊(phường Liên Hòa)のヴィケー地区で、坊農民会が坊のサービス提供センターや専門機関と組み、農民会会員30名を対象に3か月間の統合的植物健康管理(IPHM)研修を実施する。狙いは、農薬の使用量を抑えながら収量と品質を上げること。残留農薬の基準が世界でも厳しい日本の食品バイヤーにとって、この動きは「安いから買う」から「安全設計まで見て買う」への転換点として読める。

目次

「作物の医者」という発想は何を変えるのか

研修が掲げるIPHM(Integrated Plant Health Management、統合的植物健康管理)の考え方は明快だ。土が健康なら作物も健康に育ち、作物自身が害虫と戦う力を持つ——だから農薬に頼る前に、土と株の状態を整える。研修では水稲の健康管理、病害虫の見分け方と防除、肥料と農薬の正しい使い方、生態系の保全、そして生産コストの下げ方までを扱う。農家が自分の田を「診る」眼を持てば、症状が出てから薬を撒く後手の防除から、原因に先回りする管理へと軸足が移る。

この発想は、藁を焼かずに肥料へ戻して生産コストを約25%削ったニンビン省の「緑の米」づくりとも地続きだ。投入資材を減らしても収量を保つという設計思想は、北部の複数の産地で同時多発的に広がりつつある。

リエンホアの稲作データが示す土台

リエンホア坊は農地3,000ヘクタール超を抱え、うち水稲は930ヘクタールを上回る。作付けは冬春作が約900ヘクタール、夏秋作が約910ヘクタールで、平均収量は60〜62.5タ/ヘクタール(1タ=100キロ換算で6.0〜6.25トン/ヘクタール)で安定している。この数字は、ベトナムの主要稲作地としては手堅い水準だ。

指標 リエンホア坊の数値
農地総面積 3,000ヘクタール超
水稲作付面積 930ヘクタール超
冬春作 約900ヘクタール
夏秋作 約910ヘクタール
平均収量 60〜62.5タ/ha(約6.0〜6.25トン/ha)

すでに一定の収量を確保している産地が、増産よりも「減農薬」と「品質」に舵を切る点が重要だ。伸びしろの乏しい成熟産地ほど、次の競争軸は量ではなく安全性と再現性になる。

行政と農民会が描く「知識の伝播者」

植物栽培・植物保護支局のブイスアンフン副支局長は、農家が学んだIPHMの概念を自分の田で実践することに期待を寄せる。リエンホア坊農民会のホアンティホン会長は、研修を受けた農家が周囲へ知識を広げる「伝播者」になることを望むと語る。30名という規模は小さく見えるが、彼らが近隣へノウハウを渡していく設計になっているなら、産地全体の底上げにつながる。

行政主導で農家の技術を標準化する流れは、稲作の現場でも進む。ドローンと交互潅水を組み合わせて水と資材を抑えるアンザン・ソンホア農協の米づくりDXのように、経験知を手順に落とし込む取り組みが各地で並走している。IPHM研修も、その「経験の見える化」の一つだ。

なぜ今、稲作の現場で「健康管理」なのか

ベトナムの米は長らく輸出量で世界の上位を占めてきたが、価格帯の勝負では低〜中級米に押し込まれやすかった。安さで数量を稼ぐモデルは、生産コストの上昇や気候変動による病害虫の増加に弱い。農薬を増やせば当座の被害は抑えられても、コストが膨らみ、輸出先の残留基準に触れるリスクが高まる。IPHMのように土と株の健康を起点に据える管理は、この悪循環を断つための現実解だ。薬を減らすことは、環境負荷を下げるだけでなく、資材費を圧縮して手取りを守る経営判断でもある。

研修が坊農民会という末端組織を主体に据えている点も見逃せない。行政が号令をかけるだけでは現場は動かないが、同じ田を耕す会員同士が学び合う形なら、技術は口伝と実演で広がる。30名が「診る眼」を持ち帰り、隣の田へ手ほどきする——この草の根の伝播こそ、産地の栽培水準を底上げする最短ルートになる。

日本の調達層はこの動きをどう使うか

日本の食品バイヤーにとって、ベトナム産米や米加工品を扱う際の最大の関門は残留農薬とトレーサビリティだ。IPHMのように「農薬を減らす技術」が産地に根づけば、検査で弾かれるリスクが下がり、契約栽培の交渉もしやすくなる。減農薬は単なる環境配慮ではなく、通関と棚割りを通すための実務的な保険になる。

さらに一歩進めば、減農薬は価格プレミアムの源泉にもなる。USDA有機認証で農家所得を倍増させたハノイ郊外ドンフーの有機米のように、栽培管理を認証や産地コードへ接続できれば、安売り競争から抜け出せる。IPHM研修はその手前の「土台づくり」に当たり、日本側は産地を選ぶ段階で「農薬をどう管理しているか」を問い、管理履歴を残せる産地と早めに関係を築いておく価値がある。

まとめ:小さな研修を産地選定の物差しに

30名・3か月というリエンホアの研修は、規模だけ見れば地味だ。だが「作物の医者を育てる」という発想は、量で勝負してきたベトナム稲作が品質と安全へ舵を切る象徴でもある。日本の調達担当が次に産地を評価するときは、収量や価格に加えて「減農薬の技術者が現場に何人いるか」を尋ねてみたい。研修の有無は、その産地が数年後にどんな米を出すかを映す先行指標になる。

参照元

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

目次