韓国農水産食品流通公社(aT/KAFTC)が9月15日に締め切った2026年7回目の米の関税割当(TRQ)入札で、ベトナムは長粒種の砕米1万トンを落札した。単価はトン当たり約436ドル。同じ回で中国と米国が取った玄米・精米はトン850ドルを超えており、価格だけ見ればベトナムの枠は半分前後の水準に見える。ところが砕米はもともと精米工程の副産物で、相場の土俵が違う。ベトナム国内の香り米砕米は10月10日時点で1kg9,000〜9,150ドン、日本円に直すと55〜56円だ。トン436ドルは1kg約69円にあたる。最安の札が、産地の相場より2割以上高いところで決まっていた。
本記事の円換算は1ドル=158.5円、1ドル=25,897ドン(1万ドン=約61円)で計算した。いずれも2026年10月12日時点の値で、元の通貨単位を併記した。
114,833トンのうち中国と米国が81%を取り、ベトナムに回ったのは8.7%の砕米だけ
Nông nghiệp và Môi trường紙が10月9日に伝えた落札結果は、原産地ごとに米の等級がきれいに分かれていた。
| 原産地 | 数量 | 品目(原文表記) | 単価(ドル/トン) |
|---|---|---|---|
| 中国 | 57,222トン | 短粒種の玄米 | 899.4〜904.91 |
| 米国 | 36,111トン | 精米および中粒種の玄米 | 856〜1,048 |
| タイ | 11,500トン | 長粒種の砕米と香り米 | 481〜1,193 |
| ベトナム | 10,000トン | 長粒種の砕米 | 約436 |
合計は114,833トンで、中国と米国の2か国で93,333トン、全体の81%を占める。両国の札はいずれもトン850ドル超で、韓国の食卓に乗る短粒種・中粒種の領域だ。タイは砕米と香り米を混ぜたため481ドルから1,193ドルまで幅が出た。単一の品目・単一の価格帯で入ったのはベトナムだけで、数量シェアは8.7%にとどまる。金額に直すと10,000トン×436ドルで約436万ドル、日本円で約6.9億円の商いになる。
この分かれ方は、韓国がTRQで何を買っているかをそのまま示している。炊いて食べる米は中国と米国から高く買い、加工や原料に回る粒の小さい米は東南アジアから安く買う。ベトナムは後者の入口に立っている。
トン436ドルは5%砕米のFOB420〜430ドルより高く、産地の砕米相場の1.24倍だった
ベトナムの米相場を10月10日の建値で並べると、白米5%砕米の輸出オファーが420〜430ドル、タイの5%砕米が465〜468ドル、インドのパーボイル5%砕米が378〜384ドルだった。韓国向けに決まった436ドルは、粒のそろった白米5%砕米の輸出相場をわずかに上回っている。
国内側はさらに差が開く。同じ10月10日の国内価格で香り米の砕米(tấm thơm)は1kg9,000〜9,150ドンと前日比50ドン高。中値は9,075ドン。トン436ドルはドン建てで1kg約11,290ドンにあたり、差は24%ある。輸送費と輸出諸掛かりを足しても、TRQ枠の砕米は国内で売るより手残りが見込める価格帯に入る。
そこに、9月のベトナムの米輸出が前年同月比9.3%減、1〜9月累計で5.4%減という事情が重なる。主力の白米で数量が落ちている局面に、固定枠で確実にさばける1万トンの砕米が決まった。安い札に見えて、売り手側の計算では悪くない取引になっている。砕米は精米の歩留まりから必ず出てくる副産物で、売り先が増えるほど精米所の収益構造が変わる。精米能力そのものを増やす動きとしては、籾殻をイーレックス向けの発電燃料に回す前提で精米5工場を一度に起工した事例がある。
55,112トンのベトナム枠に対し、今回の1万トンは18%にあたる
韓国はWTOの約束として米に408,700トンの関税割当を持ち、枠内税率5%、枠外は513%という段差をつけている。うち388,700トンは国別枠、残り20,000トンがグローバル枠だ。国別枠の内訳は中国157,195トン、米国132,304トン、ベトナム55,112トン、タイ28,494トン、オーストラリア15,595トン。ベトナム枠は2020年1月1日発効の二国間書簡で固まったもので、年間を通じて定期的に競争入札にかけること、その年の数量はその年のうちに輸入することが条件になっている。
この7回目で決まった1万トンは、年間枠55,112トンの18%にあたる。1〜6回目でベトナムがいくら取ったかは今回の記事に書かれていないので、枠全体の消化率は外からは分からない。確かなのは、その年の数量はその年のうちに輸入する約束で、使い切れなければ翌年に繰り越せないことだ。入札通知は上半期に4回、下半期は国内事情に応じて3〜5回という運用で、10月以降の船積みスケジュールは詰まりやすい。
