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越青果36.5億ドルの上半期、日本の調達が生鮮の先へ動く理由

ベトナム農業環境省は、2026年上半期の青果(野菜・果実)輸出額が36.5億ドル、前年同期比17.8%増に達したと明らかにした。数字だけを見れば順調な右肩上がりだが、日本の食品バイヤーや輸入商社が読むべきは総額ではなく中身の変化だ。生鮮ドリアンやバナナといった従来の稼ぎ頭に、冷凍・加工品が着実に積み上がり、日本の棚に載せられる品目の幅が広がりつつある。ベトナム産が日本の定番食材に育った先例は、回転寿司の白身魚に定着したパンガシウスのように水産ではすでに何度も起きてきた。青果でも同じ構図が動き始めている。

目次

上半期36.5億ドル、伸びを支えるのは加工と品目の集中

今回の伸びは一過性の反発ではない。第1四半期の輸出額は15.27億ドルで前年同期比31.4%増。上半期36.5億ドルから差し引くと第2四半期は約21億ドルで、四半期ベースでも生鮮・加工の両輪が回っている。ただし前年比の伸び率は第1四半期の31.4%から上半期通算では17.8%へと鈍化しており、数量の勢いだけでこの水準を保っているわけではない。牽引役は品目としてのドリアンで、1〜5月だけで約5.62億ドル、前年から約46%増と単一品目で群を抜く。輸出先は依然として中国が突出し、全体のおよそ半分を1国で吸収している。

裏を返せば、この中国一極への依存こそがベトナム側の最大の弱点でもある。生鮮ドリアンの中国向けはカドミウムや検疫の基準変更ひとつで通関が止まり、価格が乱高下してきた。輸出を伸ばしながら、いかに単一市場のリスクを薄めるか——農業環境省が繰り返す「多角化」は、そのまま日本を含む高単価市場への接近を意味している。

「生鮮を売る」から「加工して売る」への転換が起きている

統計の背後で進むのは、生鮮偏重からの脱却だ。2025年通年で加工青果の輸出は初めて20億ドルを超え、20.6億ドル・前年比約42%増を記録した。青果輸出全体に占める加工品の比率は約24%まで上がり、前年の約20%から一段引き上がった格好だ。加工ココナッツ単体で3.62億ドルに届くなど、原料をそのまま出すのではなく手を加えて付加価値を乗せる流れが数字に表れている。

この転換は、日本のバイヤーにとって選択肢の増加に直結する。生鮮では鮮度・検疫・輸送日数の壁があり、扱える品目も出荷時期も限られる。冷凍ドリアンやドライフルーツ、ピューレ、カット野菜といった加工形態が増えれば、通年で安定調達できる品目が広がる。端境期そのものを消しにかかる動きは果実側でも進んでおり、花と実が同居するロンガンの新品種のように、供給の空白を技術で埋める産地投資も並走している。

数字で見る2026年上半期

項目 数値
上半期の青果輸出額 36.5億ドル(前年同期比+17.8%)
第1四半期 15.27億ドル(+31.4%)
第2四半期 約21億ドル(上半期から差引)
ドリアン(1〜5月) 約5.62億ドル(+約46%)
最大市場 中国(全体の約51%)
2025年通年の加工品輸出 20.6億ドル(全体の約24%)

日本市場はいま「生鮮3品目」に偏っている

日本向けの現状を押さえておくと、伸びしろの位置が見えてくる。2025年のベトナムから日本への青果輸出はおよそ2.38億ドル、前年から約18%増えた。ただし内訳は菊、バナナ、サツマイモの3品目で総額の約47%を占め、いわば生鮮の少数精鋭に寄っている。

とりわけバナナの存在感は大きい。日本市場でのベトナム産は数量ベースでフィリピン、エクアドルに次ぐ第2位につけ、2025年7月には東京圏向けの数量が前年同期の2倍以上に伸びた局面もあった。ベトナム国内ではバナナの栽培面積が16.1万haに達し、輸出先は約70カ国、現状の約4.19億ドルから10億ドル規模へ引き上げる目標が掲げられている。生鮮バナナで築いた実績は、後続の加工品を日本の商流に乗せる際の信用の土台になる。

日本の調達にとっての3つの意味

この上半期の数字を、日本の輸入・仕入れの現場に引き寄せると、意味は3つに整理できる。

第一に、加工品比率の上昇は「生鮮の先」の調達余地を開く。いまの対日輸出は菊・バナナ・サツマイモという生鮮中心の構成だが、ベトナム全体では冷凍・加工の比率が24%まで上がってきた。冷凍ドリアン、ドライ果実、ピューレ、カット・ボイル野菜といった形態は、鮮度の制約を受けにくく、外食・中食・PB開発の原料として通年で組みやすい。日本のバイヤーが生鮮の枠だけで産地を評価すると、この拡張を取りこぼす。水産では加工投資で日本の調達地図を書き換えたエビ最大手ミンフーの例があり、青果でも同じく「原料か、加工品か」で相手先の見え方が変わる。

第二に、バナナで積んだ実績が加工品導入の交渉材料になる。日本ですでに数量2位まで定着した生鮮バナナは、品質・物流・数量の信頼が一定程度証明された品目だ。同じ産地・同じ輸出企業がドライバナナやバナナピューレを提案してくるなら、ゼロから未知の産地を評価するより検証コストは低い。既存の生鮮取引を、加工品の間口を広げる糸口として使う発想が有効になる。

第三に、中国依存の反動で、日本は「取りに来られる市場」になっている。輸出額の約半分を中国が占める構造は、ベトナム側にとって分散の必要が年々強まることを意味する。農業環境省が米国・日本・韓国・豪州での市場アクセス拡大を交渉テーマに挙げているのはその表れで、日本は攻めの対象に位置づけられている。買い手からすれば、産地側に多角化の動機がある局面は、価格・数量・品質保証の条件を詰めやすい時間帯でもある。

調達判断に使う主要指標

指標 内容
対日青果輸出(2025年) 約2.38億ドル(前年比+約18%)
対日の主力3品目 菊・バナナ・サツマイモ(対日総額の約47%)
日本でのベトナム産バナナ 数量2位(比・エクアドルに次ぐ)
バナナ栽培面積/輸出先 16.1万ha/約70カ国
バナナ輸出目標 10億ドル(現状約4.19億ドル)
多角化の交渉対象市場 米国・日本・韓国・豪州

まとめ——「総額」でなく「加工比率」を見て動く

2026年上半期の36.5億ドルという数字は、日本のバイヤーにとって単なる好調のニュースではない。中身を分解すれば、生鮮偏重だったベトナム青果が加工へ重心を移し、日本の棚に載る品目が広がる過渡期に入ったことが読み取れる。次に確かめるべきは3点だ。取引のある、あるいは候補の輸出企業が冷凍・加工ラインを持っているか。菊・バナナ・サツマイモ以外にどの加工品が日本の検疫・規格を通せる段階にあるか。そして中国依存を薄めたい産地側の事情を、自社の調達条件にどう反映できるか。総額の伸びを眺めるより、加工比率と品目構成の変化を四半期ごとに追うほうが、実務の意思決定にははるかに効く。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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