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日本のすり身輸入単価が10年で49%高、ベトナムの輸出2億1300万ドルは横ばい

日本の練り製品メーカーが9月から10月にかけて相次いで値上げに踏み切った。引き金は原料のすり身で、ベトナム水産物輸出加工協会(VASEP)が10月12日に伝えたところでは、日本の冷凍スケソウダラすり身の輸入単価は10年前のキロ265円から今年上半期のキロ395円へ、およそ49%上がっている。アラスカ産スケソウダラそのものの値段も前年から3割前後上がった。ところが、同じすり身をイトヨリやエソから作っているベトナムの輸出は、この値上がりに乗れていない。1〜8月の累計は2億1,300万ドルで前年同期とほぼ同水準、最大の行き先は日本ではなくタイだった。原料が足りないのに代替が動いていない。この食い違いが日本の輸入業者と食品メーカーの調達判断に直結する。なお本記事のドル換算は1ドル=約158円(2026年10月初旬の水準)で計算した。

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紀文は3〜20%、Umiosは5〜18%上げ、スギヨもカニカマに手を付けた

VASEPがNews.jpの報道をもとにまとめた記事によると、紀文食品はすり身関連商品を前月からおよそ3〜20%引き上げ、Umiosは5〜18%の改定に踏み切った。Umiosは2026年にマルハニチロから社名を変更した会社だ(VASEP側の記事は「マルハニチロの旧ブランド」と逆に書いている)。スギヨもカニカマと関連商品の価格を改めている。

この動きは日本国内の業界紙でも裏が取れる。水産練り製品の秋冬特集(9月16日付)では、9月から10月にかけて主要メーカーが相次いで包括的な値上げに動き、春に続いて連続値上げを行うメーカーもあるとしている。見出しには「スリ身、空前の高騰予想も」という言葉が並んだ。

メーカーが同時に動いた理由は、売りと買いの両側が逆向きに引っ張られているからだ。カニカマは健康志向の市場で需要が伸び、練り製品を食べる文化があるタイでは寿司や焼き物、ギョーザの具にまで使われている。一方でアラスカ産スケソウダラの漁獲は絞られ、スギヨの担当者は国際需要の高まりで日本が他市場と原料を競って買う状況になったと話している。福島市の水産業者フクシママルコは、2026年のすり身価格が原油高の影響で10〜20%上がったとしている。かまぼこや伊達巻といった正月向けの品目には、その分の原料高が乗る。おせち向けの需要が立つ11月から12月に、値上げの第二波が乗る形になる。

日中韓の対米露すり身輸入は上期7万3,786トンで12%減、ロシアは2027年枠も削る

数量を追うと、縮み方がはっきりする。VASEPがみなと新聞の報道をもとに整理した数字では、日本・中国・韓国の3国が2026年1〜6月に米国とロシアから輸入した冷凍スケソウダラすり身は7万3,786トンで、前年同期から12%減った。中国分にはフィレ以外の冷凍スケソウダラ肉製品が一部含まれる。1〜4月の4ヶ月でみるとロシア産が約2万4,996トン、米国産が約2万1,974トンで、ロシアが米国を上回っている。

作る側はさらに厳しい。米国海洋大気庁(NOAA/NMFS)のデータでは、8月15日までの週の生産量はフィレもすり身も前年同期から7割近く落ちた。Bシーズン累計のすり身は3万7,680トンで32.8%減、AとBを合わせた今年のすり身生産は10万8,628トンで19.9%減になる(VASEP、2026年9月1日)。Aシーズンのすり身生産は5月9日時点で約7万948トン(アラスカ湾を除く)で、前シーズンを大きく下回る見込みだという。日本の港に着いた米国産すり身は2025年4月から2026年2月で約6万600トン。2024年産の8万8,875トンから3割あまり減った計算になる。

ロシアも緩める気配がない。農業省が9月1日に出した第571号の命令で2027年の極東スケソウダラ漁獲枠を235万6,000トンに定め、2026年の約242万トンから6万6,200トン(約2.7%)削った。削り方に偏りがあるのが要点で、オホーツク海北部・西カムチャツカ・カムチャツカ千島の3海域は合計約101万トンから88万1,000トンへ13%減、西ベーリング海は62万7,000トンから57万9,200トンへ7.6%減。一方でサハリン東部は30.3%増の21万3,500トンと増える海域もあり、すり身原料の主力海域が削られて周縁が増える配分になっている。実際の漁獲は3〜5%減と見込まれる。

ベトナムの8ヶ月2億1,300万ドルは横ばいで、23%がタイ向け

では供給の空白をベトナムが埋めているのか。数字はそうなっていない。VASEPの10月6日のまとめでは、ベトナムのすり身・ちくわ類の輸出は2026年1〜8月で2億1,300万ドル(約337億円)、前年同期とほぼ同水準だった。8月単月は3,400万ドル(約54億円)で前年同月比9%増、8ヶ月で最も大きい月になったが、2〜5月に大きく落ちた分を取り戻した程度にとどまる。6月に前月比23%戻し、7月は前年同月並み、8月に9%増という歩み方だ。

