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フンイエン省の元大工がジャコウネコ2000頭を飼い北部100戸から全量買い取る

ベトナム北部フンイエン省ソンナム坊のブイ・スアン・ホアン氏(1973年生まれ)が、ジャコウネコ科のカイ・ヴォイ・フーン(Paradoxurus hermaphroditus)を3つの農場で2,000頭超まで増やしている。ベトナム農民会の機関紙ダンヴィエットが10月11日に伝えた。出発点は2017年、メコンデルタで買った種畜100頭を輸送中にほぼ全部死なせた失敗である。1頭3,000万〜4,000万ドン(約18万〜24万円。1円=約163ドン、2026年10月13日時点のレートで換算)という単価の家畜を、100頭まとめて失っている。種畜・種苗の調達でどこを見落とすと全額が消えるのか、規制対象の動物を飼う商売がどんな書類の上に成り立っているのか、この1件に両方が入っている。

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2017年に買った種畜100頭が輸送中にほぼ死に1頭3,000万〜4,000万ドンが消えた

ホアン氏は家庭の事情で7年生を終えられず、6級の大工として協同組合の生産班の班長を務めた人である。1990年に結婚してから夫婦で飲食と宿泊業を手がけ、2017年に市場を見てカイ・ヴォイ・フーンへ転換した。前の事業は親族に譲り、何か月もかけて飼育法を調べてからメコンデルタへ種畜を買いに入っている。

現地では農場を案内され、実際の個体も見た。それでも売られたのは妊娠中の雌だった。ダンヴィエットに対し本人は「経験がなく、事業替えで資金を早く回収したい気持ちがあった」と振り返り、輸送中にほぼ全部が死んだと話している。買ったのは100頭、単価は3,000万〜4,000万ドン。単純計算で30〜40億ドン(約1,840万〜2,450万円)が消えた計算になるが、記事に総損失額の記載はない。事後に売り手とは連絡が取れなくなった。

妊娠個体を長距離で動かせば落ちるのは、家畜なら品目を問わず読める話である。それでも避けられなかったのは、買い付けの現場で農場主を自称する仲介者に当たる確率が高く、見せられた檻の個体と引き渡される個体が同じとは限らないからだ。回収を急ぐ側がいちばん高い値を払う構図は、ベトナムの特用家畜の種畜市場でいまも変わっていない。

8か月待って自家繁殖の個体を受け取り450平米の100頭から立て直した

2度目は手順を変えた。飼育が北部より早く広がっていた南部で複数の農場を回り、仲介者ではなく飼育施設の主に直接当たる方法を探した。従業員を通じて電話番号を聞き出して面会したところ、相手は販売を承諾したうえで引き渡しを8か月後に設定した。自分の施設で生まれた個体を渡したい、という条件である。8か月後、夫婦は車でホーチミン市へ行き、個体をフンイエンまで運んだ。飼い始めた規模は旧フンイエン市内の約450平方メートル、約100頭だった。

それでも軌道には乗らなかった。ホアン氏はタインホア省の飼育者を招いて現場に入ってもらい、何を注射するか、どう給餌するか、どう交配させるかを実演で覚えている。本人の言葉では、飼育と繁殖の技術を自分のものにするまでに7〜8年、特に苦しかった期間が4年。この動物は腸が弱く、外からの軽い刺激でも繁殖に影響が出ると説明している。種畜の自家繁殖を確立するのに年単位の時間がかかるのは魚でも同じで、ベトナムでは20年かけてボントゥオンの人工繁殖を確立した親子の例が報じられている。

母1頭が年3頭から年6頭になり繁殖雌500頭が3つの農場を支えている

技術が固まって変わった数字は、増頭ではなく繁殖効率だった。習性や給餌を把握できていなかった時期は、雌1頭が年1回の出産で平均3頭。給餌を自然の状態に近づけ、ストレスを最小にする環境を整えた結果、農場では年2回、母1頭あたり年間で平均6頭になった。現在の総頭数2,000頭超のうち500頭が繁殖用の雌で、単純計算すれば年3,000頭の子が生まれる計算になる。母数を倍にするより、母1頭の回転を倍にするほうが先に効いている。

環境づくりで目を引くのが音である。この動物は物音に弱く、騒がしかったり見知らぬ人が来たりすると子を育てず、噛み、食べてしまうことがある。ホアン氏は日本の神戸牛の農場が牛に音楽を聴かせていることをヒントに、農場の各隅にスピーカーを置き、朝の作業開始から夜まで軽い曲を流し続けた。個体が物音に慣れ、外の騒音で繁殖が崩れることがなくなったという。あわせて空調で気温を調整し、自動給水を入れている。ベトナムの畜産でこの手の環境制御が利益に直結する例は増えていて、ドンタップの空調鶏舎が45日で3kgに仕上げ6万羽を8人で回しているという報告もある。音は、空調や自動給水と違って設備費がほとんどかからない対策である点が効いている。

