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アカシアをやめレモングラス、クアンガイの山1haで利益8000万ドン

ベトナム農業環境省系の日刊紙 Báo Nông nghiệp và Môi trường が2026年9月24日、クアンガイ省ソンマイ(Sơn Mai)村の作付転換を報じた。ビエウクア(Biều Qua)集落で、アカシア(keo)を植えていた1haをレモングラス(sả)に切り替えた農家が、経費を差し引いた後の利益で年8,000万ドン(約48万5千円/1円=164.94ドン、2026年9月26日時点)を得ている。日本の原料バイヤーにとって重要なのは、この金額よりも、村が「面積を広げない」と明言している理由のほうだ。

目次

アカシア1haがレモングラスに変わり、経費を引いた後で年8000万ドン

年2回刈る草と、同じ利益に4年かかる木

転換したのはディン・ヴァン・ダイン(Đinh Văn Đành)氏。ビエウクア集落の集落長(trưởng thôn)で、村の長ではない。同氏の説明では、レモングラスは年2回収穫でき、経費を引いた後の利益が1haあたり年8,000万ドンになる。「アカシアなら同じくらいの利益を得るまでに約4年かかる。しかもアカシアは暴風雨のときに倒れたり折れたりする危険がある」と同紙に語っている。

8,000万ドンは売上ではなく経費差引後の利益として書かれている。売上と読むと産地の体力を過大に見積もることになる。

集落で20ha、村全体でドリアンは12ha超

ビエウクア集落のレモングラスは現在およそ20haで、ほかにガランガル(riềng)も一部ある。村全体では果樹が数十haあり、そのうちドリアンが12ha超。ソンチャウ(Sơn Châu)集落のヴォー・タン・ビン(Võ Thanh Bình)氏は8年生のドリアンを100本超持ち、今季の収量は3トン近く(gần 3 tấn)、販売価格は約5万ドン/kg(約300円)だった。記事に金額の合計は書かれていない。

ソンマイ村は2025年の行政再編でできた村で、旧ミンロン(Minh Long)県の区域にある。面積112.56km²、人口9,892人(2024年末)。2万人に届かない山間の村の、ひとつの集落の話である。

「台風に強い」ではなく、低地より冠水しにくいだけだった

原文が比べているのは低地のレモングラス

雨季と暴風雨の時期に、低地のレモングラス産地は冠水の影響を受けて供給が落ちることがある。一方でソンマイの丘の作付は影響が小さく、そのため販売価格が高くなる時期がある——これが記事の書き方だ。レモングラスという作物が風に強いとは書いていない。倒れ折れる危険を指摘されているのはアカシアのほうである。

この違いは実務で効く。耐風性なら品種選定の話だが、標高と排水の話なら圃場の位置を指定して契約する話になる。

雨季に値が上がる産地は調達のどこに効くか

低地由来の生ハーブや乾燥ハーブは、9月から12月にかけて減産と値上がりに振れやすい。丘の産地は同じ時期に値が上がる側に回る。年間一本の建値で契約すると、売り手には雨季の出荷を後回しにする動機が生まれる。季節で建値を分けるか、雨季分を別枠で押さえるかを先に決めたい。

8000万ドンはどの段階の金額か、並べていい数字と並べてはいけない数字

利益とキロ単価で倍率を作らない

8,000万ドンは1haあたり年間の経費差引後利益、5万ドン/kgはドリアンの販売単価である。記事は後者の取引段階を書いていないため、園地からの販売価格として読むにとどめた。物差しが違う2つを割って倍率を出すと産地の姿を取り違える。

同じ利益/haで並べられる例

同紙2025年12月7日の記事には、ジャライ省カッティエン(Cát Tiến)村で落花生の新品種LDH.09を作る住民ヴォー・ケー・フン氏の数字がある。乾燥収量が3.5〜4トン/ha、利益が7,000〜9,000万ドン/ha。物差しが同じなので、ソンマイのレモングラスはこの水準と並ぶ。南中部沿岸農業科学技術研究所(ASISOV)のホー・フイ・クオン所長は同記事で、中部が農業環境省から全国で最も作付転換が活発な地域と評価されていると説明している。

項目 数値 段階・条件 出所
レモングラス(ソンマイ村ビエウクア集落・1ha) 年8,000万ドン(約48万5千円) 経費差引後の利益/年2回収穫 2026年9月24日 同紙
アカシア(同じ1ha) 同程度の利益まで約4年 集落長ダイン氏の説明 2026年9月24日 同紙
ドリアン(ソンチャウ集落・8年生100本超) 今季3トン近く/約5万ドン per kg(約300円) 販売価格。取引段階の記載なし 2026年9月24日 同紙
落花生LDH.09(ジャライ省カッティエン村) 利益7,000〜9,000万ドン/ha 経費差引後の利益/乾燥収量3.5〜4トン per ha 2025年12月7日 同紙
ソンマイ村 112.56km²/人口9,892人 2025年再編後の区域/2024年末人口 内務省文書2896/BNV-CQĐPを引く行政区画資料

