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過去最高8.58億ドルの越ロブスターと半年間ゼロだった稚エビの正規輸入

ベトナムのロブスター輸出は2025年に8億5,800万ドルに達した。1ドル158.1円(2026年10月13日時点、以下同じ)で約1,357億円、過去最高の金額である。2026年は上半期だけで5億8,460万ドル(約924億円)に届き、前年同期を44%超上回った。水産専門メディアのThủy sản Việt Namは10月12日、年10億ドル(約1,581億円)の扉が開きかけていると書いた。

ただし同じ記事が並べている別の数字を足すと、この記録の土台が見た目ほど厚くないことが分かる。養殖に必要な稚エビは全国で年1億〜1億2,000万尾、国内の天然採苗で取れるのは800万〜1,200万尾だ。差は輸入で埋めてきたが、最大の供給元だったインドネシアは2025年8月に稚エビの輸出を止めた。カインホア省が報告した2026年上半期の正規輸入は0尾だ。

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2025年の8.58億ドルのうち8.45億ドルが中国向けで、品種別では98.3%がtôm hùm xanh

VASEP(ベトナム水産物輸出加工協会)の集計では、2025年の対中国輸出額は8億4,500万ドル(約1,336億円)で、前年比の伸びは3桁に達した。総額8億5,800万ドルのうち、残りが20以上の市場に散っている計算だ。2026年も1〜5月で対中国が5億600万ドル超、前年同期比44.3%増。ベトナムが中国に出すエビ類の輸出額の71%超をロブスターが占めた。VASEPのレ・ハン副事務局長は2026年の対中国が10億ドルに届く可能性に言及している。実績ではなく見通しだ。

品種別の内訳が、この一極集中の原因を説明している。2025年はtôm hùm xanh(英名scalloped spiny lobster、小〜中型の緑色種)が8億4,320万ドルで輸出額の98.3%だった。大型のtôm hùm bông(英名ornate spiny lobster)が入っていないのは、売れないからではない。中国は2021年2月1日付でこの種を保護対象の第2グループに分類し、改正野生動物保護法のもとで天然採苗から育てた個体の輸入を認めていない。通るのはF2世代以降と証明できる個体だけで、改正法の施行後、天然採苗に由来するベトナム産の活けtôm hùm bôngは中国に入れなくなった。2024年5月の政府会合では、F2世代の種苗を使う養殖施設が国内に存在しないと当局者が報告している。

記録の中身は、中国の規制の対象外だった1品種が1市場でほぼ全部を稼いだ数字ということになる。中国のロブスター輸入額は2017年が12億ドルで、2025年は約39億ドルに届く見通しだとVASEPは書いている。宴席と贈答の需要が活けの小型種と合った。

カインホア省は年6,000万〜7,000万尾の稚エビが要るのに、天然採苗の充足率は5%

水産・漁業管理局の報告では、全国の養殖用の生け簀は約30万3,876枠、2025年の商品サイズ生産量は約1万4,537トン、2026年上半期は1万1,790トンで前年通年の81.1%に当たる。

全国生産量の約95%はカインホア省とダクラク省の2省から出ている。カインホア省の稚エビ需要は年6,000万〜7,000万尾で、天然採苗で満たせるのは5%。2025年は3,307万尾を正規輸入した。稚エビの価格は品種・サイズ・時期によって1尾45,000〜70,000ドン(1万ドン=約61円で、約275〜425円)である。3,307万尾をこの価格帯で単純計算すると約1.49兆〜2.31兆ドン、約91億〜141億円。1つの省が、商品を1尾も売る前に稚エビだけでこの規模を払っている。

人工種苗の生産技術は商業規模に届いていない。カインホア省水産・海洋島嶼局のホアン・アン・ハオ副局長は、人工種苗の生産工程を技術として掌握できていないことが養殖業の根本的な困難だと述べている。生産現場も小規模分散型で、ヴァンフォン湾のヴァンニン協同組合は100世帯超が数万枠の生け簀を持つ。

インドネシアが2025年8月に輸出を全面停止し、正規輸入は3,307万尾から0尾になった

蛇口が閉まった経緯はインドネシア側の事情だ。同国は2024年の海洋水産省令第7号で、外国の買い手が国内の養殖事業に投資することを条件に稚エビ(現地名BBL)の輸出を解禁した。この条件のもとでベトナムの投資家が年3億尾の能力を持つ養殖施設を動かし始め、2024年5月時点で600億ルピア(約370万ドル)の投資が集まったと同国の大臣が説明していた。ただし人工ふ化はまだ成功せず、養殖は天然採苗に頼ったままだった。インドネシア側の報道によると、同国海洋水産省は2025年8月28日、ベトナム政府との覚書に署名しながらも違法な稚エビ輸出が横行しているとして全仕向け地への輸出を停止した。再開は違法取引の撲滅が前提で、専従の取締タスクフォースを置く方針も示されている。

ここで時間差に注意が要る。稚エビから商品サイズまでは数ヶ月で終わらない。2026年上半期の5億8,460万ドルは、蛇口が閉まる前に池入れした稚エビを揚げた売上だ。止まった月の輸出額に影響は出ない。出るのは次の作の池揚げのときだ。