子畜1,200万ドンと種雄3,500万ドンに値が付き4〜5つ星40軒が商品を引き取る

販売の内訳は3本ある。繁殖用の雌が1頭あたり約1,200万ドン(約7万4,000円)、交配専用の雄が1頭3,500万ドン(約21万円)、生後3か月で母から離した子の一対が約1,000万ドン(約6万1,000円)。商品個体は各省の4つ星・5つ星のホテルとレストラン40軒に納めており、客の食卓に届くまで品質を保証し、だめなら代金は取らないとホアン氏は言っている。さらに北部の約100戸へ飼育技術を移転し、その世帯から買い戻す契約を結んで商品の質をそろえている。畑や池の側で全量を引き取る形はベトナムでは珍しくなく、ハノイ近郊のジャスミンを協会が畑でキロ5.5〜5.8万ドンで全量買う仕組みが近い。販路の入口は農場のSNSで、再生回数が100万を超えた紹介動画が問い合わせを運んでいる。

この形がいまのベトナムで評価される理由は、表彰の基準側を見ると分かる。ホアン氏はベトナム農民会中央により「改革40年の優秀農民」に選ばれた。VnBusinessによれば2026年の選出は推薦127件から96人で、審査の4分野に生産チェーンでの連携と科学技術の応用・デジタル転換が入っている。売上の最上位は家禽の種の生産販売を手がけるハイフォンのファム・ヴァン・ルオン氏で2024年に2,060億ドン(約12.6億円)、利益の最上位は年500億ドン(約3.1億円)。表彰式は10月12日夜にハノイで開かれた。種畜販売と技術移転と買い戻し契約とSNSを一人で抱えるホアン氏の形は、この基準の4分野にほぼそのまま乗っている。

日本の調達担当がベトナムの特用家畜で確かめるのは施設コードと個体台帳だ

見落としてはいけないのは、この動物が自由に飼える家畜ではないことだ。ダンヴィエットはカイ・ヴォイ・フーンを、危急・貴重・希少な森林動物のIIB群に属する種と書いている。IIB群を商業目的で飼う場合、省の森林保護支局が交付する飼育施設コードが前提になり、飼育記録簿と定期報告が付く。制度の弱点も指摘されてきた。ダイドアンケットは2021年、バリア・ブンタウ省内の飼育施設113か所・約8,300頭のうち72か所・約5,800頭が希少種で、野生で違法に捕獲した個体を施設に入れて飼育個体に見せる「合法化」が管理上の課題だと伝えている。頭数が増えるほど、どの個体がどこで生まれたかを示す台帳の価値が上がる。

日本の調達側がこの種に触れる場面は、肉ではなくコーヒーの側にある。Paradoxurus hermaphroditus はベトナムのカフェ・チョン(ジャコウネココーヒー)を生む種そのもので、商品個体の売り先はホアン氏の場合も国内の4つ星・5つ星の外食である。一方のコピ・ルアクは飼育環境への批判が国際的に付いて回る。VnExpressは2025年5月、PETAがインドネシアとフィリピンでの調査をもとに「野生由来」と表示された製品の8割が実態と違うと主張していると伝えた。ベトナム産のジャコウネココーヒーや関連する土産品を日本の棚に置くなら、飼育施設コードの有無、個体台帳、檻の広さと給餌の記録まで遡れるかが商談の分かれ目になる。産地訪問で見るべきは焙煎設備より先に檻の側である。

種畜の調達そのものにも持ち帰れる点がある。ホアン氏が2度目に取った手順は、仲介者を外して飼育施設の主に当たる、相手の施設で生まれた個体に限る、引き渡しまで待つ、の3つだった。ベトナムで苗や稚魚、種畜を買う日本側の案件でも、引き渡しを急がせるほど出所の確認が薄くなる。待てる期間を契約に書いておくことが、現地でいちばん安い保険になっている。

ホアン氏は、飼育が軌道に乗れば一定数を自然に戻したいとも話している。買った種畜100頭を一度に失った人物が、9年後に野生復帰を口にしている。この商売がどこに足を置いているかは、その一言に出ている。

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Author of this article

While running a food brand in Kyoto, I have worked on products that bring out the appeal of ingredients, such as dried vegetables and vegetable powders. I am now in my second year living in Vietnam, where I am also involved in coffee production on the ground, learning the whole process from cultivation to processing and flavor development. Out of a wish to deliver foods people can enjoy with peace of mind in everyday life, I value products whose production background and the faces of their makers are visible. Drawing on the appeal of both Japanese and Vietnamese food cultures, I aim to bring a little richness to daily life.

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