ベトナム水産輸出、2026年Q1は26.2億ドル・13%増——中国向けロブスター需要爆増とエビの構造変化

ベトナム水産品輸出業者協会(VASEP)の最新データによると、2026年第1四半期のベトナム水産輸出総額は26億2000万米ドル(前年同期比13.3%増)を記録した。農産物全体の輸出166.9億ドルの中で水産が最大の成長エンジンとなった背景には、中国市場での需要構造の変化がある。

目次

最大の驚き:中国向け輸出が前年比45%増

市場別のデータを見ると、中国・香港向け輸出が約7億6400万ドルと前年比45%増という驚異的な伸びを記録した。3月単月でも2億5000万ドル超で前年比50%超増と加速した。

この急増の背景には3つの構造的要因がある。

要因1:春節需要と「高級水産物シーズン」

2026年の旧正月は2月中旬に設定されており、年末から正月にかけての中国国内の水産物需要が例年以上に集中した。特に生きたロブスター・エビ・カニなど「食卓を彩る高級水産品」の需要が前年比で大幅増加した。

要因2:カナダ産ロブスターの供給代替

最も注目されるのがロブスター市場での変化だ。カナダとのロブスター貿易において関税・供給変動が発生し、中国が代替供給元としてベトナムを選択した。この「市場ギャップ」がベトナム産ロブスターの輸出急増に直接貢献した。ベトナム産ロブスターは主に中南部のカインホア省・フーイェン省などで養殖され、鮮度維持技術の向上が中国市場での評価を高めている。

要因3:中国中間所得層のプレミアム水産需要

中国の「中産階級(中間所得層)」の拡大に伴い、高品質な輸入水産品への需要が構造的に増加している。単価の高い活エビ・活ロブスター・生カキなどを扱うベトナム企業にとって、中国市場は最重要マーケットとなりつつある。

エビ輸出の構造変化:中国が中心に

ベトナムのエビ輸出においても中国への依存度が高まっている。2026年1〜2月の中国向けエビ輸入は前年比約18%増加し、ベトナム産エビの最大市場として定着した。

エビの主要品目の状況:

  • バナメイエビ(白エビ):最大輸出品目で中国・米国向けが中心。中国向けは急増
  • ブラックタイガーエビ(ウシエビ):高単価で日本・欧州向けが多いが需要停滞
  • 活エビ・冷凍ホールエビ:中国の春節ギフト需要で短期的急増

課題:米国・日本・韓国向けは約10%減

中国の好調とは対照的に、他主要市場は厳しい状況が続いている。

米国市場:前年比10%以上減少
MMPA(海洋哺乳類保護法)に基づくCOA証明書要件と、反ダンピング関税が足かせになっている。ベトナム産エビへの反ダンピング関税率は品目・メーカーによって異なるが、高い税率が競争力を削いでいる。

日本市場:約10%減
消費の伸び悩みと円安による輸入コスト上昇が影響している。日本向けはブラックタイガーを中心とした高単価品が多いが、消費者の節約志向で需要が停滞している。

EU市場:ほぼ横ばい
安定しているが、成長エンジンとはなっていない。EU-ベトナムFTA(EVFTA)の効果は継続しているが、景気停滞が制限要因だ。

アグリビジネス視点:ベトナム水産の輸出多様化戦略

VASEPと農業農村開発省は、この状況を受けて以下の戦略的方針を示している。

  1. 中東・中央アジア市場の開拓:新興の高所得者向け市場としてUAE・サウジアラビアへの輸出拡大を模索
  2. 加工度向上による付加価値強化:生・冷凍から調理済み・フレーバー付き製品への移行
  3. 追跡可能性(トレーサビリティ)の整備:EU・日本の厳格な規格対応のためのサプライチェーン透明化
  4. アグリテック活用:IoTによる養殖管理・病気早期発見システムの導入拡大

Q2以降の見通し:中国市場の持続性が鍵

VASEPはQ2 2026年も中国・香港が最大の成長市場であり続けると予測している。ただし、春節効果が剥落した後の3月から失速が見られたことも事実であり、持続的な需要かどうかは見守る必要がある。

米国・日本向けの回復は規制環境の改善と現地消費の回復にかかっており、短期的には改善が難しい見通しだ。農産物全体では食品安全基準の向上と輸出先の多様化が2026年の重点課題となっている。

参考データ:Vietnam Investment Reviewベトナム政府公式発表。ベトナム農業の最新情報はvietnam-agri.comで継続的に更新している。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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