ベトナム産コショウ輸出Q1で31%増も、供給減と輸送費4倍の二重苦

ベトナム産コショウの輸出が好調だ。2026年第1四半期(Q1)の輸出量は66,350トン(前年比39.2%増)、輸出額は4.3億ドル(同31.7%増)と力強い伸びを示した。しかし、この数字の裏には憂慮すべき二重の構造問題が潜んでいる——収穫量の急減と、中東情勢に端を発する輸送コストの急騰だ。

目次

Q1 2026の輸出実績:米国・中国が牽引

指標 Q1 2026実績 前年比
輸出量 66,350トン +39.2%
輸出額 4.3億ドル +31.7%
3月単月輸出量 30,638トン 前月比+119.3%
3月単月輸出額 1.993億ドル 前年同月比+51.3%
黒コショウ平均単価 6,520ドル/トン 前月比-0.7%
白コショウ平均単価 8,735ドル/トン 前月比+1.0%

市場別では、米国が8,059トン(前月比121%増)、中国が3,663トン(同134.7%増)と急伸した。エジプト、オランダ、カナダ、フィリピンでも軒並み3桁の伸び率を記録しており、グローバルな需要回復が鮮明だ。

問題1:2026年収穫量が15〜20%減の見通し

輸出好調の陰で、国内供給側には深刻な懸念が広がっている。2026年の収穫量予測は17万〜18万トンで、前年比15〜20%の大幅減が見込まれている。原因は主に2つだ。

  • 気象不順:主産地のビンフオック省・ダクラク省などで降雨パターンの乱れが生育に悪影響
  • 老齢化した農園:多くのコショウ農園が樹齢20〜30年を超えており、収穫量・品質ともに低下傾向

さらに、農家の作物転換も進んでいる。コショウ農家がより収益性の高いドリアンや果樹への転作を選択しており、新規植え付けが追いついていない状況だ。国内産地の卸値はVND 140,000〜150,000/kg(約840〜900円/kg)まで上昇しており、輸出業者のマージン圧迫要因となっている。

問題2:中東情勢で輸送コストが3〜4倍に

もう一つの問題が物流コストの急騰だ。ホルムズ海峡周辺の緊張悪化により、主要航路の運賃が通常比3〜4倍に跳ね上がっている。ベトナムのコショウ輸出における中東向けシェアは約15%を占めており、かつ中東は欧州向け輸送の経由地でもある。

一部の輸出業者は新規注文を一時停止しており、「コスト上昇分を価格転嫁できないまま出荷することで損失が確定する」と報告されている。ベトナム農業全体の2026年Q1データ(農林水産輸出166.9億ドル)でも、物流コスト上昇が複数品目の収益を圧迫していることが指摘されている。

分析:「好調な輸出数字」が隠す価格・供給リスク

Q1の輸出量増加は、主に「在庫先食い」の側面が強い。世界的なコショウ需要の回復と価格上昇期待から前倒しで輸出が進んだが、2026年後半は供給逼迫による価格上昇と輸出量減少の両面が予想される。

国際コショウ協会(IPC)のデータでは、世界のコショウ在庫は2025年末時点で過去5年平均を下回っており、ベトナム以外の主産地(インドネシア・ブラジル・インド)でも増産に時間を要する。需給タイト化は、価格上昇を通じてベトナム農家に恩恵をもたらす一方で、加工食品メーカーの調達コスト増という形で消費地側に転嫁される。

日本への示唆

日本は世界有数のコショウ輸入国であり、ベトナムからの輸入依存度が高い。Q1の数字を見ると輸出先にジャパンは直接上位に出ていないが、オランダや香港経由でのリエクスポートを含めると影響は大きい。

食品メーカー・スパイスメーカーにとっての実践的な対応として以下が考えられる。

  • 長期契約・先物予約の検討:2026年後半以降の価格上昇リスクに備えた早期調達
  • 産地多様化:インドネシア産・ブラジル産コショウのソーシング先開拓
  • ベトナム現地業者との直接取引:中間マージンの削減と安定調達の両立

今後の注目点

2026年8〜10月の新収穫シーズンが近づく中、農園の実際の収量確認が最大の焦点となる。気象条件の改善で予測より多い収穫となれば価格は安定・低下するが、老齢農園問題は短期的には解決しない構造問題だ。また、中東情勢の緊張緩和が輸送コスト正常化のトリガーとなり得るが、時期の見通しは不透明だ。

【情報源】
VnExpress – Pepper exports soar 31% in Q1 despite supply, shipping challenges
Vietnam News – Pepper exports rebound strongly despite challenges
Vietnam.vn – Pepper export turnover Q1 2026 up 30%+

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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