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ベトナムの調味料一覧|ヌクマムからエビ塩まで使い分けがわかる

フォーや生春巻き、バインミーなど、ベトナム料理のあの味を決めているのが調味料です。魚を発酵させた魚醤ヌクマムを軸に、発酵ペースト、唐辛子の辛味だれ、つけ塩まで、種類は豊富。名前も使い方も似ているものが多く、どれを選べばいいか迷う人も少なくありません。

この記事では、ベトナム料理を支える主な調味料を、ヌクマムやヌクチャム、発酵ペースト、大豆の調味料、サテやチリソース、つけ塩、うま味調味料まで、使い方とあわせて一覧で整理しました。北・中・南の地域差や、日本での買い方、よくある誤解までまとめています。原料となる農産物の視点から、ベトナムの調味料文化を見ていきます。

目次

ベトナム料理の調味料の特徴|発酵と素材の組み合わせ

ベトナムの調味料を理解する鍵は、二つあります。ひとつは「発酵」です。魚を発酵させた魚醤やペースト、大豆を発酵させた調味料など、発酵食品が味の土台を作っています。もうひとつは「素材の組み合わせ」です。唐辛子、ライム、にんにく、砂糖、レモングラス、胡椒といった身近な農産物を組み合わせ、甘・辛・酸・うまみのバランスを卓上で調えていきます。

そのため、ベトナム料理では一つの濃いソースで仕上げるより、複数の調味料を少しずつ重ねて好みの味を作るのが特徴です。まずは主な調味料を一覧で見てみましょう。

調味料主な原料合う料理
ヌクマム魚(カタクチイワシ)の発酵料理全般・つけだれの素
ヌクチャムヌクマム+ライム・砂糖・唐辛子生春巻き・揚げ物
マムトム/マムネムエビ・小魚の発酵ペーストブンチャー・牛しゃぶ
トゥオン・醤油大豆の発酵精進料理・炒め物・つけだれ
サテ・チリソース唐辛子・レモングラスフォー・鍋・麺
つけ塩塩・胡椒・ライム・唐辛子シーフード・茹で肉・果物

ヌクマム|魚醤はベトナム調味料の主役

ベトナムの調味料といえば、まず魚醤のヌクマム(nước mắm)です。カタクチイワシなどの小魚を塩に漬け込み、木樽でじっくり発酵・熟成させて作る、琥珀色の液体調味料です。塩気とともに、魚由来の濃いうまみがあり、料理の味の土台になります。

名産地として知られるのが、南部のフーコック島です。フーコック産の魚醤は、2001年にベトナムで初めて地理的表示(GI)に登録され、2012年にはEUからも原産地呼称の保護を受けました。島周辺で獲れた魚を、島内の木樽で長期間発酵させたものだけが、その名を名乗れます。炒め物や煮物の味つけから、つけだれの素まで、使い道は幅広く、ベトナムの食卓に欠かせません。ヌクマムについては、ヌクマムとナンプラーの違いを解説した記事でくわしく紹介しています。

ヌクチャム|万能つけだれ

ヌクマムをそのまま使うことは少なく、多くの場合は水でのばし、調味してから使います。こうして作るつけだれが「ヌクチャム(nước chấm)」です。

ヌクチャムは、ヌクマムに水、砂糖、ライムの果汁、刻んだ唐辛子、にんにくを合わせた、甘酸っぱくて辛い万能だれです。生春巻きやバインセオ(ベトナム風お好み焼き)、揚げ春巻き、焼き肉のつけだれとして、いろいろな料理に添えられます。なお「ヌクチャム」は広い意味では「つけだれ全般」を指す言葉で、ここで紹介した魚醤ベースのものはその代表格です。各家庭や店で甘さや辛さの配合が異なり、その違いも楽しみのひとつです。

発酵ペースト|マムトムとマムネム

ヌクマムよりさらに発酵の風味が強い、ペースト状の調味料もあります。香りに強いくせがありますが、本場の味を支える名脇役です。

マムトム(mắm tôm)は、小さなエビやアミを発酵させた紫がかったペーストです。独特の強い香りがあり、各地で使われますが、北部でとくに好まれます。米麺を炭火焼きの肉とあわせる「ブンチャー」などに添えられ、好きな人にはたまらない味わいです。一方、マムネム(mắm nêm)は、小魚を発酵させたソース状の調味料で、中部でよく使われます。牛しゃぶ(ボーヌントゥン)や、ゆで豚をライスペーパーで巻く料理のつけだれに欠かせません。エビ由来のマムトムと魚由来のマムネムは、原料も風味も異なります。発酵の方法や呼び名は地域によって幅があり、よく似た調味料も多くあります。

