NÔNG NGHIỆP VIỆT NAM — TẠP CHÍ NÔNG NGHIỆP ĐÔNG NAM Á

スマホ1台で菌床を回す、Z世代が実家で始めた黒シメジ有機農場

ベトナム南部ビンズオン省バウバン県で、2001年生まれのグエン・ティ・タオ・ニュー(Nguyễn Thị Thảo Như)が、有機の黒シメジ(現地名 nấm mối đen)をスマートフォンで管理しながら育てている。栽培小屋の温度・湿度・衛生状態をセンサーが常時測り、その数字が本人の端末へ届く。彼女は市場へ毎月およそ1トンの有機黒シメジを供給する。

これは、経験と勘に頼ってきた家族経営の農場が、データを軸に世代交代した一つの現場だ。日本の食品バイヤーやきのこ関連の調達担当にとって、ベトナムの若い就農者がどの品目で、どの技術で立ち上がっているのかを知る手がかりになる。

目次

スマホ1台で栽培小屋を回す2001年生まれ

ホーチミン農林大学で経営管理を学んだニューは、卒業後に実家の農業へ戻り、黒シメジ栽培をIoT化した。従来の目視と経験だけに任せず、小屋の要となる数値をセンサーで押さえる。温度と湿度を管理し、衛生状態を保ちながら、散水や加湿も機械が担う。データが端末に集まるため、外出先からでも小屋の状態を確かめられる。

黒シメジはシロアリの巣で自然に生えることで知られ、人工栽培の難度が高いきのこだ。菌床の温度や湿度が少しずれるだけで雑菌にやられる。だからこそ、環境を数字で押さえる方法が効いてくる。ニューは各段階で成長の速さを見ながら、世話の中身を調整している。

ベトナムの市場で、この黒シメジは食感と香りの良さから相応の値がつく品目とされる。天然物は採れる量が読めず、供給が不安定になりやすい。人工栽培で歩留まりを安定させられれば、飲食店や小売への通年供給が現実になる。ニューが選んだのは、育てにくいが単価の取れる品目で、そこにIoTという武器を持ち込む筋道だった。難しい品目ほど、環境を制御できる者と、勘だけで回す者の差が収量に出る。

約600袋の菌床を捨てた失敗が転機になった

順調に立ち上がったわけではない。初期には約600袋の菌床が細菌に感染し、廃棄せざるを得なかった。ここで手を引かず、彼女は滅菌から接種、湿度の管理まで工程を一つずつ検証し、どこで感染が起きたのかを突き止めた。原因の特定は、勘ではなく記録された数値の比較で進んだ。

この失敗の潰し込みが、いまの安定出荷につながっている。自動の灌漑と加湿で水の使用量を抑え、人手のコストと廃棄率も下げた。歩留まりを上げる作業が、そのまま採算の改善になっている。同じくきのこで独立した例では、フエで元技術者がアカシアの鋸屑からヒラタケを育て月商3,000万ドンの経営に組み立てた事例もあり、廃棄物や失敗を原価管理へ落とし込む姿勢は共通する。

確認できた数字だけを並べる

項目 内容
生産者 グエン・ティ・タオ・ニュー(2001年生まれ)
拠点 ビンズオン省バウバン県
品目 有機の黒シメジ(nấm mối đen)
月間出荷 約1トン
管理方法 IoTセンサーで温度・湿度・衛生を計測しスマホで監視
初期の損失 約600袋の菌床が細菌感染で廃棄

金額・売上は元記事に具体的な明示がないため記載していない。数値は起点記事(2026年8月10日付)の表記に基づく。

日本のきのこ生産と重ねて読むと何が見えるか

日本のきのこは、シメジやマイタケを中心に空調を効かせた菌床工場での通年生産が主流になっている。温度と湿度を管理棟で一括制御する発想は、ニューの小屋がセンサーとスマホでやっていることと地続きだ。違いは規模と、その制御を誰が握っているか。日本では設備を持つ企業が生産の中核にいるのに対し、ここでは20代の個人が小型のセンサーと通信で同じ原理を小さく回している。

就農の入り口という点でも対照的だ。日本では新規就農者の確保が続く課題で、初期投資の重さが参入の壁になりやすい。ニューの事例は、施設園芸やきのこ栽培のような環境制御型の品目が、大学で経営を学んだ若い世代の受け皿になりうることを示す。ベトナムでは、北部フート省で遊休林を使いきのこで年7億ドンを稼ぐ生産者も現れており、きのこは元手を抑えて始めやすい品目として若手や転身組を呼び込んでいる。

もう一つ日本と重なるのは、失敗の扱い方だ。日本の菌床工場も、雑菌の混入やロットごとの発生ムラを記録で潰しながら歩留まりを上げてきた。ニューが約600袋の廃棄を工程の検証でねじ伏せたのは、規模こそ小さいが同じ発想に立つ。勘に頼る農業では「今年は運が悪かった」で終わる失敗が、データを取っていれば「滅菌工程のここがずれた」という改善点に変わる。世代交代の本質は、若さそのものより、この記録して直すという習慣が農場に根づくかどうかにある。

スマホ農業は黒シメジだけの話ではない

環境を数字で押さえて端末から動かすやり方は、品目を選ばずに広がっている。北部フート省では、ドラゴンフルーツの潅水とLED照明をスマホで操作して単価を引き上げる農家が出ている。センサーと通信が安くなったことで、大企業でなくても環境制御を導入できる段階に入った。黒シメジのような難度の高い品目でこれが回るなら、他の高付加価値作物へ横展開する余地は大きい。

日本側の調達から見ると、この流れは二つの意味を持つ。一つは、記録された栽培データがそのままトレーサビリティの土台になること。センサーのログが残る農場は、収穫の履歴や管理条件を後から示せるため、輸出向けの書類対応と相性がいい。もう一つは、こうした若い生産者が有機や環境制御を前提に育っているため、条件をそろえた供給先を早い段階で見つけやすくなることだ。産地が大きく育ってから商談に入るより、立ち上げ期に関係を作るほうが、量や規格の希望を通しやすい場面もある。

調達で確かめておきたい実務ポイント

  • 月産の実数と季節変動。約1トンという規模が通年で安定するか、収穫の波を必ず確認する。
  • 有機の裏付け。どの基準・認証に沿った有機なのか、書面で確認する。
  • 栽培データの開示範囲。センサーの記録をロット単位で共有できるかは、品質保証の交渉材料になる。
  • 個人経営ゆえの供給リスク。生産者が1人の場合、増産や欠品時の代替をあらかじめ詰めておく。
  • 物流と鮮度。生鮮きのこは日持ちが短く、産地から日本までの温度管理と輸送日数が採用可否を左右する。

勘からデータへ、就農の風景が変わる

ニューの黒シメジ農場は、規模で目を引くタイプではない。だが、大学で経営を学んだ2001年生まれが、失敗を数値で潰し、スマホ1台で難度の高いきのこを毎月1トン出荷しているという事実は、ベトナムの就農がどこへ動いているかを言い当てている。日本の食品・農業関係者にとっては、完成した大産地を待つのではなく、こうした環境制御型の若い生産者と早く接点を持ち、データの開示と安定供給を一緒に設計していくことが、次の調達先を確保する近道になる。

参照元

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

目次