もう一つ、書簡はベトナム枠をベトナム国内で栽培・加工された米に限ると定めている。産地と加工地の両方を書類で示せる業者でなければ札が入らない。日本の買い手が原料米で求める産地証明や工程の開示と、求められる書類はほぼ重なる。KAFTCの札を継続して取っている輸出業者は、その台帳をすでに回していることになる。
韓国はヘナムで自前の長粒種IPSを育て、2029年まで190億ウォンを投じている
長粒種の砕米が韓国で買われる背景には、韓国側の食べ方の変化がある。ソウルのChipotle店舗は、世宗大学のChin Joong-hyoun氏が開発したIPSという品種を使っている。インディカ系の長粒種で、短粒種より細長く粘りが少ない。ブリトーボウルやチャーハン、ピラフ、カレーに向くという位置づけで、全南ヘナム郡と地元の環境保全型農業グループの支援を受けて2021年から商業栽培が始まり、小売にも出ている。
さらに農村振興庁(RDA)が大学・企業と組んだ研究開発が2025年から走り、長粒種の品種改良と生産技術に2029年まで190億ウォン(約1,400万ドル、約22億円)を充てる。韓国政府は短粒種に偏った品目構成を広げようとしている。Korea Times紙は、この品種が韓国の消費者にはまだ馴染みが薄いとも書いている。
調達側から見ると、ここに期限がある。韓国が長粒種を国内で作れるようになれば、砕米も国内の精米工程から出てくる。輸入の長粒種砕米が置き換わる余地は2029年に向けて少しずつ狭まる。逆に言えば、国内生産が立ち上がるまでの数年は、ベトナムの長粒種にとって枠が開いている期間だ。
1kg69円の原料に枠外関税341円/kgが乗ると、日本では生米で入れる計算が立たない
日本の買い手には、この436ドルという数字が別の意味を持つ。トン436ドルは1kg約69円。日本が民間輸入米にかける枠外関税は1kg341円で、原料価格の約5倍が税として乗る。生の砕米をそのまま輸入する発想では、価格が成り立たない。
それでも日本の民間輸入は動いている。日本の財務省の統計をベトナム食糧協会(VFA)経由で伝えた報道では、2025年の民間輸入米は95,834トン、2024年の95倍だった。ベトナム産はこのうち4,567トンで、米国・台湾に次ぐ3番目の供給国にとどまる。2026年1月も4,900トン超、前年同月の約12倍だった。ミニマムアクセスの枠内では、農林水産省がCPTPP枠のSBS入札で1,395トンを2026年3月10日に手当てしている。同じ報道は、日本政府が小売価格を抑えるため政府備蓄米を毎月10万トン規模で放出する方針を示したことにも触れている。国内価格が落ち着けば、輸入の勢いも変わる。
整理すると、日本側で現実的な入口は三つに絞られる。ミニマムアクセスやSBSといった枠の中で生米を取る道、米粉・ビーフン・包装米飯のように加工済みの形で持ち込む道、そして日本国内の精米・加工工程から出る砕米を使う道だ。ベトナムの砕米をトン436ドルで引き合いに出すなら、比較対象は日本の店頭価格ではなく、加工品に換算したときの原料コストになる。
原料として砕米や米の副産物を検討するときに見る点も、品目ごとに違う。砕米は砕粒率と粒径の規格、品種の申告、残留農薬の検査体制で等級が決まる。反収の低い在来種をあえて原料に使う判断についてはメコンの浮き稲を日本の原料に使えるかを検討した事例が、米ぬかのような副産物の物流についてはカントー港の復路に米ぬか80コンテナを積む航路が、それぞれ具体的な条件を示している。
参照元
- Nông nghiệp và Môi trường「Việt Nam trúng thầu 10 nghìn tấn gạo tấm xuất khẩu sang Hàn Quốc」
- Doanh nghiệp & Hội nhập「Giá lúa gạo hôm nay 10/10/2026」
- The Korea Times「Chipotle’s Seoul store uses long-grain rice developed by Sejong University professor」
- Vietnam Agriculture and Nature News「Japan eyes Vietnamese rice amid domestic supply shortage」
- Vietnam Agriculture and Nature News「Over 55,000 tons of Vietnamese rice allocated by South Korea quota」