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ディエンビエン省の党支部書記が1.5haのシナモンを集落100ha近くに広げた

2026年10月12日夜にハノイで表彰された「ドイモイ40年の優秀農民」96人のなかに、ディエンビエン省ムオントーン村フオイピン集落の党支部書記タオ・セオ・シン氏がいた。ダンヴィエトが10月11日に出した本人取材が紙面を割いているのは収入の額よりも、自分の畑1.5haから始めた桂皮(シナモン)を集落ぐるみ100ha近くまで広げた10年の手順のほうだ。ベトナム北西部に桂皮の産地がもう一つ立ち上がりかけており、日本の香辛料・食品原料の調達側には供給元の候補が増える話になる。以下の金額は1万ドン=約61円(2026年10月13日時点のレート)で換算した。

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2016年に社会政策銀行から1億ドンを借りて植えたのは1.5haだった

起点の数字は小さい。シン氏が社会政策銀行から1億ドン(約61万円)を借りたのは2016年で、その金で苗を買い、焼畑地1.5haに桂皮を植えた。元記事の見出し下のリード文は「2015年に5haで試験栽培」と書いており本文と食い違うが、借入年・面積を具体的に記しているのは本文のほうなので、ここでは本文の2016年・1.5haを取る。借入の残りはユンボの借り上げに充て、池を掘って魚を入れ、同時に乾期が長引いたときの灌水用の水を確保している。桂皮だけに全額を張らず、水の確保と養魚を同じ投資のなかに入れたところが、この1.5haが続いた理由になっている。

桂皮は植えてから皮が剥けるまで何年もかかる樹木で、返済期限のほうが先に来る。シン氏はその数年を家族の労働と養魚・畜産で埋めた。現在の5haという面積も、年3億ドンという収入も、借入を返し終えてから桂皮に再投資した結果として後から積み上がったものだ。フオイピンの桂皮は大規模な公共事業ではなく、政策金融の個人向け融資1件から始まった。産地の立ち上がり方がこの形だと、面積は戸別の判断で増え、止まるときも戸別に止まる。

9戸のうち最初に信じた1人を動かしたのはヴァンチャンの桂皮の丘の写真だった

党支部書記として集落を回ったシン氏が最初に口説き落としたのは9戸だった。陸稲とトウモロコシを作ってきた住民に、何年も収穫のない樹木へ土地を差し出させる交渉である。ダンヴィエトの取材に答えたル・ア・ティ氏は、10年ほど前にシン氏が家に来たときのことを覚えていた。シン氏は言葉で説明するだけでなく、ラオカイ省ヴァンチャンで桂皮がよく育っている丘の写真を見せ、収穫期が来たら買い手を自分が連れてくると約束したという。別の住民ル・ア・シン氏は、当時の集落には制度や政策について誤った話を流す者もいたが、書記を信じて作業を続けたと語っている。

ムオントーン村のル・ヴァン・ズン副委員長によれば、2015年より前のフオイピンは貧困世帯の比率が7割を超える時期があり、天候次第で食料が足りなくなる集落だった。そこで効いたのは栽培技術の講習ではなく、出口を一人が引き受けたことである。山地の作物転換が途中で止まるかどうかは、収穫期に誰が買うのかを言い切れる人間が集落のなかにいるかで分かれる。クアンガイでアカシアをやめ山1haのレモングラスで利益8000万ドンを出した農家のように、山地の転換はまず1戸の実績が出てから周囲に移る。

ただし、この構図は買い手側から見ると弱点でもある。9戸であれば一人の人脈で捌けるが、100ha近くの集落になると出荷量は一人の販路に収まらない。日本側がフオイピンと取引を考えるなら、シン氏以外にも集荷の窓口があるのかを早い段階で確かめることになる。

5haで年3億ドンはキロ1万5000〜1万7000ドンの買値が支えている

シン氏の家族はいま5haが収穫期に入り、年平均で約3億ドン(約184万円)の収入があるとされる。元記事もこの額を提供された数値として扱っている。1haあたりに割ると6,000万ドン(約37万円)だ。

