ベトナム産イチゴの輸出額が2年で2000倍に——2026年1〜2月に340万ドル、日本・韓国・EUへの加工品輸出が急伸

2026年の1月〜2月、ベトナム産イチゴの輸出額が340万米ドルを記録した。これは前年比で約2000倍という驚異的な伸びだ。2021年の輸出額がわずか6,000ドル(約90万円)だったことを考えると、その急成長の速さは農産物輸出の歴史でも類を見ない。何がこの変化を起こしたのか、現地の産地形成から輸出先の需要まで詳細に分析する。

目次

ベトナムイチゴ輸出の急成長データ

期間 輸出額 増減
2021年通年 約6,000ドル 基準年
2025年通年 174万ドル 前年比大幅増
2026年1〜2月 340万ドル 2021年比約2000倍

この加速は単なる量的拡大ではなく、「産地形成・加工技術・市場開拓」の三位一体が初めて機能し始めた結果だ。

主要産地:ソンラ省とラムドン省

ベトナムのイチゴ産地として2大拠点を形成しているのが、北西部の「ソンラ省」と中部高地の「ラムドン省(ダラット周辺)」だ。

ソンラ省(北西部高地)
– 作付け面積: 600ヘクタール
– 年間生産量: 10,000トン
– 特徴: Xuan Que苺農業協同組合(17メンバー・50ha・年産1,250トン)など組織化された農家が多い

ラムドン省(中部高地・ダラット)
– 作付け面積: 170ヘクタール
– 特徴: ベトナム最大のイチゴ産地として長い歴史を持つ

両省合計で770ヘクタール・11,250トン以上の生産規模を持ち、グローバルGAP認証農場も増加している。

輸出先国の内訳と需要の違い

現在の主要輸出先は「中国・韓国・日本・シンガポール・マレーシア・タイ・EU・中東」だ。

韓国・日本向け: フリーズドライ・冷凍製品が主流。スムージー原料・製菓用途での需要が高い。

EU向け: オーガニック認証品・スーパーフード市場への原料供給。欧州のウェルネス消費者層が高品質ベトナム産イチゴを求め始めている。

輸出品の大部分が冷凍・フリーズドライ・加工品であることが特徴的だ。生鮮イチゴは保存性・輸送コストの問題で輸出が難しいため、加工によって付加価値を付けた形で輸出されている。

なぜ今「輸出2000倍」が起きているのか

1. 農業協同組合による産地組織化

Xuan Que苺農業協同組合のような組織化された生産者グループが増えたことで、品質の均質化と輸出規格への対応が可能になった。

2. 冷凍・フリーズドライ技術の普及

輸出の障壁だった保存性問題を解決したのが加工技術だ。ソンラ省・ラムドン省を中心に、農産物加工工場が増設されており、収穫直後に冷凍処理・フリーズドライ加工することで輸出可能な商品に変換できるようになった。

3. 政府のフルーツ輸出支援政策

ベトナム政府は2026年の農林水産物輸出目標を730〜740億ドルに設定しており、果実・野菜カテゴリはQ1だけで前年比32%増の15億4000万ドルを達成した。

課題:低温保存とロジスティクスの改善

ベトナム果実野菜協会のDang Phuc Nguyen事務局長は「低温保存技術の改善が輸出拡大の鍵」と指摘する。コールドチェーン(低温物流)の整備が進めば、現在は困難な生鮮イチゴの航空輸送・高付加価値市場への参入が可能になる。

日本のバイヤー・食品メーカーへの示唆

フリーズドライイチゴの調達先多様化: 現在、日本のフリーズドライイチゴはカリフォルニア産・欧州産が主流だが、ベトナム産は価格競争力が高い。品質認証が整えば代替調達先として有力候補となる。

OEM製品のコスト削減: イチゴ使用の菓子・飲料OEM製品でベトナム産フリーズドライイチゴへの切り替えを検討する食品メーカーが増えている。

ベトナム農業輸出全体の勢い

2026年Q1の農林水産物輸出総額は169億ドル(前年比5.9%増)で、貿易黒字は47.8億ドル(前年比12%増)に達した。コショウ(+28.8%)・果実野菜(+32.1%)が特に好調だ。

参考情報:
Strawberry exports jump 2,000-fold(VnExpress)
Vietnam’s agro-forestry-fishery exports reach nearly $16.7 bln in Q1 2026(VnEconomy)
Vietnam’s Fruit and Vegetable Exports Surge Past $8.5 Billion(Financial Content)

関連記事:
ベトナム農林水産物輸出2026年目標730〜740億ドル
ベトナム青果輸出、Q1で前年比27%増
ベトナムコメ輸出、2026年1〜3月は数量増も価格10.7%下落

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

目次