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フンイエン省の14haでJ02を作る家族3人の春作利益は2億7000万ドン

フンイエン省バクドンクアン村で、Phạm Ánh Xuân(ファム・アイン・スアン)氏夫妻と息子の3人が38mẫu(マウ)の水田を回している。農業環境省系の日刊紙 Nông nghiệp và Môi trường が2026年10月12日に伝えた。2020年から周囲の農家が投げ出した田を借り集めた面積で、作っているのは日本由来のジャポニカ品種J02、5年目に入る。2026年春作は種子籾77トンで粗収入5億7000万ドン、経費3億ドンを引いて利益2億7000万ドン。1円=163ドン(2026年10月13日時点)で換算すると粗収入が約350万円、利益が約166万円。読むべきは籾の単価ではなく、この一家が種子生産契約と引き換えに何を受け取っているかだ。

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2020年から放棄田を借り集めて38mẫu、耕起も田植えも収穫も自前の機械でやる

Xuân氏が挙げた周辺の離農理由は3つ。資材価格が上がる一方で籾の売値が低いこと、担い手の高齢化、そして病害虫が読みにくくなっていること、特にネズミである。同氏の集落は業者を入れた共同駆除を組めているが、それができない集落では稲が7〜8割やられた面積があり、嫌気がさして田を空けたという。

Xuân氏は耕耘機、田植機、コンバイン、防除機をすでに持っていた。誰かが田を空けたと聞けば借り受け、その田にかかる諸負担を引き受ける形で集めてきた。38mẫuは北部式の1mẫu=3,600㎡で13.68haにあたる(元記事は「14ha超」と丸めている)。同氏の整理は「面積の多少より、どの工程を自分でやれるか」だ。全工程を外注した前年の夏作と今年の春作は、籾価格がかつてない水準まで下がる一方で資材やサービスが1.5倍になった種類もあり、ほぼ利益が残らず赤字も出たと振り返る。

種子籾は商品籾より1kg1,000ドン高く、春作の77トンは3日で乾燥を終えた

相手はベトナム高度技術農業種子資材株式会社(Phu Tho Seed)。J02は元記事が「giống lúa Nhật(日本のイネ品種)」と書くジャポニカで、同社はこの品種の種子生産を大規模農家と組んで回し、商品籾の買い取り(bao tiêu)も並行してやっている。5年の内訳は、最初の3年が種子を買って商品籾を作り自由市場に売る形、後の2年が種子生産である。商品籾なら作付け前に自分の金で種子を買うが、種子生産では種子が現物で先に渡され、収穫時に差し引かれる。施肥も防除も技術員と電話でやり取りして段階ごとの処理を指示され、日誌に記録する義務がある。異株抜きと混種除去を終えた段階で技術員が圃場を見に来て、基準を満たしていれば価格と収穫時期が決まる。契約価格は商品籾より1kgあたり前後1,000ドン、約6円高い。

この契約の価値が一番はっきり出たのが2026年春作だった。種子籾を刈る時期が周囲の商品籾の最盛期と重なり、地域の乾燥施設はどこも満杯だった。それでも契約があったため、77トンは3日で乾燥を終えている。乾燥枠の優先権が1kg1,000ドンの上乗せとは別に効いた。乾燥や精米の受け皿自体も増え、ベトナムでは精米5工場を一度に起工して籾殻を発電燃料に回す動きも出ている。

粗収入5億7000万ドンから経費3億ドン、残る2億7000万ドンは10a当たり約1万2000円

春作の数字は原単位で検算が通る。77トンで5億7000万ドンなら1kgあたり約7,400ドン、約45円。Doanh nghiệp Hội nhập が2026年10月10日時点のアンザン省の生籾相場として伝えた価格では、同じく日本由来のジャポニカ系DS1が1kg6,400〜6,500ドン、約39〜40円だった。7,400ドンは商品籾に1,000ドン上乗せという契約条件とほぼ重なる。ただしDS1の相場は生籾、77トンは乾燥を終えた種子籾で、同じ条件の比較ではない。

面積で割ると10a当たりの粗収入が約416万ドン(約2万6000円)、残るのが約197万ドン(約1万2000円)。機械を外注に出したら消える厚みだという同氏の説明と整合する。

反収はもらった数字をそのまま使うと取り違える。77トンを13.68haで割ると10a当たり563kg。一方で秋作について技術員 Vũ Đức Anh 氏が示した見込みは1sào当たり2.2〜2.3tạ、北部式の1sào=360㎡で10a当たり611〜639kgになる。北部では通常は春作のほうが条件が良いので、77トンが乾燥後の重量なのか、面積が契約対象分だけなのかのどちらかである。産地から反収をもらうときは生籾か乾燥籾か、分母の面積を何で取ったかを確認する。ベトナムには洪水に合わせて伸びる浮き稲のように10a当たり200kg台の作り方も残っていて、同じ稲作の中で反収は3倍開く。

