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ダラットのウキクサは1キロ1万5,000ドン、欧州が通したのは生のまま

ベトナム・ラムドン省のダラットで、水面を覆うだけだった小さなウキクサを室内で増やし、農家から1キロ1万5,000ドンで買い取る事業が動き出した。手がけるのはダラットのイェルシン大学(Trường Đại học Yersin Đà Lạt)の若手チーム Wolfpro Biotec(元記事は Wolfpro Biotech とも表記する)。現地紙 Dân Việt が2026年11月5日に伝えた。土も畝も使わず、ハウス1棟で月3.6〜4トンの生が上がる。

日本の食品原料バイヤーが見る位置は、植物性たんぱくという看板よりひとつ手前にある。生の4トンが凍結乾燥を抜けて何キロの粉になるのか。欧州がこの植物のどの形態に許可を出しているのか。ここが揃わないと商談の単位が噛み合わない。

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48時間で倍になる水面の雑草がハウスの中に入った

ベトナムの池や水路では、ウキクサはすくって捨てるか家畜に回すものだった。北部では 浮き草の裁断機から農機30機種超に広げたフンイエン省の農民 が、牛に与える浮き草を刻む機械から事業を広げている。Wolfpro Biotec が変えたのは植物ではなく、それを置く場所と測り方だ。屋外の水面を屋内の培養槽に移した。

根を張らない Wolffia globosa が、池の表面を緑一色に覆う

  • 学名は Wolffia globosa。ベトナム語では bèo tấm、bèo cám と呼ばれる
  • 根を張らず水面に浮くので、肥沃な農地も畝立ても要らない
  • 英語圏の通称は water lentil。欧州には食品として扱う制度がすでにある
  • 天然のまま収穫すると、衛生管理と微生物のばらつきが壁になる

センサーが見るのは pH・水温・湿度・光、光源は LED の専用波長

閉鎖環境に入れた狙いは、収穫量より中身の揃え方にある。

  • IoT センサーが培養槽の pH と水温を自動で監視する
  • 湿度と光量も同じ系統で記録
  • LED は波長を選んだ専用光源を使い、培養液には Humic 由来の窒素を加える
  • 増殖の速さは倍加まで約48時間(同チームの説明)
  • 収穫後は凍結乾燥に回し、色と微量成分を残す工程を置いた

買い取りの出口を用意したうえで、農家に手順を渡した

プロジェクト責任者は Nguyễn Phú Hoài 氏。実験室で止めず、現地実証、手順の標準化、農家への移管の順に進めた。

  • 実証の場を大学の外に出し、農家に渡せる形まで手順を書いた
  • 品質検査と加工試験では Vietagri、CN Healthy Food Đa Kai と組む
  • 製品は凍結乾燥の粉末 Wolffia NutriGreen、錠剤の Wolffia Green Protein+
  • さらに凍結乾燥ヨーグルト Mankai Probiotic、運動者と菜食者向けのたんぱく粉 Wolffia Whey+ が並ぶ

ハウス1,000m²で月3.6〜4トン、公開された原価と買い取り単価では月5,700万ドンは残らない

農家に渡す側の試算は Wolfpro Biotec が公開している。基本単位はハウス1棟で、培養に使う水面はハウス面積の3.4倍にあたる。

ハウス1棟の条件同社が示す数字円換算(1円=163ドン)
Greenhouse area1,000m²—
培養水面約3,400m²—
月の収穫(生)3.6〜4トン—
生産原価1キロ1万500〜1万2,000ドン約64〜74円
Wolfpro の買い取り1キロ1万5,000ドン約92円
Initial investment約5億ドン約307万円
投資回収31.5ヶ月—

為替は2026年11月5日の1円=163ドンで換算した。肥沃な農地を要さず、水の使用は大豆栽培の30分の1に収まると同チームはしている。

5,700万ドンという月の利益は、売上の額とほぼ一致する

農家の純利益は月約5,700万ドン(約35万円)とされる。ところが公開された買い取り価格と原価を当てると、この額は利益の位置に収まらない。

  • 3.6トンを1キロ1万5,000ドンで売ると月の売上は5,400万ドン、4トンなら6,000万ドン
  • 収量を揃えて原価を引くと、3.6トンで1,080万〜1,620万ドン、4トンで1,200万〜1,800万ドンが残る
  • 初期投資5億ドンを31.5ヶ月で回収する計算なら、月に残る額は約1,600万ドン(約10万円)。これは上の幅のほぼ中央に落ちる
  • 逆に月5,700万ドンが手元に残るなら、5億ドンは8.8ヶ月で回収できてしまい、同じ試算の31.5ヶ月と合わない

月5,700万ドンは売上の額に近く、31.5ヶ月の回収期間とも噛み合わない。どちらの数字を前提に提案が組まれているのか、買い取り単価・月の収量・設備の実額の3つで確かめるのが先になる。

