ベトナム・タイニン省が数十億ドル規模のハイテク畜産ハブに――De Heus・Hung Nhon連合が12プロジェクト3.8億ドルを投下、2027年ハラール鶏肉輸出へ

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オランダ・ベトナム連合がタイニン省に3.8億ドル投下、ハイテク畜産クラスター形成へ

2026年3月25日、ベトナム南部のタイニン(Tay Ninh)省で、同省人民委員会の Le Van Han 委員長がオランダ De Heus Group およびベトナム Hung Nhon Group の幹部と進捗確認会議を開催した。両社が共同で推進する12のハイテク畜産プロジェクトは、現時点の投資額が約3億8,000万ドル(約570億円)に達しており、2036年までの拡張フェーズを含めると4億9,800万ドル(約747億円)に膨らむ計画だ。タイニン省は南部重点経済圏(Southern Key Economic Region)を構成する9省市の一つで、ホーチミン市への交通アクセスと広大な農地を強みに「ベトナム畜産の新たな中核」を目指す。

投資の全容:種鶏8,000万羽、輸出用ブロイラー2,500万羽、曽祖父母豚1万頭

De Heus・Hung Nhon 連合がタイニン省で手掛けるプロジェクトは、種鶏生産からと畜・加工まで一貫したクローズドループ(閉鎖型)バリューチェーンを構築する点に特徴がある。フル稼働時の主な生産能力は以下のとおりだ。

  • 年間8,000万羽の種鶏(breeding chickens)生産
  • 年間2,500万羽の輸出用ブロイラー出荷
  • 1万頭の曽祖父母豚(great-grandparent pigs)飼育
  • 年間1,870万羽処理能力のハイテクと畜・加工工場

すべての施設はGlobalGAPおよびISOの国際基準で運営される設計で、飼料工場・種畜農場・肥育農場・加工場・流通を一つのチェーンで管理する。育種から店頭までの「見える化」により、輸出先の品質要求に即座に対応できる体制を目指している。

背景:ASFと家禽シフト、そして「畜産DX」の波

ベトナム畜産業界はここ数年、アフリカ豚熱(ASF)の断続的な発生に悩まされてきた。2025年には全国122のコミューン・行政区で感染が確認され、養豚農家の経営を圧迫した。この結果、多くの小規模農家が豚から家禽へ生産をシフト。回転期間が短く投資回収が速い家禽は「ASF時代のリスクヘッジ」として急速に存在感を増した。

一方で、従来の小規模・分散型生産では国際市場で求められるトレーサビリティや品質管理に限界がある。De Heus・Hung Nhon連合のタイニン投資は、こうした構造的課題を「閉鎖型バリューチェーン+欧州テクノロジー」で解決しようとする試みだ。ベトナム政府も2026年の農林水産物輸出目標を730〜740億ドルに設定しており、畜産分野の高度化は国策と合致する。

投資内訳と主要パートナー

項目 金額(USD) 円換算(1USD=150円) 備考
現行12プロジェクト 3億8,000万ドル 約570億円 種鶏・ブロイラー・養豚・加工場・飼料工場
2026〜2036年拡張計画 4億9,800万ドル 約747億円 採卵鶏・パレット生産の拡大
合計(2050年まで) 8億7,800万ドル 約1,317億円 タイニン省を長期拠点と位置づけ

欧州テクノロジー・パートナー

企業名 担当領域
Bel Ga ベルギー 種鶏・育種技術
Olmix フランス 飼料添加物・バイオセキュリティ
Big Dutchman ドイツ 畜舎設備・自動化システム
Orvia フランス 家禽育種・遺伝資源
Den Ouden GrowSolutions オランダ 環境制御・生育管理
TTC Energy ベトナム 太陽光発電・エネルギー供給

現地の反応

Le Van Han(タイニン省人民委員会委員長):「この畜産クラスターは省の開発戦略に合致しており、利用可能な土地と強固な交通網という自然の優位性を活かすものだ」と述べ、行政手続きの迅速化を約束した。

