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干ばつ地が原料畑に、ベトナム産ソルガムがHalalで中東を狙う

ベトナム南部の乾燥した土地で育てたソルガム(コーリャン)の加工品が、マレーシア市場へ向けて初めて輸出される。ベトナムのQHC Groupは2026年6月26日、マレーシア王室にゆかりのあるAntah Groupとの間で、シロップやレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)など、ソルガム加工品を対象とする500万米ドルの初輸出契約を結んだ。雨の少ない遊休地を原料畑に変え、副産物まで使い切る循環型の設計、そしてHalal対応で中東をにらむ姿勢は、原料の調達先を分散させたい日本の食品メーカーやバイヤーにとっても見逃せない動きだ。本稿では一次報道を確認したうえで、日本の素材調達担当者が押さえるべき論点を整理する。

目次

500万USDの初輸出契約、何が決まったのか

QHC Group(会長レ・ティ・ミ・ハン氏)は6月26日、マレーシアでAntah Groupと、ソルガム加工品の初輸出契約(契約額500万米ドル)を締結した。対象品目はシロップ、レジスタントスターチ、たんぱく質などとされる。Antah Groupはマレーシアの王室につながる大手企業グループで、調印にはマレーシア王族の上級メンバーであるトゥンク・ナキアユディン氏が関与したと報じられている。

契約と同時に、両社はHalal基準に沿ったソルガム製品のエコシステムを構築する戦略的協力でも合意した。原料生産地の計画的な開発、コア技術の移転、生産、品質管理、商品化までを共同で進める内容で、単発の取引にとどまらない一貫したバリューチェーン構築をうたっている点が特徴だ。Antah側は、東南アジアと中東向けの供給源を増やすため、QHCにHalal対応製品の生産拡大を求めているという。

乾燥地に立った工場と、循環型の設計思想

輸出契約の1か月あまり前、2026年5月23日に、ラムドン省ハムリエム(旧ビントゥアン省の地域。2025年の行政再編でラムドン省に統合された)で、ソルガムからシロップと高付加価値品を製造するベトナム初の工場が稼働を始めた。雨の少ない土地でも育つソルガムの特性を生かし、第1期では70ヘクタールの栽培地と加工工場を組み合わせて立ち上げた。

この事業の核にあるのが、副産物を捨てない循環型の発想だ。報道によれば、ソルガムの副産物はアメリカミズアブ(black soldier fly)の幼虫を育てる原料に回し、そこから家畜飼料向けのたんぱく源を取り出す。さらに残った部分は多孔質炭素やエアロゲル、ボイラー用の燃料へと加工する。主力製品は、食事管理層を想定した天然シロップ、ソルガムの茎から取り出す精製水、有機ジュース、そして食品加工向けのレジスタントスターチが並ぶ。原料の一本道ではなく、甘味・でんぷん・飲料・素材・エネルギーへと枝分かれする多段利用が、この工場の設計を貫いている。

数字で押さえる、検証済みのポイント

今回の発表で確認できた事実を整理すると、次のようになる。誇張を避けるため、複数の現地報道で一致した数値のみを載せた。

項目 内容
初輸出契約額 500万米ドル
契約締結日 2026年6月26日(マレーシア)
相手先 Antah Group(マレーシア王室系)
工場稼働日 2026年5月23日
工場所在地 ラムドン省ハムリエム(旧ビントゥアン省地域)
第1期の栽培面積 70ヘクタール
主な加工品 シロップ/レジスタントスターチ/精製水/有機ジュース ほか

一方で、工場の年間処理能力や原料の単収、想定取引量の継続性といった数字は、現時点の報道では公表されていない。500万米ドルが単年の取引か、複数年にわたる枠組みかも明示されていないため、調達の前提として織り込むには続報を待つ必要がある。

現地・業界はどう受け止めているか

現地の農業系メディアは、乾燥して使いにくかった土地を「高付加価値の原料畑」に変えた点を一様に評価している。複数の地方紙は、稼働からひと月あまりで栽培の成功に続いて加工でも形になったと、スピード感を肯定的に伝えた。

