ベトナム・カントー市の協同組合 HTX Trạng Tí Garden が、高級竜眼「タインニャン(thanh nhãn)」を約60haで育て、うち20haをGlobalGAP、30haをVietGAPで運用している。開花を7〜10月にずらす季節分散で収穫の谷を消し、組合と契約するバイヤーの買取価格は1kgあたり60,000〜70,000ドン(約340〜400円、1円≒175VND換算の概算)。地元相場のおよそ倍で、農家の利益率は30〜40%に乗るという。カントー市全体では年3,000トン超のタインニャンが米国・豪州・日本・EUへ出ている。単価と販路をここまで安定させている仕組みを、調達側の目線で分解する。
60haを認証で二分するHTX Trạng Tí Garden、単収は1,000㎡で1.3〜1.7トン
組合を率いるのはディレクターのTrần Phước Sơn氏。栽培面積は約60haで、30haがVietGAP、20haがGlobalGAPの認証下にある。単収は1,000㎡あたり1.3〜1.7トン。組合員のPhương Văn Sử氏は約26haを持ち、今季の見込みは約140トンとされる。組合として輸出向けに供給できる量は280トンほどで、これがそのまま海外バイヤーとの取引ロットになる。
果実の規格も細かい。直径2.9〜4cm、熟度80〜90%で収穫し、圃場ごとに管理台帳と農薬の使用・収穫間隔の記録を残す。GlobalGAPの残留基準に合わせるには、この記録の連続性が前提になる。産地コードの取得要件が組合単位から緩む制度改正が進むなか、こうした産地コードと事後検査への移行を先取りした管理体制が、輸出資格を落とさない担保になっている。
7〜10月に花をずらして採る、端境をつぶす季節分散栽培
タインニャンは果肉が厚く種が小さい甘い品種で、通常の竜眼より単価が高い。組合の要は、樹ごと・区画ごとに開花時期をずらし、7月から10月まで順に収穫していく季節分散にある。一度に穫れて相場を崩す通常出荷と違い、出荷を数か月に均すことで契約価格を維持しやすい。買い手から見ても、収穫が7〜10月に散ることで週次・月次のロットを引きやすく、単発の大量入荷に振り回されずに輸出スケジュールを組める。竜眼は追熟が効かず鮮度劣化が速いため、この分散は在庫リスクを抑える意味でも効く。
この「端境を消す」発想は品種改良の側でも進んでおり、花と実が同居する通年結実型のロンガン新品種の動きと方向は同じだ。カントーの組合は新品種ではなく栽培管理で通年供給に近づけている点が、既存園をそのまま活かせる調達先としての強みになる。
買取60,000〜70,000ドン/kgが相場のほぼ倍になる理屈
組合と結んだ農家の買取は1kg 60,000〜70,000ドン。地元市場の店頭価格のおよそ倍で、この差が農家の利益率30〜40%を支える。裏返せば、規格・記録・認証をそろえた分だけプレミアムが乗る構造で、バイヤーにとっては「安いから買う」ではなく「基準を満たしているから高くても買える」産地になっている。組合が価格の下支えを握ることで、農家は投機的な収穫前倒しや過剰施肥に走る動機を失い、規格の再現性がさらに上がるという循環も生まれる。逆に言えば、この価格が崩れれば管理も緩むため、買い手は単価の維持そのものが品質保証の一部だと捉えておくべきだ。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| HTX Trạng Tí Garden 栽培面積 | 約60ha(VietGAP 30ha/GlobalGAP 20ha) |
| 単収 | 1,000㎡あたり1.3〜1.7トン |
| 組合の輸出向け供給見込み | 約280トン |
| 契約農家の買取価格 | 60,000〜70,000ドン/kg(約340〜400円) |
| 果実規格 | 直径2.9〜4cm/熟度80〜90% |
| カントー市のタインニャン作付 | 638ha(うちThới Hưng地区 約350ha) |
| カントー市の竜眼全体作付 | 5,853ha |
| 市全体のタインニャン年間輸出 | 3,000トン超 |
価格は1円≒175VND換算の概算。数値はカントー市栽培局および組合の公表値。
市全体で年3,000トン超が米・豪・EUへ、認証が販路の入口になる
カントー市のタインニャン作付は638ha、うちThới Hưng地区が約350haを占める。市の竜眼全体の作付5,853haの一部だが、輸出用の高付加価値品として位置づけられ、市全体では年3,000トンを超えるタインニャンが米国・豪州・日本・EU・中国へ出荷される。組合1つの供給が280トン規模であることを踏まえると、この3,000トンは複数の組合・産地を束ねた市レベルの数字であり、単一農園の実績と混同しないほうがいい。輸出先が分散しているのは、単価の高い認証品を軸に据えたことで、特定国の需給変動に販路を握られにくくなっているためだ。中国一極に依存しがちなベトナム産果物のなかで、米国・豪州・EUといった残留基準の厳しい市場を早くから抱えている点は、産地としての交渉力を高める。日本の調達側にとっても、複数の高基準市場を通過している産地は、輸入時の検疫・残留リスクを事前に絞り込みやすい相手になる。
日本のバイヤーが確認すべき、産地コードと収穫記録の実務
日本にとってタインニャンは、生鮮の竜眼としてはまだ量が限られるが、選別・冷蔵・加工まで含めた青果調達の選択肢としては現実味がある。ベトナム産青果の対日供給が生鮮の先へ広がっている流れは、越産青果が生鮮から加工へ動く上半期の構図とも重なる。日本の商社・輸入業者がこの産地を評価するなら、確認すべきは価格そのものより、GlobalGAP認証の対象区画がどこまでか、圃場ごとの収穫記録と残留検査の間隔が実際に運用されているか、産地コードが取引ロットまで紐づいているかの3点になる。組合単位で記録が閉じている産地は、規格外の混入リスクが低く、リコール時の追跡も速い。
調達実務のチェックポイント
- GlobalGAP認証の対象面積(20ha)と、契約ロットがその区画から出ているかの突合
- 直径2.9〜4cm・熟度80〜90%という規格を、どの検品段階で担保しているか
- 7〜10月の季節分散により、希望する時期に安定ロットを引けるかの確認
- 買取60,000〜70,000ドン/kgを起点にした、FOB・輸送・関税込みの着地単価の試算
認証と協同組合が竜眼の買値を支える仕組み
カントーのタインニャンは、新品種や大型設備ではなく、認証・記録・季節分散という運用で買値を相場の倍まで押し上げた産地だ。HTX Trạng Tí Garden の280トンは大ロットではないが、規格の再現性が高く、対日の少量高品質調達には向く。次の一手は、GlobalGAP区画の面積推移と、7〜10月の出荷カレンダーを組合から取り寄せ、希望時期・数量が自社の販売計画に噛み合うかを確かめることだ。