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ゲアン省、618haのハイテク林業区を承認——大径材と林床の薬用植物を一体化

ベトナムの林業は長らく、チップ用の細い木を安く大量に出す構造だった。そこを組み替えようという計画が北中部で動き出している。2026年7月27日付のNong nghiep Moi truong(農業環境紙)によれば、ゲアン省は「北中部ハイテク林業応用区」を核に、太く育てた大径材、下層で育てる薬用・香料植物、そして組織培養で優良種苗を量産するセンターを一体で立ち上げる。日本の調達・輸入バイヤーにとっては、木材そのものより、精油・薬用素材・植物性原料といった川下商材の供給基盤が中期でどう厚くなるかを見る話になる。

目次

首相決定746号で承認、618haを3分区に組織培養の種苗センターを核に据える

この林業区は、2025年4月10日付の首相決定746号(QĐ-TTg)で承認された「北中部ハイテク林業応用区の2045年までの全体計画」に基づく。設置場所はゲアン省ギロク県・ドールオン県の複数コミューンで、3つの分区からなり、総面積は618ヘクタール。第1分区にはハイテク種苗生産センターが置かれ、組織培養を使って発芽・生育のそろった優良種苗を研究・量産する。ここで育てる樹種は、チップ向けの早生材ではなく、太く長く育てて建材・家具材に回す大径材が中心に据えられる。

林業用地118万ha・輸出年2.3億ドル、量はあるが高く売る仕組みが足りない

ゲアン省は林業用地が約118万ヘクタールと国内最大級で、森林被覆率は58%以上を保つ。2021〜2025年の林業生産額は年平均7.66%で伸び、木材・林産物の輸出額は年平均2億2,747万米ドル(1米ドル157円換算で約357億円)に達した。素材の量はすでにある。足りないのは、その素材を高く売る仕組みだ。ハイテク林業区は、種苗の質を底上げして生産性を上げ、大径材とFSC認証林で単価を取りにいく「量から質へ」の転換の起点として設計されている。

指標 2030年目標
林業生産額の成長率 年8.0%以上
木材・林産物の輸出額 年4〜5億米ドル(約628〜785億円)
年間造林面積 2万2,000 ha 以上
林地の生産性 25〜30 立方メートル/ha/年
FSC認証林 7万 ha 以上
年間丸太生産量 220〜250万 立方メートル

これらはゲアン省が林業区計画に沿って掲げる省レベルの目標値で、輸出額の円換算は目安レート(1米ドル157円)による概算。林業区そのものの面積は決定746号で618ヘクタールと確認できる。

日本が見るべきは木材本体より、林床で育てる薬用・香料植物

この計画で日本側が注目すべきは、木材本体より下層で育てる薬用・香料植物だ。林の下は、これまで収益を生まない空間だった。そこに薬用・香料植物を植え、精油や植物性素材として売れば、同じ林地から複数の商材が出る。日本の食品・化粧品・健康素材の調達では、精油やハーブ、薬用植物の安定調達先が慢性的に不足しており、森を伐らずに薬用・香料で稼ぐ産地は選択肢になる。ランソンが森を伐らずに縮砂で稼ぐ事例のように、林床の薬用・香料植物は、供給が立ち上がれば日本の原料調達に直接効く。軸になるのが組織培養で、台湾頼みだった蘭の苗を国内ラボで置き換えるホーチミンの年20万本の事例や、発芽率の壁を越えて苗木3万本を仕立てるランソン省の動きが示すように、種苗を握る者が川上を握るという理解が林業以外でも広がっている。

現時点は計画段階、有望品目が固まる前に産地と接点を作る

ただし現時点では計画段階だ。618ヘクタールの区画整備と種苗センターの立ち上げが先行し、下層の薬用・香料植物が商用ロットで出てくるのはその後になる。日本側の現実的な動きは、いま製品を買うことではなく、種苗センターがどの樹種・どの薬用植物に絞るかを追い、有望品目が固まった段階で早めに産地と接点を作ることだ。北中部は南部のメコンデルタや中部高原に比べ日本の調達地図では手薄になりがちだったが、118万ヘクタールという林業用地の厚みは、原料の量を確保するうえで無視できない。計画段階のいまから樹種選定や品質規格の対話に入れれば、後発の買い手より有利な条件で組める。

FSC前提の設計は、証明コストを産地側が先に負担する

ベトナムは木材加工・家具の輸出大国だが、原料の細い木は安く、付加価値は加工と輸出の側に偏ってきた。大径材とFSC認証、そして薬用・香料の複合利用へ舵を切れば、川上の産地に利益が残るようになる。ゲアンの林業区は、その構造転換を北中部で先に試す実験場になる。組織培養による種苗の質の底上げが効けば、生産性25〜30立方メートル/ha/年という目標も単なる数字合わせでは終わらない。日本の家具・建材業界にとっても、認証付きの大径材が国内で安定して育つ産地が増えることは原木調達の選択肢が広がることを意味する。合法性・持続可能性の証明を求める輸入規制が世界的に強まるなか、FSC認証を前提に設計された産地は、証明のコストを産地側が先に負担してくれる分だけ、買い手の負担を軽くする。

種苗センターの絞り込み品目と、薬用植物の商用化時期を追う

ゲアンのハイテク林業区は、木材を太く育て、林床で薬用・香料植物を稼ぎ、組織培養で種苗を内製する三段構えだ。日本の調達側が中期で見るべきは、木材そのものより、この林床から出てくる植物性原料の品目と量になる。種苗センターの絞り込み品目と、薬用・香料植物の商用化時期——この二点を継続的に追い、有望な原料が立ち上がる前に産地との関係を作っておくのが得策だ。北中部という新しい調達地図に、いま印をつけておくかどうかが、数年後の供給網の余裕を左右する。

参照元

Nong nghiep Moi truong「ハイテク林業区はゲアン発展の新たな原動力」(2026/7/27)
VnEconomy「北中部ハイテク林業区618haの計画を承認」
Bao Chinh phu「首相決定746号による林業区計画の承認」

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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