NÔNG NGHIỆP VIỆT NAM — TẠP CHÍ NÔNG NGHIỆP ĐÔNG NAM Á

雨季に畑が消える山岳で、温室7000㎡が年11作の通年野菜を生む

ベトナム北部の山岳地帯では、雨季になると露地の野菜畑が長雨で水浸しになり、市場から地場の青菜が消える。その「毎年の欠品」を、標高の高いライチャウ省ビンルー社の小さな生産者グループが温室で埋め始めた。7,000平方メートルのビニールハウスで年10〜11作を回し、露地が全滅する雨のさなかにも菜心やキュウリを出荷し続け、2025年上半期だけで3億ドン超の利益を出したという。天候リスクを避ける守りの話に見えて、これは「悪天候の時期こそ高く売れる」という攻めの調達設計でもある。日本の食品バイヤーにとっては、季節と天候に左右されにくいベトナム産青物という新しい選択肢の芽になる。

目次

雨で畑が消える山岳で、温室が通年供給を作った

舞台はライチャウ省ビンルー社。タンビン野菜協同組合(Tổ hợp tác rau Tân Bình)を率いるチャン・ディン・ヴオン氏は、2024年初めまで1.5ヘクタール超の露地で商品野菜を作っていた。ただ生産は天候任せで途切れがちだった。「長雨が続くと野菜は根腐れし、病害虫も一気に増える」——氏の言葉がそのまま、この地域の農家が抱える構造課題を映している。畑が不安定なら収入も不安定で、若い働き手は農業を離れていく。

転機は温室(nhà màng)の導入だった。総工費6億ドン(約360万円、1万ドン≒60円換算・以下同)のハウスに、国の補助が約1億ドン、灌漑システム5,000万ドンには半額の補助が付いた。屋根が雨を遮り、点滴灌漑で水を管理できるようになったことで、天候に振り回されていた生産が計画できる生産に変わった。

数字で見る「年11作」の中身

温室化のインパクトは作付け回数にはっきり出ている。露地では年6〜7作が限界だった同じ土地で、温室では年10〜11作が回るようになった。栽培しているのは菜心(サイシン)などの青菜とキュウリで、菜心は1,000平方メートルあたり1作でおよそ1トンを収穫する。露地なら真っ先に雨でやられる葉物を、雨季の真ん中でも安定して出せる点が大きい。

項目 露地栽培(2024年以前) 温室栽培(2024年〜)
年間作付け回数 6〜7作 10〜11作
雨季の出荷 長雨で途絶えがち 継続出荷
2025年上半期の利益 3億ドン超(約180万円)

価格面も見逃せない。菜心やキュウリの通常価格は1kgあたり13,000ドン(約78円)だが、露地物が不足する9〜10月には15,000ドン(約90円)まで上がる。露地が弱る時期にちょうど出荷できる温室は、単価の高い局面を狙い撃ちできる。守りの設備投資が、そのまま増収の仕掛けになっている構図だ。

「気候対策」を利益に変える発想

この事例が示すのは、気候の不安定さを避けるコストとしてだけでなく、供給が細る時期に出荷できる者だけが取れる価格差として捉え直す視点だ。ベトナムでは温室やスマート農業を天候リスクへの答えにする動きが各地で広がっており、北部ではスマホ潅水とLED開花制御でドラゴンフルーツの単価を引き上げる産地も出てきた。ライチャウの青菜と品目は違っても、「制御された環境で端境期を突く」という設計思想は共通している。

同じ発想は南部でも見られる。ハティン省では500平方メートルの温室で年3作を回し利益2〜3億ドンを稼ぐ韓国メロンの例があり、小面積・多回転・高単価という勝ち筋がベトナム各地で確立されつつある。ライチャウのケースは、その方程式が標高の高い貧困地域でも成り立つことを実証した点に意味がある。

ライチャウ省という産地の底力

個別の協同組合だけの話ではない。ライチャウ省全体では野菜の作付面積が3,200ヘクタールを超え、生産量は約23,500トンに達する。検査した野菜サンプルの95%以上が食品安全基準に適合しているとされ、量だけでなく品質管理の土台も育ちつつある。現状の販路はタムドゥオン市場(chợ Tam Đường)と近隣省が中心で、まだ国内流通が主だが、温室化で供給が安定すれば、より遠い市場や加工・輸出へ手が届く余地が生まれる。

日本の調達担当が読むべきポイント

日本の食品バイヤーや輸入担当がこの動きから汲み取れる示唆は三つある。第一に、ベトナム産青物の「安定供給力」が山岳部にも広がり始めていること。露地依存の産地は天候で供給が乱れるが、温室ベースの生産者は年間を通じた出荷計画が立てやすく、通年契約の相手として組みやすい。第二に、こうした温室生産は面積が小さく回転が速いぶん、単一品目に絞った少量高頻度の取引に向く。冷凍野菜やカット野菜のOEM原料として、規格を揃えた青菜を継続調達したい場合の候補になる。

第三に、気候適応が進む産地は品質トレーサビリティの意識も高い傾向がある。すでに越産果物では生鮮から加工へと産地が軸足を移す動きが加速しており、野菜でも同じ流れが来る。産地を選ぶ段階で温室化・食品安全基準への取り組みを確認しておけば、後工程の品質リスクを前もって減らせる。

ライチャウの7,000平方メートルは規模としては小さい。ただ、雨季に畑が消える土地で通年供給を作ったという事実は、ベトナムの野菜調達を「産地の天候次第」から「設計次第」へと動かす予兆になる。次に産地リストを更新するとき、温室化の有無を一項目として加えておく価値は十分にある。

参照元

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

目次