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米ツナ缶大手が加州工場を閉鎖、越の水産加工に商機はあるか

米国のツナ缶大手バンブルビー・フーズ(Bumble Bee Foods)が、カリフォルニア州サンタフェスプリングスの工場を閉鎖する。会社は「バリューチェーンの処理拠点数を減らし、供給網と生産体制を効率化する取り組みの一環」と説明している。米国を代表する缶詰大手が国内の処理拠点を絞る動きは、一社の事例ながら、裏を返せばアジアの水産加工が世界の缶詰・パウチ生産を担う割合を増やす流れとも重なる。ツナ缶やパウチ製品、水産加工品を仕入れる日本の関係者にとっては、ベトナムの加工受け皿がどこまで広がるかを見極める好機になる。

目次

何が起きたのか

バンブルビーはカリフォルニア州当局にWARN(大量解雇の事前通知)を提出し、サンタフェスプリングスの拠点で197人を解雇する計画を届け出た。解雇の発効は2026年11月19日で、今回の閉鎖に伴う削減は230人を超え、雇用の分離は2027年3月まで段階的に続く見込みだ。同じ拠点では2025年12月にも56人の削減が報じられており、これらを含めると同社のこの工場での人員削減はさらに膨らむ。会社は今回の判断を、処理拠点を絞って供給網を効率化する取り組みの一部と位置づけている。

バンブルビーは米国のツナ缶市場でおよそ4分の1のシェアを握る主要3ブランドの一角だ。2020年には台湾の大手マグロ商社FCF(Fong Chun Formosa Fishery)が約9億2,800万ドル(約1,457億円)で同社を取得しており、いまは台湾資本のもとにある。世界の漁獲から缶詰ブランドまでを束ねる商社の傘下という点は、今回の拠点集約を読むうえで見落とせない背景だ。

閉鎖の要点を整理する

項目内容
企業バンブルビー・フーズ(米ツナ缶大手、台湾FCF傘下)
対象拠点カリフォルニア州サンタフェスプリングス工場
今回の閉鎖に伴う削減230人超(うちWARN通知分197人)
発効・完了2026年11月19日発効、2027年3月まで段階的
2025年12月の削減56人(今回の閉鎖とは別)
会社の説明処理拠点を減らし供給網・生産を効率化
市場シェア米ツナ缶で約25%(主要3ブランドの一角)

※金額はドル建て報道を1ドル=約157円(2026年9月中旬の為替を目安)で換算。閉鎖の事実関係は米国の複数メディアの報道に基づく。

越の加工に商機はあるか

米国内の缶詰生産が拠点集約へ動く一方で、ベトナムの水産加工と缶詰は輸出を伸ばしている。ベトナム水産物輸出加工協会(VASEP)によると、2026年1月のマグロ輸出額は7,500万ドル超(約118億円)で前年同月比13%増えた。最大市場の米国は2,400万ドル(約38億円)で全体の約32%を占めるが、新たな課税や輸入要件の強化を背景に前年から6%減った。対照的に日本向けは95%増、ドイツ向けは39%増と、米国以外の市場が伸びている。

ここで大事なのは、バンブルビーの工場閉鎖が直ちにベトナムへの生産移管を意味するわけではない、という点だ。会社が挙げた理由はあくまで供給網の効率化であり、移転先は公表されていない。ただ、世界のマグロ缶詰は原料調達から加工までを低コストで担えるアジアの拠点に重心を移してきた歴史がある。台湾FCFのようにアジアの調達網を持つ商社が米国内の処理を絞れば、缶詰・パウチの加工需要はアジアの加工地に振り向けられやすくなる。ベトナムはその受け皿の有力候補であり、対日輸出の実績もすでに積み上がっている。

この動きをどう読むか

米国側では、今回の判断は個社の事情にとどまらず、缶詰産業が国内の処理点を減らして効率を追う構造変化の一例と受け止められている。会社自身が「処理拠点を減らす」と明言している通り、生産の集約はコスト競争のなかで避けにくい選択だ。

ベトナムの水産業界から見れば、これは加工の付加価値を取りに行く追い風になる。原料を輸出するだけでなく、缶詰・パウチ・調理済み製品まで自国で仕上げれば、単価も雇用も産地に残る。対米で課税の逆風があるからこそ、日本や欧州といった伸びる市場へ加工品で攻める戦略が現実味を増している。

調達の実務家の視点では、供給元を一国・一拠点に依存しない備えが改めて重要になる。米国内の処理集約は、世界の缶詰供給地図が動きうることを示すサインであり、代替の加工地を早めに確保しておく意味は大きい。

ツナ缶の仕入れ先をどう見直すか

日本の食品バイヤーにとっての示唆は明確だ。第一に、ツナ缶やパウチ、水産加工品の調達先として、ベトナムの加工能力を具体的に評価する時期に来ている。対日輸出が急伸している事実は、越側に日本市場向けの実務経験が蓄積されつつあることを意味する。第二に、原料の産地だけでなく「どこで缶詰・加工まで仕上げるか」を供給網の設計に組み込むこと。世界の処理拠点が動くなかで、加工地の選択が価格と安定を左右する。第三に、越産の加工品を、対米依存を避けたい越側の販路多様化ニーズと重ねて交渉すれば、条件面で有利な話を組みやすい。

ベトナムの水産は、市況の逆風を加工と市場分散で乗り越える動きを続けている。対米で12.5%関税の逆風を受けながらマグロ輸出を伸ばす構図や、パンガシウスが量から質へ、加工品比率を上げて対日輸出を伸ばす流れは、加工で付加価値を取りに行く越側の姿勢を示している。

缶詰の供給地図はどう動くか

ベトナムの水産輸出は、エビやマグロといった主力に加え、カニや貝類など品目の裾野が広がり、市場の分散も進んでいる。8か月で80億ドルに達した越水産の内訳を見ると、単一品目・単一市場への依存を崩す動きが鮮明だ。世界の缶詰・加工の重心がアジアへ寄るなかで、加工能力と市場分散の両方を備える産地は交渉力を増す。日本の買い手にとっては、価格の安さだけでなく、加工まで一貫して任せられ、かつ複数市場を相手にできる供給元を押さえておくことが、中期の安定調達につながる。

まとめ:受け皿の候補を先に見る

米ツナ缶大手の工場閉鎖は、世界の缶詰・水産加工の拠点が動きうることを示す出来事だ。日本の調達担当が今できることは三つある。第一に、ツナ缶・パウチ・水産加工品の供給網を棚卸しし、加工工程がどこにあるかを確認すること。第二に、対日輸出の実績が伸びるベトナムの加工企業を候補に加え、缶詰・調理済みまで任せられる相手を探すこと。第三に、越側の対米依存回避のニーズを踏まえ、日本向けの安定供給を軸にした中期契約の余地を探ることだ。供給地図が書き換わる前に、受け皿の候補を先に見ておきたい。

参照元

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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