業界関係者の声:タイニン省の農業局関係者は、大規模投資が地元の雇用を創出するだけでなく、周辺の小規模農家がサプライチェーンに参入する機会にもなると期待を示している。契約農場方式で種鶏や飼料を提供し、農家が肥育に専念するモデルが検討されている。

輸出業者の見方:中東・東南アジア向けのハラール鶏肉市場は拡大基調にあり、2027年の初出荷が実現すれば、タイから市場シェアを奪う可能性があるとの見方が出ている。

農業関係者・輸入業者への示唆

今回のプロジェクトは、ベトナムが「低コスト原料の輸出国」から「高付加価値畜産物の供給国」に転換しようとする動きを象徴している。日本の食品輸入業者にとっては、以下の点が注目に値する。

  • ハラール認証の鶏肉:中東向けが主ターゲットだが、日本国内のハラール需要(インバウンド・在留ムスリム向け)にも供給先候補となりうる
  • GlobalGAP・ISO準拠の品質:欧州基準の衛生管理が輸入審査のハードルを下げる可能性
  • 鶏肉加工品の調達先多様化:ブラジル・タイに続く第三の選択肢としてベトナム産が浮上

一方、ベトナムの物流コストは生産コスト比20〜25%と依然として高く、冷蔵コンテナの安定確保が輸出拡大のボトルネックになる懸念がある。

業界への波及

De Heus・Hung Nhon連合のタイニン投資が成功すれば、ベトナム畜産業に以下のような波及効果が生じうる。

  • 競合投資の加速:CP Group(タイ)やJapfa(シンガポール)など既存プレーヤーも南部での拡張を検討する可能性
  • 循環型モデルの標準化:畜産副産物をバイオガス化し太陽光と組み合わせるエネルギー自給モデルが、他省への横展開の参考事例に
  • ASF対策の高度化:バイオセキュリティ先進国(ベルギー・オランダ)の技術移転がベトナム全体の防疫水準を引き上げる契機に
  • 飼料産業への影響:大規模一貫生産の拡大は、国内飼料メーカーの再編を促す可能性がある

実用情報

項目 内容
投資主体 De Heus Group(オランダ)+ Hung Nhon Group(ベトナム)
投資先 タイニン省(南部重点経済圏、ホーチミン市から北西約100km)
総投資額(2050年まで) 約8.78億ドル(約1,317億円)
ハラール鶏肉初出荷予定 2027年初頭
主なターゲット市場 中東・東南アジア
認証基準 GlobalGAP、ISO
環境対策 バイオガス発電、有機肥料化、太陽光併設
直近の行政動向 2026年3月25日にタイニン省が進捗確認会議を開催

まとめ

タイニン省で進むDe Heus・Hung Nhon連合の投資は、単なる大規模畜産場の建設ではない。欧州5社の最先端技術を統合し、育種から加工・輸出までの全工程を閉鎖型で管理するモデルは、ベトナム畜産の「工業化」を体現するプロジェクトだ。2027年のハラール鶏肉初出荷が実現すれば、タイに次ぐ東南アジアの家禽輸出国としてベトナムのプレゼンスが一段と高まる。日本の畜産物輸入関係者にとっても、調達先の選択肢が広がる展開として注視すべき動きだ。

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この記事を書いた人

京都で食品ブランドを運営しながら、これまで乾燥野菜や野菜パウダーなど、素材の魅力を活かした商品づくりに携わってきました。現在はベトナム在住2年目で、現地ではコーヒーの生産現場にも関わり、栽培から加工、味づくりまで一貫して学んでいます。毎日の暮らしの中で、安心して楽しめる食品を届けたいという思いから、生産背景や作り手の顔が見える商品を大切にしています。日本とベトナム、それぞれの食文化の魅力を活かしながら、日常にちょっとした豊かさを届けることを目指しています。

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