ベトナム産ドラゴンフルーツの2026年1〜2月の輸出額が前年同期比14%増の1億850万ドル(約163億円)に達した。タイ向けが2.7倍の920万ドル、UAE向けが57%増の330万ドルと急伸する一方、米国向けは39%減の400万ドルに縮小。中国依存からの脱却を模索してきたベトナムのドラゴンフルーツ産業が、東南アジア・中東への市場多角化で新たな成長軌道に乗り始めた。
タイ向け2.7倍、UAE向け57%増——2026年1〜2月の輸出実績
VnExpress(4月15日付)によると、ベトナム産ドラゴンフルーツの2026年1〜2月の輸出総額は1億850万ドルで、前年同期比14%の伸びを記録した。とりわけタイ向けは920万ドルと前年の約2.7倍に跳ね上がり、UAE向けも330万ドル(57%増)と大きく伸長した。
一方で、最大の買い手である中国向けは6,650万ドル(5%増)と堅調ながらも成長率は穏やかにとどまった。米国向けは400万ドルと39%減少し、市場別の明暗が分かれる結果となった。
Binh Thuan省を中心とする産地構造と直近の課題
ベトナムのドラゴンフルーツ栽培の中心地はBinh Thuan省で、栽培面積2万6,550haは全国の53.1%を占める。生産量ベースでも全国の48%がBinh Thuan省産だ。主な収穫期は5〜9月の本季だが、1〜2月の逆季(nghịch vụ)でも電照栽培による出荷が行われている。
ただし、2025年末の洪水被害でカビ病が広がり、一部農家では収量が落ち込んだ。Binh Thuan省のドラゴンフルーツ果樹園・企業協会は「洪水後の菌類被害が品質低下を招いた」と報告しており、2026年上半期の供給量への影響が懸念されている。
また、より収益性の高い作物(ドリアンなど)への転作が進んでおり、ドラゴンフルーツの栽培面積は縮小傾向にある。
ドラゴンフルーツ輸出額の市場別内訳(2026年1〜2月)
| 輸出先 | 輸出額(百万USD) | 円換算(億円) | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 中国 | 66.5 | 約100 | +5% |
| タイ | 9.2 | 約14 | +171%(2.7倍) |
| 米国 | 4.0 | 約6 | ▲39% |
| UAE | 3.3 | 約5 | +57% |
| 合計 | 108.5 | 約163 | +14% |
※円換算は1ドル=150円で概算
現地の反応——産地・バイヤー・業界団体の声
Binh Thuan省のドラゴンフルーツ協会関係者は「タイ向けの急増は、タイの加工業者がベトナム産の赤肉種を原料として買い付けている動きが大きい。価格交渉力が上がった」とコメントしている。
ホーチミン市の青果輸出業者は「UAE向けはドバイの高級スーパーマーケットチェーンからの引き合いが強い。ハラール認証や残留農薬基準をクリアした産地だけが取引対象になるため、差別化の余地がある」と話す。
一方、米国向けの減少について業界関係者は「照射処理コストの上昇と、メキシコ産・コロンビア産との競合激化が響いている」と分析している。
日本の輸入業者・農業関係者への影響
ベトナム産ドラゴンフルーツは日本にも輸入されているが、中国・タイ・中東への出荷優先度が上がることで、日本向けの供給量や価格に影響が出る可能性がある。
白肉種(bạch)の農家卸値は1kgあたり1万〜1万5,000VND(約60〜90円)、赤肉種は1万5,000〜2万5,000VND(約90〜150円)と報じられている。タイ・中東バイヤーが赤肉種を積極的に買い付けるため、日本向けの赤肉種は今後価格上昇圧力を受ける見通しだ。
日本の輸入業者にとっては、Binh Thuan省だけでなくLong An省やTien Giang省の産地と直接関係を構築し、安定調達ルートを確保することが課題になる。
業界への波及——青果輸出100億ドル時代の柱に
ベトナムの青果輸出全体は2026年Q1で前年比27%増の14.8億ドルを記録し、年間100億ドル達成が視野に入っている。ドラゴンフルーツはドリアンに次ぐ主力品目で、中国一極集中からの分散が進めば輸出リスクの低減にもつながる。
タイとの間では、ドラゴンフルーツの加工品(フリーズドライ、ジュース原料)取引が拡大しており、付加価値型の輸出にシフトしつつある点も注目される。ベトナム政府が掲げる農林水産物輸出730〜740億ドル目標の達成には、こうした市場多角化の成功事例を他品目にも展開する必要がある。
ベトナム産ドラゴンフルーツの実用情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主要産地 | Binh Thuan省(全国の53.1%)、Long An省、Tien Giang省 |
| 主な品種 | 白肉種(bạch)、赤肉種(ruột đỏ) |
| 本季収穫期 | 5〜9月 |
| 逆季(電照栽培) | 12〜2月 |
| 白肉種 農家卸値 | 10,000〜15,000 VND/kg(約60〜90円) |
| 赤肉種 農家卸値 | 15,000〜25,000 VND/kg(約90〜150円) |
| 主要輸出先(2026年) | 中国、タイ、米国、UAE、日本 |
| 日本向け必要条件 | 蒸熱処理(VHT)、植物検疫証明書 |
まとめ——市場分散が進む中、日本は調達戦略の見直しを
2026年初頭のデータは、ベトナム産ドラゴンフルーツが中国一極依存から脱却し、タイ・中東という新たな成長市場を獲得しつつあることを示している。日本の輸入業者にとっては、タイや中東バイヤーとの「買い負け」リスクが高まるタイミングだ。
産地との直接契約や、赤肉種の早期予約確保、さらにはフリーズドライなど加工品の共同開発といった手を打つ必要がある。5月以降の本季入りに向けて、今が調達交渉の適期といえる。