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イカの来遊量が日本海全体で前年割れ、越産イカ・タコは代わりに入るか

国産のイカが揚がっていない。水産研究・教育機構が2026年7月31日に公表した日本海スルメイカ長期漁況予報は、8月から12月の来遊量を「日本海全体で前年を下回る」とした。道北・道央、道南・津軽、本州北部日本海、西部日本海の4海域がそろって前年割れで、沖合域だけが前年並みという見通しである。ベトナム産のイカ・タコを扱う日本側の仕入れ担当にとって、これは年末の惣菜・珍味原料をどこで埋めるかという実務の話に直結する。

目次

日本海のスルメイカは4海域で前年割れ、沖合だけが前年並み

予報は各海域の来遊量を「1981年以降では低水準」と位置づけ、2026年の見通しを海域ごとに分けている。道北・道央海域と道南・津軽海域は8月から9月が対象期間で、いずれも前年を下回る。同機構は同日に第1回太平洋スルメイカ長期漁況予報も出しており、太平洋側は海域で向きが割れた。

海域 2026年の来遊量見通し 対象期間
日本海全体 前年を下回る 8〜12月
道北・道央 前年を下回る 8〜9月
道南・津軽 前年を下回る 8〜9月
本州北部日本海 前年を下回る 8〜12月
西部日本海 前年を下回る 8〜12月
日本海沖合域 前年並み 8〜12月
常磐〜三陸(太平洋) 前年を上回る 8〜9月
津軽海峡〜道南太平洋 前年並み 8〜9月
道東太平洋 前年を下回る 8〜9月

出所は水産研究・教育機構の日本海予報と第1回太平洋予報、いずれも2026年7月31日公表。

道北・道央と道南・津軽は「現状漁獲がほぼ無い」と書かれている

予報文が前年割れの根拠に挙げたのは、調査結果の不良と、公表時点で漁獲が立っていないことである。道北・道央は「現状漁獲が無く、調査結果も不良」、道南・津軽は「現状漁獲がほぼ無い」という書き方で、来遊の遅れではなく水準そのものの低さを指している。ここは函館周辺のスルメイカの主産地で、生鮮のイカが通年で回る前提が崩れる区間にあたる。

45%減と約9割減の数字はどこまで確かめられたか

今回の起点は、ベトナム水産物輸出加工協会(VASEP)が9月24日午前に出した世界水産の日次まとめである。その7項目目に、日本のイカ漁獲量が1〜7月で45%減、北海道の7月の生鮮イカが約9割減と載る。VASEPはこれをみなと新聞9月24日朝の報道による全国漁業協同組合連合会の集計として紹介している。みなと新聞の該当記事は購読者向けで本文を開けず、全漁連のサイトでも同じ集計の公開は確認できなかった。数字の向きは上の予報と矛盾しないものの、45%と9割は出所が三段重ねの二次情報にあたる。判断の土台は一次の漁況予報側に置きたい。

常磐〜三陸の来遊量は前年超え、函館の6月水揚げは前年の22%

太平洋側は一様ではない。第1回太平洋予報は常磐〜三陸海域の8〜9月の来遊量を前年を上回ると予測した。三陸周辺のいか釣り調査でCPUE(いか釣り機1台1時間当たりの漁獲尾数)が高い調査点が2021年以来4年ぶりに確認され、調査船若鷹丸が6月に仙台湾で行った着底トロール調査では分布密度が過去5年間で最も高かった。国産イカが全国で一律に消えるという読み方は、この予報と合わない。

5〜6月の水揚量は前年比48%、宮城の底びき網はTACで抑えていた

同じ海域でも水揚げの数字は別に動く。常磐〜三陸全体の5〜6月の総水揚量は前年比48%にとどまった。ただし予報は、宮城県の底びき網でTAC遵守のため漁獲量の上限を設けるなど、漁獲を抑制した操業が行われている点に留意が必要だと明記している。資源が細って減ったのか、獲らない運用で減ったのかが混ざるため、水揚量を資源量の代わりに使うと読み違える。津軽海峡〜道南太平洋海域では、小型いか釣り漁船による6月の函館港への水揚量が前年の22%にとどまっている。

北海道はホタテも29万8,200トン見通しで9年ぶりに30万トン割れ

北海道の供給の細りはイカだけではない。VASEPが9月22日にseafoodnewsを引いて伝えたところでは、北海道漁業協同組合連合会が8月27日に東京で開いた秋の商談会で、今季のホタテ生産見通しを29万8,200トン、前年比15%減とした。30万トンを下回るのは9年ぶりで、主漁期に入ったオホーツク海では小型の5Sサイズが中心となり、大型の原料は前年同様に限られる。イカとホタテが同じ時期に細ると、冷凍・乾燥の水産原料を使う惣菜と珍味の手当てが重なって詰まる。