そして種苗問題と品種問題は、別々の課題ではなく同じ1つの課題である。輸入した天然採苗を使っている限り、tôm hùm bôngをF2世代だと証明する道がない。高単価の品種で中国に戻るには人工種苗が要り、それが商業規模に届かないから輸入天然採苗に頼り、その輸入が止まった。元記事がインドネシアでの合弁や育成施設への投資を検討課題に挙げているのは、2024年に相手が突きつけた条件を自分の答えとして書き直したことでもある。資金の話になると、ベトナムのエビ養殖では資金量よりも担保と記録が詰まりになっているという議論が先に立っている。

中国がカナダ産の25%関税を3月1日に止め、約22%を持っていた供給国が戻った

需要側でも条件が動いた。中国はカナダ産ロブスターとカニに2025年3月20日から25%の関税をかけていたが、2026年1月のカーニー首相と習近平国家主席の合意を受け、3月1日から少なくとも年末まで停止した。カナダ側では関税の影響で中国向け活けロブスターの売上が3割以上落ちたという声が出ていた。

中国のロブスター輸入は2025年に約6万9,800トンで、ベトナムが2万4,100トン、34.5%を供給して最大の供給国になった。カナダはその次で約22%である。ベトナムの上半期44%増という伸びは、6ヶ月のうち2ヶ月がカナダに関税が残っていた期間に当たる。下半期が初めての本番になる。

ただし競合の読み方は雑にしないほうがいい。カナダ産はアメリカンロブスターで、ベトナムのtôm hùm xanhとは別の商品だ。同じ品番を奪い合うのではなく、宴席と贈答の予算を取り合う関係である。価格が崩れるのではなく、同じ予算で選ばれる順番が変わる形で効く。関税停止が年末で切れるかも決まっていない。

中国統計のベトナム産2.41万トンが、ベトナム側の生産量1.45万トンを9,500トン上回る

ベトナム側は2025年の商品サイズ生産量を1万4,537トンと報告し、中国の輸入統計はベトナム産を2万4,100トンと数えている。差は約9,560トンで、どちらが正しいかは外から決められない。買い手に効くのは単価の逆算だ。対中国の8億4,500万ドルを2万4,100トンで割れば約35ドル/kg(約5,500円/kg)、総額をベトナム側の生産量で割れば約59ドル/kgになる。1.7倍の開きがある。公表値から相場を作って商談に持ち込むと、この分だけ前提がずれる。

確かめるのは種苗の出どころと水面の使用権の残り年数、それに餌の切り替え

元記事は、急拡大から深さのある発展への転換が要るという立て方で全体を組んでいる。20市場以上に出していながら98.5%が1市場という構図を、ベトナム側も直したい課題として認識している。多角化が政策として掲げられている間と達成された後では条件の出方が違う。そこが日本の輸入業者や食品メーカーの時間差になる。活けの小型種は中国の需要に合わせて作られたもので、日本側で扱いやすいのは冷凍・加工だ。ただし元記事に冷凍・加工での輸出実績の記載はなく、どの事業者がどの形態で出せるかは1社ずつ確かめることになる。

商談で確かめる項目は3つに絞れる。1つ目は種苗の出どころだ。天然採苗か人工種苗か、輸入ならどの国のどの施設か。元記事は種苗・養殖場・加工施設・輸出施設の登録と管理を課題に数えている。答えられない取引先は、F2証明が要る品種で中国向けの活け輸送にも乗れていない。

2つ目は養殖水面の使用権だ。元記事は、養殖区域の水面が安定して割り当てられていないことを課題に挙げている。使用権の残りが1年の生け簀と複数年の生け簀では、来年の数量を約束できるかが変わる。ゲアン省で55haのエビ養殖が土地契約の未確定を抱えたまま稼働していた例が報じられている。

3つ目は餌だ。生餌の魚やムール貝、カキに頼る給餌は、コストと品質のばらつき、病害、水域への負荷を抱える。配合飼料は水中で形を保つのが45〜50分で、研究側は自動給餌機と組み合わせて3〜4時間を目標にしている。切り替えが進めば残餌と水質の記録が数字で取れる。供給側では、ASC飼料認証を取った工場がベトナムに15ヶ所あり世界で最多という土台はできている。

産地は2省に寄っていて分散していない。だから稚エビの蛇口が1つ閉まると、全国の数字が同じ方向に動く。2026年上半期の正規輸入0尾という報告は、売上の形で次の作の池揚げに返ってくる。

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Author of this article

While running a food brand in Kyoto, I have worked on products that bring out the appeal of ingredients, such as dried vegetables and vegetable powders. I am now in my second year living in Vietnam, where I am also involved in coffee production on the ground, learning the whole process from cultivation to processing and flavor development. Out of a wish to deliver foods people can enjoy with peace of mind in everyday life, I value products whose production background and the faces of their makers are visible. Drawing on the appeal of both Japanese and Vietnamese food cultures, I aim to bring a little richness to daily life.

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