大豆の調味料|トゥオンと醤油

魚やエビだけでなく、大豆を発酵させた調味料もベトナム料理を支えています。日本人にもなじみやすい味わいで、精進料理でも重宝されます。

「トゥオン(tương)」は、大豆を発酵させて作る調味料の総称で、味噌のようなものから甘いたれまで幅があります。なかでも「トゥオンデン(tương đen)」は、発酵大豆に砂糖などを加えた甘辛い黒いたれで、フォーの卓上調味料や生春巻きのつけだれの定番です。中華のホイシンソースに近い位置づけですが、風味は同じではありません。また、ベトナムでも大豆から作る醤油が使われ、南部では「ヌクトゥオン」、北部では「シーザウ」と呼ばれます。肉や魚を使わない精進料理では、魚醤の代わりに醤油でつけだれを作ることもあり、炒め物の味つけにも使われます。

辛味の調味料|サテとチリソース

ベトナム料理に辛味とコクを足すのが、唐辛子を使った調味料です。料理に後から加えて、自分好みの辛さに調えます。

「サテ(sa tế)」は、唐辛子にレモングラスやにんにく、エシャロットを合わせ、油で熱して作る辛味調味料です。赤い色と香ばしい香りが特徴で、フォーや牛肉の煮込み、鍋などに加えます。エビを加えた「サテトム(sa tế tôm)」もあり、うまみが増します。「トゥオンオット(tương ớt)」は、唐辛子をベースにした甘みのあるチリソースです。なお、世界的に有名な唐辛子ソース「スリラチャ」は、名前こそタイの地名シラチャに由来し、ベトナム出身の実業家がアメリカで広めて世界に普及させたものです。ベトナム生まれのソースというわけではありません。

つけ塩|ライム塩こしょうとタイニンのエビ塩

液体の調味料だけでなく、つけて食べる「塩」もベトナムでは欠かせません。シーフードや茹でた肉、さらには果物にもよく合います。

定番は、塩に胡椒とライムを合わせた「ムオイティウチャン(muối tiêu chanh)」です。さっぱりとした酸味と胡椒の香りが、素材の味を引き立てます。胡椒はベトナムの主要な農産物で、ベトナムの胡椒を解説した記事もあわせてご覧ください。もうひとつ有名なのが、南部タイニン省の「エビ塩(muối tôm)」です。塩に干しエビの粉や唐辛子、にんにくなどを合わせた混合塩で、その製法はベトナムの無形文化遺産にも指定されています。果物や焼きイカ、ライスペーパーのサラダにつけて楽しまれます。エビについては、ベトナムのエビを解説した記事もご覧ください。

うま味・色づけの調味料

ベトナムの家庭料理では、うまみや彩りを足す調味料もよく使われます。スープや煮込みの仕上げに活躍します。

うま味調味料は、ベトナムの台所に広く普及しています。スープや炒め物のうまみづけに使われ、固形のスープの素(クノールなど)や粉末だしも一般的です。彩りに使われるのが「アナトー油(dầu điều màu)」で、アナトーの種を油で熱して作る赤橙色の油です。牛肉の煮込みや、辛い米麺ブンボーフエに、食欲をそそる色を添えます。なお、ベトナム語で「ハットディウ」はカシューナッツも指すため、色づけのアナトーとは別物です。こうした調味料に加え、砂糖やライム、にんにく、唐辛子、パクチーなどのハーブが、味づくりの柱になります。

北・中・南で変わる味つけ

ベトナムは南北に長く、地域によって味つけや使う調味料に違いがあります。旅行や料理の際に知っておくと、その土地らしさが見えてきます。

地域味つけの傾向特徴的な調味料
北部(ハノイ)塩気をきかせた素朴な味マムトム・胡椒
中部(フエ・ダナン)辛さと発酵の風味が強いマムネム・サテ
南部(ホーチミン)甘みをきかせたまろやかな味トゥオンデン・砂糖