ベトナムのイカ・タコは5ヶ月で3億200万ドル、伸びはアジア向けに寄った

受け皿になり得る側の数字を見る。VASEPによると、ベトナムのイカ・タコ輸出は2026年1〜5月で3億200万ドル超、前年同期比17%増だった。第1四半期が1億6,820万ドル、5月単月が7,070万ドルで前年同月比20.9%増。伸びを作ったのは韓国・日本・タイ・中国で、米国とEU向けは減っている。

韓国が4ヶ月で8,700万ドル、全体の37%を占めた

1〜4月時点の内訳では、輸出額2億3,200万ドルのうち韓国が8,700万ドル(前年同期比17%増)で37%を占め、前年同期から約1,200万ドル積み増した。日本は韓国に次ぐ柱で、VASEPはタコについて韓国と日本を基盤市場と書き、イカでは乾燥・焼き・加工・小分けの簡便品に機会があるとしている。ベトナム側が売りたいのは生鮮の置き換えではなく加工品で、日本側が見るべきは歩留まりと規格になる。

8月はEU向けが32.4%減、米国はSection 301で12.5%の上乗せ

追い風が全方位ではない点も押さえておきたい。ベトナムの水産輸出全体は8月が11億4,000万ドル(6.4%増)、8ヶ月累計で80億ドル超(11.9%増)。ただし8月のEU向けは6.2%減で、イカ・タコは32.4%減と大きく落ちた。米国向けには2026年7月24日から多くの品目にSection 301の12.5%が上乗せされている。起点のまとめが触れた新たな7.5%は検討中の調査案件で適用済みの税率ではない、と原文自身が断っている。米国とEUで詰まった分がアジアに向かうなら、日本側は買い手として話しやすい位置に立てる。

日本の原料バイヤーが9月末に確かめる3点

「イカ」では見積もりが揃わないので学名と規格から詰める

日本側が「イカ」と言うとき、多くはスルメイカを想定している。ベトナムから出てくるのはケンサキ・ヤリイカ類やコウイカ類で、身の厚さも歩留まりも別物になる。学名、サイズ表記、加工形態(ロール、リング、カット、乾燥)を先に固定しないと、複数社の見積もりを同じ物差しで並べられない。ベトナム産の貝類でも同じ順番で詰まった(ベトナムのバイ類養殖が年6,200トン、日本の貝仕入れに使えるか)。

協定ごとに税率と原産地書類が変わる

ベトナム産水産物を日本に入れる経路はAJCEP、日越EPA、CPTPPなど複数あり、品目によって有利な協定と必要書類が違う(発効中の貿易協定は世界で384本、越産水産の対日税率は協定ごとに違う)。国産の穴を埋める急ぎの発注ほど、原産地証明の取得日程が納期を決める。

棚の値段が上がっても家庭の支出は増えていない

供給が細れば輸入に置き換わる、という単純な図ではない。日本の魚介類の小売価格と家庭の魚介支出は同じ方向に動いていない(魚介類が9%高、家庭の魚介支出は実質6%減で棚は品目で割れた)。起点のまとめも、日本の消費者が食品価格の圧力を受けており機会は種・規格・価格次第だと留保をつけている。値上げを通せる売り先を決めてから原料を探す順番になる。

確認先 資料・公表日 確かめられること
水産研究・教育機構 日本海/第1回太平洋スルメイカ長期漁況予報(2026年7月31日) 海域別の来遊量見通しと調査の根拠
VASEP 世界水産の日次まとめ(2026年9月24日) イカ・タコの対日需要に関する業界の見立て
VASEP イカ・タコ輸出の月次・5ヶ月累計(2026年7月3日) 市場別の伸び(対象は輸出額)
北海道漁業協同組合連合会 秋の商談会で示した今季ホタテ見通し(2026年8月27日) 他品目の供給とサイズ構成

年内に動かすなら試作は1品目・1規格に絞る

日本海の前年割れ予報は12月まで、切り替えの判断は10月が山

日本海の予報が対象にしているのは12月までである。年末の惣菜・珍味に間に合わせるなら、サンプル請求、規格確定、原産地書類の準備を10月のうちに走らせる必要がある。品目を広げると各社の回答が遅れて全部が間に合わなくなる。最初は乾燥イカか加熱済みのカットのどちらか1品目に絞るほうが早い。

単価は加工場渡しか輸出FOBかをそろえて比べる

見積もりを取ると、加工場渡し、輸出FOB、日本の卸建値が同じ表に混ざる。段階が違うものを並べて倍率を出すと、実際には比較になっていない。次の一手として具体的に勧められるのは、候補2社に対して同じ加工形態・同じサイズ・輸出FOBの条件で1コンテナ分の見積もりと直近3か月の出荷実績を出してもらうことだ。国産が戻る海域と戻らない海域が分かれている今は、置き換え先を1つに決め打ちせず、価格と規格の両方で比べられる状態にしておく。

参照した資料

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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