この金額を、同じ集落のル・ア・ティ氏が語った買値キロ1万5000〜1万7000ドン(約92〜104円)で割り戻すと、1haあたり3.5〜4トン前後の皮を売った計算になる。これは記事に出た2つの数値から当方で逆算したもので、シン氏の収入に精油の売上が混ざっているなら、皮としての数量はこれより小さくなる。元記事は皮が生のままか乾燥後かも、等級の分け方も、年に何回剥くかも書いていない。見積りを比較する側は、この3点を埋めないと他産地と並べられない。

面積にも幅がある。本文は桂皮を「100ha近く」としているが、写真説明では「100ha超」と書かれており、同じ記事のなかで表記が揃っていない。桂皮に加えて、生薬や香辛料に使われるサニャン(砂仁)が10ha超ある。いずれにしても集落全体の植栽面積であって、皮が剥ける樹齢に達した面積ではない。マカダミアで植栽面積と稼働園地のずれが輸入量に出た話と同じ読み方が必要で、2016年植栽と2020年以降の植栽では剥ける量がまったく違う。

タオ・セオ・シン氏は皮の出荷で止めず精油を搾る工程まで自分で覚えた

記事のなかで調達側に効いてくるのは、シン氏が桂皮の栽培と手入れで止めず、精油の搾り方を習って売っているという一行である。ダンヴィエトの写真説明は、その桂皮精油が顧客から高く評価されているとしている。

これは1.5haから5haへの面積拡大とは別の投資だ。精油は原料の皮や葉を大量に食う工程で、自分の5haだけでは釜が回らない。つまり精油に手を出した時点で、シン氏は栽培者であると同時に集落の原料を集める側に回っている。9戸の収穫期に買い手を連れてくると約束した人物が、いまは自分で買う理由を持ったということでもある。

日本側が精油まで含めて話すなら、食品香料として使うのか工業用途なのかで求められる書類は変わるため、用途とHSコードの前提を先に合わせ、分析表が出せるかを確認してから数量の話に入るのが順序になる。原料を形態で割って売り先を増やす産地はほかにもあり、the Ba Mai cooperative, which splits pepper into six forms to sellは同じ原料から複数の荷姿を出している。桂皮も皮・粉・精油で商談相手が変わる。

フオイピンと話す日本の買い手が最初に聞くのは植栽年次と乾燥の受け皿だ

この集落を候補に入れる場合、聞く順番はおおむね決まる。まず植栽年次ごとの面積で、2016年前後に植えた区画が何haあるかが当面の供給量を決める。次に乾燥と保管で、雨季をはさんで皮を置ける場所が集落にあるのか、乾燥は各戸の軒先なのかを確認する。等級の揃いと残留農薬の記録については元記事に記述がなく、現状では未確認のまま扱うほかない。サニャンは桂皮とは別の品目で、別ロット・別の荷姿になる。

数量の感覚としては、100ha近くの産地であれば日本の中小食品メーカーが扱う数百kg〜数トンの単位は射程に入る。一方でディエンビエン省は北西部の山地で、港までの陸送が長い。小ロットの試買から入り、ロットごとに集落名まで遡れるかを見ておくほうが、後から数量を伸ばすときに効く。ラオカイ(旧イエンバイを含む)の既存産地と比べて実績が短いぶん、価格ではなく追跡可能性で評価する産地になる。

ル・ア・ティ氏が2haの皮をキロ1万5000ドンから売っているあいだに、シン氏はその皮を精油に替える工程を手に入れた。フオイピンで次に動くのは、残りの戸がどちら側に立つかである。

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Author of this article

While running a food brand in Kyoto, I have worked on products that bring out the appeal of ingredients, such as dried vegetables and vegetable powders. I am now in my second year living in Vietnam, where I am also involved in coffee production on the ground, learning the whole process from cultivation to processing and flavor development. Out of a wish to deliver foods people can enjoy with peace of mind in everyday life, I value products whose production background and the faces of their makers are visible. Drawing on the appeal of both Japanese and Vietnamese food cultures, I aim to bring a little richness to daily life.

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