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Intimex、HCMCに1.5億ドルのフリーズドライコーヒー工場を計画――ベトナムコーヒー深加工の転換点

ベトナム最大のコーヒー輸出企業であるIntimex Groupが、ホーチミン市(HCMC)にフリーズドライインスタントコーヒー工場の建設を検討している。投資額は1.5億ドル(約225億円)。実現すれば、ベトナムのコーヒー産業が「原料輸出国」から「加工品輸出国」へ転換する象徴的な案件となる。

目次

計画の概要と投資規模

Intimex Groupの経営陣は2026年4月の株主総会で、HCMC市内にフリーズドライ(凍結乾燥)方式のインスタントコーヒー工場を建設する構想を明らかにした。投資額は1.5億ドルと、同社にとって過去最大級の設備投資となる。

フリーズドライ方式はスプレードライ(噴霧乾燥)と比べて製造コストが高い一方、香りや風味の保持に優れる。日本やヨーロッパ市場では高級インスタントコーヒーの主流であり、1kgあたりの輸出単価はスプレードライの2〜3倍に達する。

現時点で工場の着工時期は確定しておらず、「条件が整い次第」実行に移すとしている。ただし2026年度の事業計画にはすでに「深加工比率の引き上げ」が戦略目標として組み込まれている。

Intimex Groupの現在地

Intimex Groupはベトナムのコーヒー輸出シェア1位の企業で、2022-2023年の作付年度では全国輸出量の23.5%を取り扱った。

項目 内容
正式名称 Intimex Group Joint Stock Company
本社 ベトナム・ホーチミン市
会長 Do Ha Nam
主要事業 コーヒー豆の調達・加工・輸出
既存工場数 ドンナイ・タイニン・ビンフォック・HCMCに4拠点
2025年コーヒー輸出量 175,645トン(前年比+37%)
2026年売上目標 43,486億ドン(前年比+9%)
2026年税引前利益目標 1,000億ドン(前年比+2%)
2026年輸出入額目標 9.86億ドル

すでにビンズオン省でインスタントコーヒー工場を稼働させており、年間4,000トンの生産能力を持つ。しかし需要に追いつかず、第2フェーズで8,000トンへの増産を予定している。今回の1.5億ドルのフリーズドライ工場は、この増産計画のさらに先を行く「深加工の最上流」への進出だ。

ベトナムコーヒー産業の構造問題

ベトナムは世界第2位のコーヒー生産国でありながら、輸出の大半はロブスタ生豆のままだ。加工品の輸出額は2024年時点で11.8億ドルにとどまり、生豆輸出額41.8億ドルの3分の1以下に過ぎない。

この「原料輸出依存」構造がベトナムコーヒー産業の最大の課題で、国際価格の変動に業績が左右されやすい。2025年にはベトナム全体のコーヒー輸出額が89.2億ドルに達したが、これは単価高騰による押し上げ効果が大きく、構造的な体質改善ではない。

ベトナムコーヒー・カカオ協会(VICOFA)は「2030年までに焙煎・インスタントコーヒーの輸出を50〜60億ドル規模に引き上げる」という目標を掲げている。Intimexの工場計画はこの国家目標と合致するものだ。

2026年初動のコーヒー輸出データでも、ベトナムのロブスタ価格は87,000〜88,000ドン/kgで安定しており、原料調達コストは比較的予測しやすい環境にある。

業界の反応と各社の動き

Intimexだけでなく、ベトナムの主要コーヒー企業が一斉に加工設備への投資を進めている。

企業名 投資内容 投資額
Intimex Group HCMCにフリーズドライ工場 1.5億ドル
Nestle Vietnam ドンナイ省の既存工場拡張 約7,300万ドル
Trung Nguyen Legend ダクラク省に第5工場 2兆ドン超(約8,200万ドル)
Phuc Sinh 欧州・日本向け加工工場 5,000億ドン(約2,050万ドル)
Highlands Coffee バリア=ブンタウ焙煎工場稼働中 年産能力75,000トン

この動きの背景には、2026年に発効するEU森林破壊規制(EUDR)がある。EUDRは原産地のトレーサビリティを求めるため、生豆輸出ではなく加工品として輸出するほうが規制対応コストを抑えやすい面がある。Intimex経営陣も「公出力の最適化と深加工比率の引き上げ」を戦略の柱に据えている。

日本企業にとっての意味

日本はベトナム産コーヒーの主要輸入国の一つであり、特にインスタントコーヒーの原料調達先としてベトナムへの依存度が高い。

Intimexがフリーズドライ工場を稼働させた場合、日本の食品メーカーにとっては2つの変化が生じる。

1つ目は調達先の多様化だ。これまでフリーズドライコーヒーの製造はブラジルやコロンビアの現地工場、もしくは日本国内の自社工場に限られていたが、ベトナム産のフリーズドライ原料が加わることでサプライチェーンの選択肢が広がる。

2つ目は品質水準の変化だ。ベトナム産ロブスタはかつて「低品質」のイメージがあったが、ウォッシュド処理やハニープロセスの導入により品質は向上している。フリーズドライ工程と組み合わせることで、従来のベトナム産コーヒーとは異なるポジションの製品が生まれる可能性がある。

冷凍ドリアンの輸出拡大と同様に、ベトナムの農産物加工業は「量から質」への転換期にある。

波及効果と今後の焦点

Intimexの工場投資が実現した場合、ベトナム国内のコーヒーバリューチェーン全体に影響が及ぶ。

中央高原地帯(ダクラク、ラムドン、ダクノン)のコーヒー農家にとっては、生豆の買い取り先が増えることを意味する。ラムドン省のVietGAP推進で品質認証を取得した農家は、加工企業からのプレミアム価格を得やすくなる。

一方で、フリーズドライ工場の運営には安定した電力供給と冷却水の確保が不可欠で、HCMCのインフラキャパシティが課題となる可能性がある。また、1.5億ドルという投資規模はIntimexの年間利益の10倍以上に相当し、資金調達の手法(自己資金か、銀行融資か、外部投資家の参画か)も注目点だ。

項目 詳細
投資企業 Intimex Group Joint Stock Company
投資額 1.5億ドル(約225億円)
工場タイプ フリーズドライ(凍結乾燥)インスタントコーヒー
建設予定地 ホーチミン市(HCMC)
着工時期 未定(「条件が整い次第」)
既存インスタントコーヒー工場 ビンズオン省(年産4,000トン→8,000トンへ増産予定)
ベトナムコーヒー加工品輸出額(2024年) 11.8億ドル
VICOFA 2030年目標 焙煎・インスタントコーヒー輸出50〜60億ドル

まとめ

Intimexの1.5億ドルフリーズドライ工場計画は、ベトナムコーヒー産業が「世界の豆畑」から「世界の加工拠点」へ移行する転換点を象徴する案件だ。着工時期は確定していないが、Nestle、Trung Nguyen、Phuc Sinhを含む競合各社も加工投資を加速しており、業界全体の深加工シフトは不可逆的な流れとなっている。日本の食品メーカーにとっては、ベトナムからの調達戦略を見直す契機になるだろう。

引用元・参考

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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