米国「TRUMPミッション」がベトナムに上陸──農産品輸出45%増の勢いで10団体が市場アクセス交渉、小麦消費年6%増の食構造変化も

米国農務省(USDA)が「Trade Reciprocity for US Manufacturers and Producers(TRUMP)Mission」と名付けた農業貿易使節団をベトナムに派遣した。Luke J. Lindberg貿易・海外農業担当次官が率い、カリフォルニア新鮮果実協会からPotatoes USA、米国食肉輸出連合まで10の業界団体が参加。2025年の対ベトナム農産品輸出が前年比45%増の56億ドル(過去最高)を記録したのを受け、さらなる市場拡大を狙う。

目次

派遣された10の業界団体と狙い

果実からバイオ製品まで──幅広いカバー範囲

  • カリフォルニア新鮮果実協会
  • ワシントンりんご委員会
  • カリフォルニアプルーン委員会
  • Potatoes USA
  • 米国家禽・卵輸出協議会
  • 米国乳製品輸出協議会
  • 米国穀物・バイオ製品協議会
  • 米国食肉輸出連合
  • 米国大豆輸出協議会
  • U.S. Wheat Associates

10団体の顔ぶれは、穀物・畜産・果実・乳製品・バイオ製品と米国農業のほぼ全セクターを網羅している。ベトナムは米国にとって8番目に大きい農業輸出市場であり、関税引き下げ交渉や検疫協定の更新が主なアジェンダだ。

小麦に見るベトナムの食構造変化

注目すべきは小麦のデータだ。2025/26年度のベトナムの米国産小麦購入量は58.6万メトリックトン(前年比+3%)に達し、一人当たり小麦消費量は年6%のペースで増加している。コメ中心の食文化がパン・麺・即席食品へと多様化する「食のグローバル化」が、穀物貿易の構造を変えている。

ベトナムのコメ輸出が価格競争に苦戦している一方で、小麦輸入は増加するというのは一見矛盾しているが、都市部の外食産業拡大と所得水準の上昇を考えれば合理的だ。コメは「輸出して稼ぐ戦略物資」、小麦は「国内消費の新しい柱」という二重構造が鮮明になっている。

米中貿易摩擦がベトナムに追い風

中国向け農産品の代替先としての浮上

USDAがベトナムに積極的な理由の一つは、米中貿易摩擦の長期化だ。中国が米国産大豆・トウモロコシへの関税を引き上げたことで、米国の農業セクターは代替輸出先を急いで開拓している。ベトナムの人口1億人弱、年間GDP成長率6%台という市場ポテンシャルは、この文脈で一層魅力的に映る。

一方で、ベトナムは中国との農業協力も深化させており、米中の両方から求愛されるポジションにある。カシューナッツ輸出でも中国が米国を抜いたように、ベトナムの農産物貿易は多極化が進んでいる。

ベトナム農業関係者が注視すべきポイント

米国農産品の流入が国内農業に与える影響

  • 畜産セクター:米国産鶏肉・豚肉の輸入拡大は、ベトナム国内の養鶏・養豚農家にとって価格圧力になる可能性がある
  • 果実セクター:カリフォルニア産果実の関税引き下げが実現すれば、国産果実との棚取り競争が激化する
  • 乳製品セクター:ベトナムの乳製品市場はVinamilkが支配的だが、米国産チーズ・バターの流通拡大は加工食品向け原料市場を変える
  • 穀物セクター:飼料用トウモロコシ・大豆の安定供給は、ベトナムの畜産業にとってはプラス材料

USDAは2026年後半にさらに大規模な農業ビジネス・トレードミッションを予定している。ベトナム農業にとって、米国からの投資と輸入はチャンスとリスクの両面を持つ。自国のグリーンパスポート戦略や品質認証を強化し、交渉力を高めておくことが求められる。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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