行き先の並びはこうなっている。

Market January-August 2026 Year on year Share
Thailand 4,900万ドル(約77億円) 2%増 23%
South Korea 4,700万ドル(約74億円) 8%減 About 22%
Total 2億1,300万ドル(約337億円) Nearly flat 100%

中国・日本・マレーシア・米国・台湾が伸び、韓国とインドネシア、一部の欧州市場が落ちた。VASEPは日本を伸びた市場に挙げているが、金額は公表していない。

2021年の姿と並べると入れ替わりが見える。2021年1〜11月の輸出は3億8,100万ドルで28%増、韓国が23%で首位、タイが21%、中国が13%、日本が9.5%だった。5年で韓国が落ち、タイが上に出た。コロナ期の3億8,100万ドル(11ヶ月)という水準に対し、今年は8ヶ月で2億1,300万ドル。月平均に直すと当時の3,464万ドルに対して2,663万ドルで、ピークを超えられていない。

イトヨリとエソのすり身はスケソウダラの代わりに売れていない

スケソウダラのすり身が10年で49%上がり、米露からの流入が12%減っているのに、ベトナムの輸出が横ばいという事実は、原料の代替が自動では起きないことを示している。理由は2つある。

1つは魚が違うこと。VASEPの整理では、ベトナムのすり身・ちくわ類の原料は主にイトヨリダイとマエソ類、それに雑魚だ。スケソウダラとは魚種が違い、ゲル強度や色の出方、匂いの残り方も揃わない。カニカマの白さと繊維はスケソウダラすり身の性質に合わせて組まれているため、原料だけ差し替えると製品の表情が変わる。配合と機械の設定を触らずに置き換えられるものではなく、値上げを飲んで既存原料を続けるほうが早いという判断になりやすい。

もう1つは売り先の順番だ。タイが23%を取っているのは、カニカマやフィッシュボールの加工拠点としてタイが先にできあがっているからで、ベトナムのすり身は日本の棚に直接並ぶより、タイの工場で製品になってから日本に入る経路のほうが太い。VASEPの過去の整理では、2018年時点の日本のすり身輸入元はタイが首位、ノルウェー・インド・中国が続き、ベトナムは5位だった。極洋がタイで寿司種を製造する体制と同じ構図で、ベトナムの工場は完成品の産地としてではなく工程の一部として選ばれている。日本の買い手から見れば、ベトナム産すり身はすでに自社製品の中に入っている可能性があり、ラベルの産地表記より原料票を見たほうが実態に近い。

原魚が上がっても輸出価格に乗せきれない構図は、ベトナム側で先に起きている。パンガシウスでは原魚価格が輸出価格を超える局面があり、加工側が値上げ要請に回った。すり身でも同じ順番をたどるなら、ベトナムの工場が先に値上げを言い出し、タイの加工賃に乗って日本に届く。日本のメーカーが9〜10月に動いた値上げは、この連鎖の最後ではなく途中にある。

日本の買い手が聞くべきは魚種構成と凍結までの時間

ベトナムからすり身を引くとき、見積書の単価より先に埋めておく項目がある。

  • 魚種構成をロットごとに出させる。「surimi」の一語では中身が決まらない。イトヨリ比率、エソ比率、その他の比率を数字で押さえる。
  • 水揚げから凍結までの時間。すり身のゲル強度は鮮度に引っ張られるため、ここを時間単位で答えられない相手は後で歩留まりの話になる。
  • グレードの定義を買い手側で決める。AA・A・Bの呼び方は工場ごとに違うので、相手の等級名をそのまま受けない。
  • 窓口の広さ。VASEPは約100社がすり身・ちくわ類を輸出していると整理しており、2021年時点ではダルースリミが全体の約12%、CASESが9%、タックカウが7%だった。上位に集中していないので、商社経由とメーカー直の両方を当たる余地がある。
  • 税率。ベトナム産水産物の対日税率は適用する協定ごとに違うため、同じ品目でも通す協定で着地が変わる。

国内側の材料も1つ添えておく。日本の練り製品の輸出は数量で9%伸びている。国内の棚が値上げで縮んでも、輸出が原料需要を下支えする構造にあり、すり身の引き合いは国内消費だけでは測れない。

年末のかまぼこの値札は、オホーツク海北部の漁獲枠が13%削られたことと、タイの加工ラインの稼働で決まる。10年で265円から395円になった輸入単価に、2027年の枠削減がもう一段乗るかどうかが次の分岐になる。

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Author of this article

While running a food brand in Kyoto, I have worked on products that bring out the appeal of ingredients, such as dried vegetables and vegetable powders. I am now in my second year living in Vietnam, where I am also involved in coffee production on the ground, learning the whole process from cultivation to processing and flavor development. Out of a wish to deliver foods people can enjoy with peace of mind in everyday life, I value products whose production background and the faces of their makers are visible. Drawing on the appeal of both Japanese and Vietnamese food cultures, I aim to bring a little richness to daily life.

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