北部は塩気を中心とした素朴な味つけ、中部は辛さと発酵のパンチがきいた味、南部は砂糖で甘みを加えたまろやかな味、という傾向があります。同じ料理でも、地域によって添えられる調味料が変わるのがおもしろいところです。

調味料の組み合わせと使い方のコツ

ベトナム料理は、一つの調味料で完成させるより、料理に合わせて重ねるのがコツです。代表的な組み合わせを知っておくと、家庭でも本場の味に近づけます。

  • フォー|卓上でサテやトゥオンデンを少し、ライムをしぼって好みに調える
  • 生春巻き・揚げ春巻き|甘酸っぱいヌクチャムにつけて食べる
  • 鍋・牛肉の煮込み|サテで辛味とコクを足す
  • シーフード・茹で肉・果物|ムオイティウチャンやエビ塩をつける

味が決まらないときは、ヌクマムで塩気とうまみ、砂糖で甘み、ライムで酸味、唐辛子で辛味、と役割で考えると調えやすくなります。まずは少量ずつ加えて、味をみながら足していくのが失敗しないコツです。発酵の強いマムトムやマムネムは香りが立つので、少量から試すのがおすすめです。

日本でベトナムの調味料を買う

ベトナムの調味料は、日本でも手に入れやすくなっています。まずは身近な店からそろえてみましょう。

ヌクマムやチリソース、サテといった定番は、輸入食材を扱うカルディコーヒーファームや業務スーパー、アジア食材店、ベトナム食材の通販などで見つかります。在庫は店舗によって差があるため、見つからないときは複数の店や通販をのぞいてみるとよいでしょう。お土産にするなら、エビ塩やヌクマム、サテなど、持ち運びやすく日持ちするものが人気です。ベトナム食材やお土産は、姉妹サイトのベトナム土産専門サイトでも紹介しています。魚醤や大豆調味料を業務用にまとまった量で仕入れたい場合は、ベトナムから農産物を輸入するガイドお問い合わせもご利用ください。

よくある質問

ヌクマムとナンプラーの違いは何ですか?

どちらも魚を発酵させた魚醤ですが、ヌクマムはベトナム、ナンプラーはタイの調味料です。原料や製法、風味の傾向に違いがあり、ベトナム料理にはヌクマムを使うのが基本です。代用はできますが、味わいは少し変わります。

ヌクマムとヌクチャムは何が違いますか?

ヌクマムは魚を発酵させた魚醤そのものです。ヌクチャムは、そのヌクマムに水や砂糖、ライム、唐辛子、にんにくを合わせて作る甘酸っぱいつけだれです。料理にそのままかけるのがヌクマム、つけて食べるのがヌクチャム、と考えるとわかりやすくなります。

ベトナムの臭いが強い調味料は何ですか?

発酵ペーストのマムトムとマムネムです。マムトムは小さなエビやアミ、マムネムは小魚を発酵させたもので、独特の強い香りがあります。ブンチャーや牛しゃぶのつけだれに使われ、好きな人にはたまらない風味です。少量から試すのがおすすめです。

スリラチャはベトナムの調味料ですか?

スリラチャの名前はタイの地名シラチャに由来し、ベトナム出身の実業家がアメリカで広めて世界に普及させた唐辛子ソースです。ベトナム生まれのソースというわけではありません。ベトナムには、唐辛子ベースのトゥオンオットや辛味オイルのサテといった、独自の辛味調味料があります。

ベトナムの調味料はどこで買えますか?

ヌクマムやチリソース、サテなどの定番は、カルディや業務スーパー、アジア食材店、ベトナム食材の通販などで手に入ります。在庫は店舗によって差があります。お土産には、エビ塩やヌクマムなど日持ちするものが人気です。

まとめ|発酵と素材が織りなすベトナムの調味料

ベトナムの調味料は、魚醤ヌクマムを主役に、発酵ペーストや大豆の調味料、辛味のサテ、つけ塩まで、発酵と素材の組み合わせから生まれた多彩な顔ぶれです。ヌクマムとヌクチャム、マムトムとマムネムのように、似て非なるものを見分けられると、料理の幅がぐっと広がります。北・中・南で味つけが変わるのも、ベトナム料理の奥深さです。原料をたどれば、魚や唐辛子、胡椒、大豆といった農産物に行きつきます。まずは定番の一本から、本場の味を食卓に取り入れてみてください。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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