欧州が生のウキクサを通した一方、粉末の申請は2022年に終わった

この植物は欧米でも食品として扱われている。ただし許可が出た形態と出なかった形態があり、Wolfpro Biotec の主力の粉末は後者だ。

生の植物体は第三国の伝統食品として EU のリストに載った

  • 欧州委員会の施行規則(EU)2021/2191 が2021年12月10日に採択され、生の植物体が第三国の伝統食品として認可された
  • 対象種は Wolffia arrhiza と Wolffia globosa。届出者は GreenOnyx で、提出は2020年9月
  • 表示名は使う種に応じて両種併記、または単独の種名とされた
  • 規格には重金属とマンガンを含む微量元素の上限が置かれ、肥料由来の成分が懸念になりうると前文が記す
  • 安全性に問題なしという評価は、垂直農法で栽培されたものを前提にしていた

粉末の申請はマンガン摂取を理由に安全性が立証されず、手続が打ち切られた

粉末については、別の申請が別の結論に至った。

  • 申請者は Hinoman。対象は Wolffia globosa の粉末で、栽培株は Mankai の名で特許化されている
  • EFSA の NDA パネルは2021年10月27日に意見を採択し、同年12月の EFSA Journal に掲載
  • パネルは、原料としても補助食品としてもマンガン摂取が増える点を安全上の懸念とし、安全性を立証できないとした
  • たんぱくを多く含むことからアレルギー反応の可能性にも言及している
  • 微量元素と汚染物質の量は栽培条件と肥料の組成に強く左右される、とも指摘した
  • 欧州委員会は2022年4月20日の実施決定(C(2022) 2363 final)で、リストを更新せずに手続を終了した

最後の論点が、ダラットの設計と正面で重なる。Wolfpro Biotec の培養液は Humic 由来の窒素を足し、製品の中心は凍結乾燥の粉末である。肥料組成が微量元素に響くという指摘は、生の形態の認可条件にも入っている。

対米青果7ヶ月分の1億527万ドルが2030年の世界市場予想にほぼ並ぶ

Wolfpro Biotec は市場の伸びを根拠に挙げる。ただし桁を他の品目と並べると、素材ニッチの話だと分かる。

ウキクサたんぱく7,050万ドルは、果実1品目の片方向輸出と同じ桁

ComparisonValue数字の性格
ウキクサたんぱくの世界市場(2024年)7,050万ドル同社が引用した Market Glass の2024〜2030年版推計
同(2030年予想)1億500万ドル年平均6.9%成長の前提
ベトナム産ココナッツの対米青果輸出US$105.27 million2026年1〜7月の累計(ベトナム税関局の集計。VnExpress 2026年9月22日報道。前年同期比28%増)

ベトナム産ココナッツの対米青果輸出1億527万ドル は、わずか7ヶ月でこの2030年予想とほぼ同じ額になる。この輸出額は当サイトの既報が引いた VnExpress 2026年9月22日報道のベトナム税関局集計による。カテゴリー全体がベトナムの果実1品目の片方向輸出と同じ規模なので、商談はコモディティの単位では動かない。ベトナム国内の菜食・運動向け市場が、当面の売り先になる。

生4トンが粉で何キロになるかを日本の買い手は最初に聞く

原料として評価する段では、栽培の話は脇に置かれる。乾燥後の重量と形態、ロット差で話が進むためだ。

天候でロットは崩れないが、1棟の上限は月4トンで止まる

Issue室内生産が効く点確認が要る点
規格の安定光・水温・pH を揃えるので、天候でロットが崩れにくい設備が止まったときの代替ライン
供給の立ち上げ倍加が早く、増産の反応が速いハウス1棟の上限が月3.6〜4トン
産地の説明培養液の組成を記録で示せる肥料組成が微量元素に響くという EFSA の指摘

歩留まりを聞かないうちは見積もりが組めない

  • 生のトン数と粉のキロ数は別の単位で、換算値が出るまで単価の話に進めない
  • 凍結乾燥の能力と工程費。色と微量成分を残す設計は、その分だけ単価に乗る
  • ロット間の振れ幅をどこまで保証できるか
  • 48時間で倍という説明と7日で2.5倍という試験値には開きがある。どの条件の数字かを確かめる
  • 製品名の Mankai は、欧州で粉末を申請した Hinoman が株名として特許化した語でもある

形態で売り先を割る例はベトナム側にもある。the Ba Mai cooperative, which splits pepper into six forms to sell は、同じ原料を形態別に分けて別の買い手に当てている。

刻んで牛に与える浮き草と、LED の下で凍結乾燥する浮き草は、植物として同じで産業として別物だ。ダラット側で固まっているのは買い取り1キロ1万5,000ドンと月3.6〜4トンの2本で、Wolfpro Biotec が Vietagri と CN Healthy Food Đa Kai との加工試験をどこまで通すかで、その先に粉のキロ単価が付く。

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Author of this article

While running a food brand in Kyoto, I have worked on products that bring out the appeal of ingredients, such as dried vegetables and vegetable powders. I am now in my second year living in Vietnam, where I am also involved in coffee production on the ground, learning the whole process from cultivation to processing and flavor development. Out of a wish to deliver foods people can enjoy with peace of mind in everyday life, I value products whose production background and the faces of their makers are visible. Drawing on the appeal of both Japanese and Vietnamese food cultures, I aim to bring a little richness to daily life.

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