NÔNG NGHIỆP VIỆT NAM — TẠP CHÍ NÔNG NGHIỆP ĐÔNG NAM Á

モン族の黒牛を「越の和牛」へ、日本の格付け技術で挑む国家ブランド

神戸牛が世界で通じるブランドになった背景には、肉の旨さに加えて、誰が見ても同じ答えになる格付けの物差しがあったことが大きい。ベトナムが2026年9月17日、北部山地で飼われてきたモン族の黒牛を、和牛や韓牛のような高級ブランドに育てる方向を打ち出した。ここでいう「越の和牛」は正式な名称ではなく、めざす到達点を和牛になぞらえた言い方だ。格付けの仕組みを日本と韓国から取り込むというこの構想を、日本の食材バイヤーはどう受け止めるべきか。仕入れの現場から距離を測る。

目次

何が示されたのか

農業環境省の畜産・獣医局が主導し、北部山岳地帯のモン族黒牛(bò H’Mông)と、ハティン省フォンソンの鹿茸(nhung hươu=鹿の角)を国家ブランドに育てる方向を示した。牛肉と滋養食材という毛色の違う2品目を、いずれも「特色ある地方産品を世界に通じる名前にする」という同じ設計図に載せる。

畜産・獣医局のファム・キム・ダン氏は、日本の神戸牛や韓国の畜産ブランドを引き合いに、ベトナムも特色ある畜産品を選んでブランド化すべきだと述べた。鹿茸についても「韓国の高麗人参・鹿茸のような国家ブランドを築きたい」と期待を語っている。品種改良の発注元はベトナム農業大学、旗振り役は畜産・獣医局という体制だ。

核心は「格付けの物差し」を輸入すること

この構想でいちばん実務的に重いのは、品種の話ではなく評価手法の話だ。ベトナムはこれまで「美味しい」と言うだけで具体的な基準を欠いていた点を課題と認め、日本と韓国の肉質評価の手順そのものを取り込むとしている。サシの入り方、色沢、締まりといった項目を数値化して等級を付ける仕組みが入れば、産地が違っても買い手が同じ言葉で品質を語れるようになる。ブランド化の本体は、この共通言語づくりにある。

モン族黒牛について、記事では「出発点はハンウー(韓牛)よりも高く評価されている」との見方が紹介されている。これは会見で示された関係者の見方であり、比較データや公的な認定が示されたわけではない。実際の枝肉等級や食味が和牛・韓牛と並ぶかどうかは、これから導入する格付けの実データで確かめる段階だ。現時点では、地元の環境によく適応した在来種という強みを土台に、評価の物差しを整えていく途中と捉えるのが妥当だろう。

数字と論点の整理

項目内容
対象品目モン族黒牛(牛肉)/フォンソンの鹿茸
黒牛の市場価格約120万ドン/kg(1万ドン≈約59円換算で約7,000円/kg)
飼育地北部山岳地帯の各省
鹿茸の産地ハティン省フォンソン(滋養・健康食材向け)
導入する技術日本・韓国の肉質格付け(評価手順)
関与機関畜産・獣医局(主導)/ベトナム農業大学(品種改良)

約120万ドン/kgという価格は、ベトナム国内の一般的な牛肉より明確に上の帯にある。プレミアム品として売る前提の価格設定であり、飼育頭数や農家数は公表されていない。まずは供給の裾野を数字で示せるかが、ブランドの信用を左右する。

推進側が置く優先順位

推進側は、初期段階では利益より先に「まともな生産体制」と「企業の参画」が要ると繰り返し強調している。在来種を細々と飼う状態から、規格を揃えて一定量を安定供給する体制へ移すには、育種・肥育・と畜・格付けを一気通貫で担う事業者が要る。言い換えれば、旗を立てた段階であって、量と品質の担保はこれから、というのが現実的な見方だ。地方特産を国家ブランドへ引き上げる難しさは、他の一次産品でも共通する。

日本の食材調達への示唆

日本のバイヤーにとって、この動きは二段構えで読める。短期では、ベトナム産の高級牛肉がすぐ日本の食卓に並ぶ話ではない。牛肉は口蹄疫の清浄性や二国間の輸入条件が壁になり、供給量も限られる。相対的に商機が近いのは鹿茸のほうだろう。滋養・健康食材の原料として、規格化とブランド化が進めば、成分表示や産地証明を求める日本の健康食品分野が受け皿になりうる。ただし原料の輸入には成分・衛生の規制確認が前提になる。

中期で効いてくるのは、格付けの物差しが共通化することそのものだ。日本式の評価手順が現地に根付けば、将来ベトナム産の食肉や畜産加工品を検討するとき、買い手と売り手が同じ等級の言葉で交渉できる。産地開拓のたびに品質の定義から擦り合わせる手間が減る。これは牛肉に限らず、ベトナム畜産全体を仕入れ先候補として見るときの下地になる。加工鶏肉を一貫生産で海外へ出したベトナム畜産の輸出力の伸びと合わせて見ると、方向性が掴みやすい。

市場への波及

特色ある地方産品を高付加価値で売る動きは、北部の山地を中心に厚みを増している。薬用植物に種苗から加工まで補助を付けたラオカイ省の例は、地方が産品を「原料のまま」から「規格を付けた商品」へ引き上げる政策の一つだ。ラオカイの薬用植物支援条例のような後押しが黒牛や鹿茸にも及べば、ブランド化は掛け声で終わらず、供給網の整備を伴って進む可能性がある。

まとめ:次の一手

モン族黒牛のブランド化は、日本の格付け技術を「輸出品」として越境させる話でもある。日本の食材バイヤーがいますぐ動くなら、鹿茸など滋養食材の原料規格と産地証明の整備状況をウォッチし、健康食品の原料候補として情報を取っておくのが現実的だ。牛肉そのものは、飼育頭数・格付け等級・輸入条件の三点が数字で見えてきた段階で、あらためて検討すればよい。まずは「格付けが共通言語になるか」を追う価値がある。

参照元

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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