業界関係者の関心は、Halal認証を軸にした輸出設計に集まっている。マレーシアはHalal認証の国際的なハブの一つで、ここを足がかりにすれば中東市場への導線が描きやすい、との見方だ。原料生産から加工までベトナム側が担い、商流をマレーシアの王室系資本が支える分業は、東南アジア発の食品原料が宗教的要件の厳しい市場へ出ていく際の現実的なモデルとして受け止められている。

慎重な声がないわけではない。ソルガムは飼料用途の印象が強く、食品・機能性原料としての認知や用途開発はこれからという指摘や、循環型をうたう以上は副産物の品質と安全性の担保が問われるという見方もある。期待先行で語られがちなテーマだからこそ、用途ごとの規格と実需の積み上げが鍵になる。

日本の素材調達担当者への示唆

この案件が日本の食品・素材調達に投げかける論点は、大きく三つに分けられる。

一つ目は、レジスタントスターチという原料カテゴリーだ。食物繊維に近い働きを期待される素材として、製パン・製菓・飲料の処方で引き合いがある。供給源が欧米やタイなどに偏りがちなこの分野で、ベトナム発の選択肢が一つ増える意味は小さくない。気候や用途の重なるキャッサバの改質でんぷんで起きている高付加価値化の流れと並べて見ると、ベトナムが「安いネイティブでんぷん」から「機能性でんぷん」へ軸足を移しつつある全体像がつかみやすい。

二つ目は、乾燥地・遊休地を原料畑に変えるという発想そのものだ。水が少なく作付けが難しかった土地でも育つ作物を選び、副産物まで設計に組み込む考え方は、暑熱で従来品種が立ち行かなくなり耐暑性品種への転換が進むパイナップル産地の動きとも通底する。気候を所与として品種と土地を選び直す発想は、調達リスクを地理と気候の両面から読む際の参考になる。

三つ目は、Halalという出口設計だ。中東・東南アジアのムスリム市場を見据えるなら、原料段階からHalal対応が整った供給源は商談の前提を一段引き上げる。日本国内向けの調達であっても、将来の輸出転用やインバウンド対応を考えると、原料の素性として押さえておく価値がある。

市場への波及はどこまで広がるか

ベトナムは砂糖やキャッサバの輸出で実績があるが、ソルガムを起点に「甘味・機能性でんぷん・たんぱく・素材・エネルギー」まで束ねるバリューチェーンを正面から組むのは新しい。今回の契約は金額こそ500万米ドルと控えめだが、王室系資本を商流に取り込み、Halalで中東を見据えたという構図に、後続事例を生む雛形としての意味がある。

素材調達の側から見れば、注目すべきは品目単体の価格よりも、産地・加工・認証・出口がワンセットで設計されているかどうかだ。原料を一本道で売るのではなく、用途ごとに枝分かれさせて単価を底上げするこのモデルが軌道に乗れば、ベトナムは日本にとって「安い一次産品の産地」から「設計された機能性原料の供給地」へと位置づけが変わっていく可能性がある。

実用情報・関連リンク

レジスタントスターチや改質でんぷんの調達を検討するなら、まずは規格(粒度・耐熱性・難消化性の等級)と、Halalなど必要な認証の有無を供給側に確認するのが出発点になる。ベトナム発の機能性原料の動きは、以下の関連記事もあわせて追うと全体像がつかみやすい。

まとめ

QHC GroupとAntah Groupの500万米ドル契約は、乾燥地を原料畑に変え、副産物まで使い切り、Halalで中東をにらむという、ベトナム農業の新しい設計図を体現している。日本の素材調達担当者が次に取るべきアクションは三つだ。第一に、レジスタントスターチを含む機能性でんぷんの供給源候補としてベトナム発の動きをウォッチリストに加えること。第二に、続報で工場の処理能力・取引の継続性・実需の積み上げを確認し、サンプル評価に進めるか見極めること。第三に、Halal対応の有無を原料選定の比較軸に組み込み、将来の輸出転用まで見越して調達設計を見直すことだ。

参照元

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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