旧タイビン省には2ha以上の農家が1,701戸・5,676ha、2haの限田を借地で超える

Xuân氏はベトナム北部で「đại điền(大規模農家)」と呼ばれる層の一人だ。Nhân Dân が2023年4月に伝えたところでは、旧タイビン省で2ha以上を集めた農家は1,701戸、合計5,676ha。戸数が多いのはクインフー、ドンフン、キエンスオンの3郡で、バクドンクアン村は旧ドンフン郡の区域にあたる。同紙によれば国の限田(hạn điền)は北部で2ha、南部で3haに抑えられている。38mẫuがその枠を超えているのは借地だからで、面積は所有権で固定されていない。調達先として見るなら何年分の借地かを聞く必要がある。

行政区画も2025年に動いた。タイビン省は2025年6月12日にフンイエン省と統合され、バクドンクアン村は同6月16日に旧ハザン社・ドンキン社・ドンヴィン社の3つを合わせて設置された(人口25,263人)。同じ圃場が2025年以前の資料では「タイビン省ドンフン県」、2026年の記事では「フンイエン省バクドンクアン村」になる。産地台帳や輸出書類の地名が過去分と合わない状態が全国で起きていて、遡るなら旧省名でも引くしかない。台帳整備自体が産地側の作業になっている例としては、ソンラ省がコーヒー3万6千haを3区分して年内に台帳を作る動きがある。

9月中旬の大雨でバイオガス排水が1km分の稲を焼き、それでもJ02の充実粒は9割を超えた

秋作には事故が起きた。2026年9月中旬の数日続いた大雨で、近くの養豚場のバイオガス設備から出た排水が用水路に溢れた。浸みた範囲の稲は葉焼けを起こし、被害は一区画ではなく1km近い帯状に及んだ。Xuân氏の田も含まれ、この部分がなければ完璧な秋作になっていたという。

その一方で品種の成績は保たれた。圃場を一巡した Vũ Đức Anh 氏によれば、今期は長い高温と1週間続く雨が交互に来て多くの品種で不実粒が増えたが、J02は充実粒の比率が9割を超え、止葉も収穫間際まで緑を保っていた。収穫は約20日後の見込みだという。同社の技術員は分げつ期の芯枯れと葉巻虫、出穂前後の茎穿孔虫と白葉枯病、登熟期のウンカと、段階ごとに防除時期を指示する。

この2つは性質の違うリスクだ。排水のほうは契約で管理できない。種子生産契約が日誌と立会検査を要求していても、隣接する畜産施設の排水が同じ水系に入る構造は契約の外だ。産地を見るとき、圃場の整備状況だけでなく同じ用水路の上流に養豚場や養鶏場があるかを確認する価値はここにある。

日本の民間在庫が243万トンに積み上がった年、J02の商談は食用米の外から入る

日本側の事情は2026年の前半と後半で入れ替わった。Nông nghiệp và Môi trường の英語版は2026年3月、日本が国内不足を背景にベトナム米へ関心を向けていると報じ、2025年の民間輸入9万5,834トン(前年の約95倍)のうちベトナムからが4,567トンだったと伝えた。関税は1kg341円である。

ところが6月末、日本のコメの民間在庫は過去最大の243万トンに積み上がった。秋田魁新報が農林水産省の調査として伝えた数字で、適正とされる180万〜200万トンを大きく超える。同紙によれば農水省は3月末時点の予測(221万〜234万トン)を上回る在庫が積み上がったとみており、2026年産の主食用米は生産量732万トンに対し需要推定が最大711万トン、2027年6月末の民間在庫は最大281万トンに増える見通しだ。不足局面で成立しかけた「価格差で輸入米を入れる」話は、2026年秋には通りにくい。

ベトナム産ジャポニカの商談はどこから入るか。食用米の小売棚ではなく、加工用・外食用の原料や米粉・冷凍米飯の原料といった、価格より規格と記録で決まる領域が残る。そして J02 の種子生産契約が作っているのは、その記録のほうだ。種子を前渡しし、段階ごとに技術指示を出し、日誌を義務づけ、異株除去後に立会検査し、合格した圃場だけ価格と収穫日を決める。日本の輸入業者が産地に求める形が、国内向けの種子生産のためにすでに回っている。産地を当たるなら確認の順番はこうだ。

  • 日誌が圃場単位か作付け単位か、何作分が残っているか
  • 種子生産の検査記録と商品籾の記録が同じ様式で残っているか
  • 乾燥施設の優先枠が契約に書かれているか
  • 同じ用水路の上流にある畜産施設の位置と排水経路

Xuân氏が5年で入れ替えたのは品種でも面積でもない。籾の値段を会社に決めさせる代わりに、種子の現物前渡しと段階ごとの技術指示、そして乾燥枠を受け取る。77トンが3日で乾燥機に入ったのは、周囲より稲の出来が良かったからではなく、その交換が成立していたからだった。

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Author of this article

While running a food brand in Kyoto, I have worked on products that bring out the appeal of ingredients, such as dried vegetables and vegetable powders. I am now in my second year living in Vietnam, where I am also involved in coffee production on the ground, learning the whole process from cultivation to processing and flavor development. Out of a wish to deliver foods people can enjoy with peace of mind in everyday life, I value products whose production background and the faces of their makers are visible. Drawing on the appeal of both Japanese and Vietnamese food cultures, I aim to bring a little richness to daily life.

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