村が面積を広げないと決めたのは、売り先が先に詰まるから

貯水池のそばは育つが、規模は維持にとどめる

ソンマイ村人民委員会のグエン・アン・トゥアン(Nguyễn Anh Tuấn)委員長は、新しい作物が在来の作物より効率が高いことを認めながら、転換は土壌条件と作物の適応性、そして販売市場を前提にすると述べている。レモングラスについては、ビエウクア貯水池の近くは条件がよく生育も良いが、大きく広げると出口(đầu ra、販路)の問題が生じるため、適正規模の維持にとどめる方針。ドリアンは条件の合わない区域での面積拡大を村として奨励しない。

山の産地が伸びているという読み方は、ここで一度止まる。村が自分で上限を置いているのは、作れないからではなく買い手がいないからだ。

パイナップルで動いている順番

村は今後、レモングラス(記事では sả chanh と書き分けられている)を精油抽出と結びつけ、原料のまま売る形から抜ける方向を検討している。もうひとつがパイナップル(dứa)で、Công ty cổ phần Chế biến nông sản Sao Mai が現地を調査し、一部区域で適性があると評価した。同社は買取保証(bao tiêu)付きの連携を予定し、村は住民に面積の登録を呼びかけている。2026年9月末に呼びかけを終えて連携案を固め、10月に着手する予定——記事はここまでで、契約の締結や作付の完了ではない。

日本のバイヤーが20haの産地に入るとき、先に出すものは価格ではない

面積を決めているのは買取の確約

サオマイ社の一件が示すのは、山間の村で作物が決まる順番だ。企業が現地を調査し、買取保証を提示し、村が住民に面積登録を呼びかけ、そこで作付が決まる。価格の詰めは最後だ。数量と期間を書面で先に出せる相手だけがこの順番に乗れる。収穫期に買い付けに行くやり方では、20ha級の産地は先約で埋まっている。ラオカイ省で苗2,300本を4戸に配って2haから始めた事例も、同じように売り先が先に問われる構図だった(ラオカイ2haのタイ系バンレイシは売れるか)。

精油設備が入る前にしか握れない仕様

乾燥葉やカット品として買いたい側にとっては、精油設備が村に入る前のほうが仕様を握りやすい。乾燥度、茎と葉の比率、切断長、残留農薬と栽培記録——これらは精油向けの刈り取り設計と合わないことが多い。設備が動けば精油が優先され、原料販売は残余になる。割当が先に埋まった産地に後から入る難しさは、週5〜10コンテナが欧米向けで埋まっているココナッツの例でも起きている(ココナッツ週5〜10コンテナは欧米のみ)。

10月の作付け判断に間に合わせるには、9月中に何を送るか

最初の問い合わせで確認する6項目

確認項目 確認する理由
20haの品種と仕向け先 記事は sả と sả chanh を書き分けている。乾燥ハーブ用と精油用で刈り取り設計が違う
1haあたりの生葉収量と乾燥歩留まり 記事に数量の記載がない。金額だけでは必要面積を積めない
年2回の刈り取り月 低地が冠水する時期に出荷できるかは、刈り取り月を見ないと判断できない
提示価格の取引段階 畑先渡しか加工場渡しか輸出FOBか。8,000万ドンは利益の数字で価格ではない
買取保証の先約状況 サオマイ社のパイナップル連携が10月に動く。面積が別作物へ回る可能性がある
残留農薬の検査履歴と栽培記録 日本向けは記録の有無で通るかどうかが分かれる

ドリアンを同じ話にしない

ソンマイ村のドリアンは12ha超、8年生、今季3トンという段階で、輸出ロットを組む話ではない。村自身が不適地での拡大を奨励していない。ザライ省で10ha超のドリアンが枯れ、原因が特定されないまま農家がコーヒーに戻った事例と合わせて見ると、山の転換は適地を外した瞬間に逆回転する(ザライでドリアンが10ha超枯れ、原因は未特定のまま農家はコーヒーへ)。

次にとれる行動はひとつに絞れる。レモングラス乾燥葉の年間必要量、規格、買取期間を1枚にまとめ、9月中にソンマイ村人民委員会と省の農業部門へ当てることだ。10月の作付確定前に数量が入っていれば、20haの一部を日本向け仕様に回す交渉ができる。入らなければ、次に動けるのは半年後の刈り取りだ。

参照元

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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